第186話 特別試合3
文字数 1,721文字
ダカダカと軍靴をふみならし、突撃をかける兵士たち。
傭兵呼びの利点は、防御力無視攻撃なところだ。
一人一人のほんとの攻撃力はせいぜい、300とか400とかの百単位だと思う。まれに7、800くらいの人はいるかもしれないけど。
本来なら、体力二万超えのワレスさんに、髪ひとすじ傷はつけられない。
だけど、傭兵呼びで召喚したときは、しっかりダメージ入るんだよな。一人三百ダメだとしても攻撃回数が多い。一千万円ぶんの行動はしてくれる。
ただし、回避されなければ、だ。防御無視だとしても、あたらなければ意味がない。
どうだ? どのくらい効いたかな?
黒山の人だかりが会場から去っていくと、まんなかに、やはりワレスさんは立っていた。らんらんと青い瞳が輝いてる。無傷ではない。少しはあたったようだ。
「あいかわらず、いい技だな」
ああーっ。笑った。どんだけ余裕なんだ?
HPを見ると、六万近くまで減ってる!
「効いてる! てか、一千万ダメージのはずなのに、効いたのは六千ていどなんだ。九百九十九万五千攻撃はかわされてる……」
「かーくん。次は一億円なげるんだ!」
「う、うん」
これでも、回避を見込んで、かなりゆとりある金額にしたんだけどな。まだぜんぜん足りてなかった。
「よし。じゃあ、ぽよちゃん、ブレス攻撃、行くぞ?」
「キュイー!」
猛とぽよちゃんのブレスが会場に火花を散らす。
観客、派手な技を連発されて大喜びだ。
アジは『みんな、固くなれ』で、たまりんはハープを三回ひく。
僕らの番は終わりだ。
蘭さんの先制攻撃は戦闘の最初の回だけだから、次はワレスさんの行動だよね? 今度こそ、動くかな?
ワレスさん、かるく片手をあげる。
来る。来るぞ。
魔法か? それとも直接攻撃か? まだ剣もぬいてないけど。
「雷神の怒り」
魔法だったー!
次の瞬間、会場のなか全体に、一つ一つが直径数メートルもある雷の柱が数えきれないほどわきあがった。
もうほんとに雷神の怒りだよね。ワレスさん、知力も二万五千だからさ。自然界で見る雷が可愛く見えるよ?
ダカンダカンと爆発のような音が立て続けにして、バンバン人が倒れていく。
ゴライパーティーはゴライ以外全滅。ゴライだけは反射カウンターで残った。
だけど、ワレスさん自身は自分の魔法がはねかえってきても、大したダメージではないようだ。
それもそうか。魔法に関しては、敵にあたえる攻撃力も、自分に受ける防御力も、どちらも知力がちょくせつ関係してる。要するに自分の攻撃は自分の防御力と同等だから、結果、無傷なわけだ。
蘭さんたちも全滅……いや、誰も倒れてない! あっ、そうか。バランが『みんな、ヘッチャラさ〜』をかけてたから。あれって、敵の攻撃をすべて無効にしてくれるもんね。
僕らは……僕らは何人残ったかな? 月光のセレナーデは1500くらいしかカバーしてくれない。ワレスさんのさっきのアレは、千単位じゃなかった。万のダメージだ。神獣の気は魔法で攻められると、バリアやぶられるし。
でも、変だな。僕らのパーティーは誰も倒れてない。ほんとなら全員、やられてても不思議はないんだけど。猛だけはギリで残ったかな?
「生きてるね」
「生きてるな。なんでだろうな」
「もしかして、蘭さんたちのパーティーの『ヘッチャラさ』がこっちにもかかってるとか?」
「それはないだろう。今は別のパーティーなんだから」
「うーん」
でも、これで次に物理攻撃されたら、どっちみち、バリアは効かない。
どうしよう。来るかな?
素早さ二万八千だもんな。まだまだ動ける。こんなことなら、パタパタして僕の素早さあげとくんだった。少なくともワレスさんの行動回数を減らすことができたのに。
緊張して、ワレスさんの行動を見守る。
すると、ワレスさんは告げた。
「心地よいな。強い相手と存分に競いあう。もっと戦いたい」
行動をゆずってくれた。
つまり、ザコをさきに始末したってことですか。だいぶ、手かげんされてるなぁ。
でも、いい。
僕らもここで終わるより、もっともっと戦ってみたい。だいぶ熱くなってきた。
僕らを倒しておかなかったこと、後悔させちゃうぞ?
次のターンは、詩人の総攻撃だ!