第88話 船を止めろ!
文字数 1,780文字
「アツツっ。熱かった。まさか熱湯ふきだしてくるとは」
一種のカウンターか。
ピンチになると熱湯鉄砲、放ってくるんだね。次からは頭、切りはなさないことにしよう。
それでも、まあ、戦闘には勝利した。いつものように戦闘報酬があって、僕らは甲板を進んでいく。
だけど、ほとんど行かないうちに、離れていく港から何かがこっちに向かってきた。
鳥? デカイな。それに派手。あっ、ふえ子だった。
「ピー。ピー!」
口に何かくわえてる。
岸から蘭さんやホムラ先生が何やら大きく手をふっていた。決して僕の出航を祝して見送ってくれてるわけじゃないと思う。
「僕は大丈夫〜。なんとか船を止めてみるよ〜!」
ふふふ。〜ってつけると、すごく楽しい船旅っぽい。豪華客船に乗って、僕は旅立つのだぁーって、そんな気分になれたらいいな。せめて気持ちだけでもね。
「船長室に行ってみようか。この船のキャプテンがいるはずだ」
まあ、たいていはデッキに近い上階層にあるはずだよね。
「ふえ子はトラっちに入っててね」
「ピー」
「ん? コレを見ろって?」
くわえてたものを僕にさしだす。封筒だ。ひらくと、手紙と赤いリボンが入ってる。
僕はリボンをミャーコポシェットに入れながら、手紙を読んだ。ホムラ先生からだ。
「きっ……きたない字」
まあ、急いで走り書きしたんだろうから、しかたないかな。でも、古文書みたいに読みとくのに苦労する。解読不能だ。ミニゴーレムがなんとかかんとか書いてあるような? あとでゆっくり謎解きすることにしよう。
僕らは船の上を歩きまわる。
甲板にはこれと言ったものはない。
ただ、久々に宝箱はふんだんだ。どれも回復アイテムなんだけどね。たぶん、パーティーとわかれて少人数になったから、僕らを支援するためなんだろうな。
出てくるモンスターはみんな海産物。ウツボ兵士やヒトデ船員だ。たまに海スライムや、ホタッテとサザエ戦士のペアなんかもいる。
「あれが
かもって言うより、そうに決まってるよね。たぶん、ゴドバの配下だ。あんまり強いと僕らだけで勝てるかどうか心配なところだ。HPの低いたまりんが前衛で戦わないといけないし。
だけど、操舵室の近くまで行くと、ドアが反対側にあった。まわりこんで行こうとすると、積荷が通せんぼしてる。
そうか。ここはボス戦かイベントがあるから、最後にならないと行けないんだな。
操舵室のとなりに階段があった。ここから
ドキドキ。地下一階にはふつうのキャビンが続いていた。船員のための部屋かもしれない。ほとんどは無人だけど、ときどき、ドアをあけたとたんにウツボンが襲ってくる。自室で寝てたウツボ兵士なのかも。
「なんか、サザエ戦士はサザエのツボ焼き落とすし、ウツボ兵士はウツボの天ぷらだし、お腹へったよね。食べちゃおうか?」
ドロップアイテムがただの料理にしか見えないのはなぜだろうか。
地下一階にはとくにおかしなものはない。ひとまわりすると、さらに下へおりていく階段があった。
子どもたちはどこにいるのかな? 船室には入れられてないのか。
地下二階にも異常はない。エンカウントのザコ戦があるていど。
それにしても、お腹へった。もう限界だ。
「朝からずっと戦ってるから、疲れたね」
「キュイ……」
「ぽよちゃんには猫車のなかに干し草があるよ」
「キュイ〜」
ぽよぽよ草の干したやつは、ぽよちゃんの好物だ。
僕らは船室のなかでちょっと休むことにした。
「そう言えば、キヨミンさんのくれたお菓子があったっけ。たまりんも食べる?」
「ゆらり〜」
ミャーコポシェットからスイーツを出して食べる。
美味い。幸せだなぁ。みるみる元気が復活してくる。
「あれ? もしかして、HP MPが全快した?」
「ゆら〜り」
「だよね」
特別なスイーツだって言ってたから、そのせいかな。
器に入ったストロベリームースを食べたんだけど、不思議とお腹もいっぱいだ。残りはとっとこ。いつ街に帰れるかわからない。
さあ、行くぞと立ちあがったときだ。カタリと室内で音がした。
な、何? まさか……幽霊船? お、オバケじゃないよね?