第140話 準々決勝、第一試合
文字数 1,690文字
いよいよ試合が始まった。
推薦枠同士の戦い。どんなかなぁ?
ワクワクしながら待ってると、左右のゲートから、それぞれのパーティーが会場入りしてくる。
「玄武組推薦枠、ヴィクトリアパーティー!」
ヴィクトリアってことは女性がリーダーかな。
前に見たガールズパーティーみたいな子たちかなぁ? ワクワク。
「…………」
違った。進〇の巨人パーティーだ。メンバーが全員、三メートルを越す高身長。しかも、すごいムキムキの筋肉隆々。でも、服装からすると、もしかするとガールズパーティーなのかも……しれない。
「で、デカイ……」
「数値もデカイぞ。みんな、ふつうにステータス1000超えだ」
「えっ? 千? HPが?」
「HPだけじゃない。ほとんどのステータスが平均的に千超えてきてる」
「うわっ。化け物集団じゃん」
「さすがに推薦枠で来るヤツらだなぁ」
うーん。力も防御力も千かぁ。蘭さんたち、アレとあたって大丈夫かなぁ? 初戦敗退もありうる。
「よっ」と声をかけてきたのは、デギル隊長だ。
そうか。ビーツ隊も勝ち残ってるもんな。今日も部下の健闘を見にきたんだ。それにしても、メンバーの名前がみんなフルーツや野菜なんだよな。あのパーティー。
「デカイだろ。あれ、ヒノクニの北にあるヤマノクニの巨人族だ。山彦の子孫だって話だな。見たとおり、力と防御力がケタ違いだよ。だが、素早さと器用さは低い。そこを利用して勝つしかないな」
蘭さんは先制攻撃が必須な上、力五万だ。体力が五のままだけど、防具も強いから、先手必勝で行けば勝てる。ただ、ほかのメンバーが心配だなぁ。一対一だと勝てそうにない。蘭さんに化けたモリーと、クマりんのパパ呼びでなら、なんとか。
「朱雀組推薦枠、トーマスパーティー!」
蘭さんたちの登場だ。
急にワアワアさわいでた観客が、しんと静まりかえる。
えっ? なんで?
おどろくようなことないよね? 〇撃パーティーのほうがずっと怖いよ?
ああ、可愛いピンクのぬいぐるみや、メロンソーダ味の森スライムをつれてるせい?
あの人選ってことは、バランとシルバンとケロちゃんは留守番なのか。ケロちゃん、グズっただろうなぁ。
あっ、ケロちゃん、まだグズってる。泣きながら追いかけてきた。
「ケロケロ。ケロケロ。ケロー!」
ぼくもやるよ、ぼくも戦うよ。ヤダー!——と言ってる。ケロちゃんは何言ってるかわかりやすい。
蘭さんは困ってるみたいだったけど、あきらめたようだ。森スライムのモリーがゲートのむこうに帰っていく。
ああ、蘭さんに化ければ、モリーも力五万になれるんだけどな。もったいない。
ケロちゃん、ご機嫌だ。蘭さんに手をひかれて入場。
これで、人間三人にぬいぐるみ二体という、えらくプリティーなパーティーに。
おおッとそのころになって、会場からどよめきが起こった。なんなんだ? みんな、さっきからどうした?
「う、美しい!」
「天女か?」
「誰だ、あんな美女。この世にいたのか?」
「セイラ姫だろ?」
「あっ、ほんとだ。セイラ姫だ。いつもお城の遠くのバルコニーに立ってるとこしか見たことないが、なんで姫様が武闘大会に?」
ああっ、女装した蘭さんがこの国のお姫様に似てるから、みんな驚いてたのか。たしかに、よく似てる。だって、青蘭は蘭さんをモデルにして書いたんだもんね。
「準々決勝、第一戦、開始です。両チーム先鋒、所定の位置についてください!」
ああ、先鋒はアンドーくんか。トドメがどれくらい効くかだよね。あと、隠れ身が一対一の戦いでも有効かどうか。
「先鋒戦、始めッ!」
戦闘開始直後。
やっぱり、隠れ身だ。アンドーくんの姿が消えた。見えないなぁ。これじゃ、相手は戦いようがない。
「アンドーくん。楽勝だね。ね? 猛」
「だといいけどな。あの技がいつまでもつかだよな」
ああ、そうか。隠れ身って、ふだん戦闘中はほとんど使わないもんね。潜入行動中によく使う便利技。
「隠れ身の効果は3ターンだ」と、デギル隊長。「そのあと2ターン、使えなくなる」
さすがによく知ってるな。隊長やってるだけのことはある。
3ターン以内に片がつけばいいけど。