第121話 予選二日め

文字数 1,627文字


 なんだか心配だなぁ。
 セイラは大丈夫かな?
 タツロウは強いから、きっと助けに行ってくれるんだろうけど。

 僕は気になりつつ、彼らと別れて、武闘大会会場に戻った。もちろん、二戦めも楽勝だ。

 最初は「坊や、やめときなさい」とまで言われたのに、会場を出るときはすっかり有名人になってた。ふっ。気持ちいい。

「見ろよ。あれが白虎の大本命だぜ」
「へぇ。あれが? ただのガキじゃねえか」
「そう見えるだろ? あれで大男をバッタバッタと倒していくんだぜ」
「じゃあ、白虎組はあのパーティーかな。あと玄武のドムドパーティー。朱雀は今年、パッとしたやつがいねぇなぁ」
「おう。青龍はゲンチョウっていう呪術師がハチャメチャに強いらしいぜ」
「本戦にはゴライも出るしなぁ。今年も熱くなってきやがった」

 街なかを歩いてると、そんな声も聞こえてくる。

「兄ちゃん。ゲンチョウとドムドが強いんだってさ」
「どんな戦いかたするか、明日は見てみたいなぁ」

 今日の二戦で参加者は四分の一に減ってる。てことは、だいたい二十五ていどのパーティーが残ってるのかな。

 その夜は何事もなかった。
 平穏な夜でスヤスヤ就寝。

 翌朝。予選二日めだ。
 今日の会場は二つ。参加者の少ない玄武と青龍は午前中に、本戦出場者が決まるようだ。午後から、僕らの白虎と朱雀の対戦がある。

 白虎はとくに参加者が多く、昨日は全四十二パーティーが争った。それが二戦を終えて、今日には十一までしぼられてる。今日は端数が出るけど、一チームは不戦勝かな?

「えーと、一回戦で六つになって、二回戦で三つ。三回戦でやっと本戦に出場できる二つのパーティーが決まるね」
「ああ。今のところ、おれたちの障害になりそうなヤツらはいないな」

 試合の一つずつが早めに片がつけば、今日じゅうに予選のすべての結果が出るだろう。

「かーくん。兄ちゃんはドムドとゲンチョウを偵察してくる。対戦前には戻ってくるから」
「わかった」

 ドムドとゲンチョウは僕も見たかったんだけど、不戦勝のクジ引きで手間取ってしまった。
 まあ、僕らの試合は午後からだ。それに兄ちゃんがいなくても、先鋒の僕一人で勝っちゃうもんねぇ。

 さて、午後になった。本日一戦め。
 なんと、対戦相手はダルトさんたちのパーティーだ。
 ええっ、ここまで勝ち進んできたんだ? 意外と運がいいのかな?

 違った。
 大将がダルトさん、先鋒がキルミンさん、なかの三人はこっちで雇った傭兵のようだ。キルミンさんが一人で勝ってきたんだろう。

「むむっ、小僧か。よし。大将と先鋒を交代だ。わしが出る」

 急きょ、僕を見て、ダルトさんが出てきた。やる気だ。絶対、『賭けてみる?』を出してくる気だ。

 ちなみに『賭けてみる?』は遊び人になると習得する特技。敵か味方のどちらかが、必ず全滅する。必ずだ。その場合、幸運の数値の合計の高いほうが生き残る。

 僕の幸運値はマックスふりきり99999だもんね。賭けてみるで戦闘不能になることは、まずない。

「ただいまより第六試合、始めます」

 旗がふられ、対戦開始。

 ふつうに僕が先手をとれるから、賭けてみるの前に倒せちゃうな。賭けてみるにこだわりがあるみたいだから、せめて待ってあげようかなぁ? いや、そんなこと言って、もしも万一にでも僕が倒れたら、大変なことになる。ここは慎重に行動だ。

 僕は足ぶみして少し素早さをあげようとした。でも、動けない。ん? なんでだ?

「ははは! どうだ? 恐ろしいだろう? どうだ、わしの特技『あまのじゃく』は? 自分より素早い敵に対しては、必ず先手をとれるのだ」
「ええーっ!」

 いや、でも、幸運の数値が僕のほうが上だ。賭けてみるで僕が倒れることはない。

 なのに、なんだろう?
 ダルトさんのあの不敵な笑みは?

 ま、まさか! あまのじゃく? あまのじゃくだって?
 その特技、素早さだけじゃなく、幸運数値の効果も逆転させることができるんじゃ?

 もしそうなら……確実に僕が負けるんだけど?
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