第11話 トレインジャック戦3

文字数 1,851文字


 あーあ、盗賊が仲間を呼んで、機関車からドタドタと男が三人走ってきた。さっき運転手をおどしに行ったメンバーだね。四人ずつにわかれてたから、今は一人だけ機関車に残ってるのか。

 テロップは告げる。


 盗賊が仲間を呼んだ。
 野生の山賊が現れた!
 野生の海賊が現れた!
 野生の村人が現れた!


 えっ? 村人? 村人って職業はないんですけど。つまり、ただのそのへんの人ってことだ。たしかに、いかにも見るからに弱そう。

「なんか、ツッコミどころがありすぎて、なんて言っていいのか」
「山賊とか海賊なんて職業もあるんですね。僕、初めて見ました」
「僕らが知ってる職業が全部じゃないってことだね」

 大盗賊というのは、まだパーティーの誰もなったことはない。ないけど、自分の職業管理パネルを見れば、なれるんだなぁって思ってはいた。でも、山賊海賊は知らなかった。

「ぽよちゃん、もう一回、聞き耳お願い」
「キュイ!」

 ぽよちゃんのお耳が動いて、山賊と海賊の得意技をのぞきみる。蘭さんがめざとく、それを見つけた。

「山賊。待ちぶせ、大岩ころがしですか。待ちぶせは先制攻撃率アップ。大岩ころがしは全体攻撃ですね。威力は通常攻撃の……えっ? 1.2倍? ちょっといい技ですねぇ」
「だね。ふつうは全体攻撃って威力がさがるもんね」

 海賊は大砲っていう、これも全体攻撃だ。ただ、ターゲットがランダムで四連続攻撃。威力は0.8倍。狙った相手を速攻で倒したいとき向きの技じゃないね。

「どっちも全体攻撃できるんだ。やっぱり、僕らももっと上級職いっぱい、おぼえないとね」
「そうですね」

 この世界に初めて来たときは、昔、僕が好きだったドラゴンをクエストするゲームに似てるなぁって思ったんだけど、じっくり冒険すると、どうも違う。ターン内で素早さの差異によって行動回数が加算される戦闘方式とか、職業の数も異様に多い。上級職の上にさらに最上級職とか、隠し職業なんかもあるみたいだ。

 それにあのゲームでは数値の上限が、レベル99、各ステータスは999だったはずだけど、僕のHPすでに1000超えてるもんな。

 てか、前に僕のスキルでズルしてマックスに近くした幸運数値は99998だ。つまり、万の位まで数値は伸びるってこと。それ、もう別のゲームだよね。もしかしたら、レベルも999くらいまで成長するんじゃないか?

 まだまだ、謎に満ちた世界だなぁ。

「とにかく、やっつけましょう」
「そうだね」

 新たに現れた敵のレベルは25から28。さっきの連中より強い。まあ、こっちは装備品がとにかく最終装備なみだから、相手のレベルが10や20上でも楽勝なんだけどね。ほぼ、強くてニューゲーム状態。

「全体攻撃連続されるとやっかいだから、僕、山賊と海賊、やっつけてもいい? ロラン」
「いいですよ。でも、あの村人は優しく素手で叩くくらいにしてあげないと、死なせちゃいますよ?」
「そうだね。気をつけないと」

 僕は足をふみふみして、さらに素早さをあげなから、村人を観察した。村人って言うか、どう見ても中坊なんだけどなぁ。十三、四歳。再会を約束して別れたナッツを思いだす。ナッツもあのくらいの年の少年だ。見るからに、わけありそう……。

「とにかく、やるよ」

 さっきから動きまわってるから、僕の素早さはすでにもとの値の五倍。500%だ。いつもながら、このブーツ反則技だよね。1000%まで重ねがけできるんだよ? ザコ敵相手なら僕一人で、たいてい終わる。

 走っていって、精霊王の剣(レプリカ)を山賊海賊の腹に叩きこむ。よろいがめりこむくらい衝撃があって、山と海の賊は仲よく倒れた。

「ヒイッ。やっぱり、バケモノだー!」
「あっ、もう仲間呼びはよしてください。いくら呼んでもムダですから。戦闘が長引くだけ」

 パシパシッと容赦なくムチをふるって、蘭さんが盗賊をしとめた。


 チャラララッチャッチャ〜
 村人Aは戦意消失した。
 戦闘に勝利した。経験値500と200円を得た。
 戦士は薬草を落とした。
 武闘家は薬草を落とした。
 盗賊は皮の帽子を落とした。
 大盗賊は秘宝の地図を落とした。
 山賊は山賊刀を落とした。
 海賊は海賊のヒゲを落とした。


 そんな感じにテロップが流れていく。ほんとは宝箱をいちいちあける説明なんかもあったんだけど、長いから割愛だ。

 僕のマックス1手前の幸運値のおかげで、ほとんどの敵がアイテムをドロップする。
 薬草や皮の帽子は今さらいらないんだけど、秘宝の地図ってのが、すごく気になる。
 なんだろ? それ。
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