第277話 とびだした何か
文字数 1,824文字
グレート研究所長の体は光のなかへ消えていった。
モンスターも転生するのかな?
僕は現実の世界で輪廻転生があるかって言われれば、決して信じてるわけじゃない。ただ、そういう思想が死を直前にした人の救いになるんだろうなとか、あったらロマンチックだよね、とは思ってる。
だから、異世界であるこの世界では、そういう神秘が起こってくれたらいいな、と願う。
それはともかく、ワレスさんたちはどうなった?
ゴドバを倒したんだろうか?
あいかわらず、ドッスンドッスンゆれていたあの箱なんだけど、そのときだ。
とつぜん、ドッカーンと箱の天井が伸びて、内側から何かがとびだしてきた。
うわっ。めっちゃぶあつい鉄板つきやぶったー!
さらにそのままの勢いで建物じたいの天井もやぶって、どこかへ飛んでいってしまう。
「今の、何?」
「魔物っぽかったよな」
「やっぱ、そう?」
「そうだろな」
ゴドバ……だろうか?
前に見たゴドバとはえらく違ってたけど。まあ、三メートルのグレート研究所長が魔改造されて三十メートルになったくらいだからね。
「ゴドバが巨大化したってことかな?」
すると、箱のなかから、ワレスさんがかけだしてきた。
「フェニックスから奪った力を、やつは吸収していたんだ。おれたちが箱に入ったときには、すでに箱いっぱいに巨大化してた。あの箱がそういう装置だったらしい」
そう言えば、フェニックスの力を吸いとってた壁とあの箱はつながってたもんね。
「とびだしていきましたよね?」
「すぐに追いかけよう。おれはさきに行く」
ワレスさんはそう言うと、以前のように空に浮かんで、ゴドバのあけた穴から飛んでいった。いいなぁ。僕も風の精になりたい。
「えーと、僕らはどうやって追いかければ?」
「とりあえず、城から出るしかないな」
「じゃあ、表門から出ようか」
そっちだったら、前のとき通ったから、道すじがわかる。
それにしても、蘭さんはどこに行ったんだ? それが一番、心配なんだけど。
「かーくんさん。ごいっしょいたしましょう」
ワレスさんがいなくなったんで、司書長が軍用馬車をひきいてやってくる。キヨミンさんも、なんか知らないけどヘラヘラ笑いながら外をながめてるなぁ。どうせ、変な妄想してるんだ。
「ああ、イケメンがいっぱい。幸せ〜。でも、一番の美形のワレスさまがいなくなったので、早く追いかけましょう。キヨミンの夢のお告げでは、その前に亡霊店主を仲間にしとくといいってことになってますよ」
「亡霊店主……」
たしかに、さっきからソワソワしながら、こっちを見てる半透明の人影がある。幽霊なんだけど、嬉しそうに目をキラキラさせてる。
「…………」
「かーくん。声かけてやれよ。待ってるぞ?」
「だよね」
すると、待ちくたびれたように、むこうから話しかけてきた。あいかわらず、人なつこい亡霊だ。
「いらっしゃいませ! おひさしぶりですね。またまたご来店いただけるとは嬉しいかぎりです。さささ、どうぞ、どうぞ。お休みですか? それとも買い物ですか?」
しょうがないな。たしかに、この亡霊店主はものすごく貴重な古代のアイテムをたくさん売ってる。精霊王の剣(レプリカ)を買ったのも、この店主からだ。きっと、まだまだいろんなものを売ってるはず。
「ゆっくり買い物したいんですが、時間がないんですよ。さっき、逃げだしたゴドバを追いかけないといけないんで」
これ以上ないくらいガッカリされてしまった。泣きそうな目で見られると良心が痛む。
「……そうですか。数百年ぶりのお客さまだったんですが、もう行くんですか。買い物もせずに行ってしまうんですか。そうですか」
「いや、その、僕ら三ヶ月前にも来たよね? 数百年ぶりじゃないよね? さっき自分でも、おひさしぶりって言ったよね?」
「はるかいにしえの戦いの折りに殺され、一人、魂となってさまよい続けた
「ああ、もう! わかった。わかった。買い物はするよ? するけどね。今は急ぐの。あとでいい?」
亡霊店主はハンカチをかんで泣きながら、じっと僕をながめてくる。の、呪われそう。
「わかりました。それでしたら、出張販売いたしましょう!」
「えっ? 出張販売?」
「はい。わたくし、亡霊ですから、この島のなかくらいなら、どこへでも飛んでいけますよ」
「…………」
幽霊のストーカー……。