第240話 特訓の日々は終わり

文字数 2,013文字


 数日間、僕らは職神さまと遊んだ。
 一回勝てても、二回め以降は職神さまのステータスが倍々で増えていくので、勝つのはなかなか難しい。
 ワレスさんはあのあと、自分自身として挑戦し、四回ほどツボ貰ってたけどね。

 それにしても、なんであのとき、ワレスさんが召喚されたのかなぁ? 精霊王? たしかに、精霊かってほど美形だけど。

 ツボもたっぷり集めたし、職業もずいぶんマスターした。レベルもなんども1に戻しながら、今は50にアップした。ステはおもしろいほどあがったよ。武闘大会のころにくらべたら、全員、数倍、強くなったね。

 そんなころだ。
 僕らの宿舎にやってきたワレスさんが、ついにこう言った。

「ゴドバの居城がわかったぞ」
「わかりましたか!」
「ああ。というより、わかるはずだ」
「えっ? というと?」
「以前、おまえたちがゴドバの船を占拠したろう?」
「ああ。あのさらわれた子どもたちをとりもどしに乗りこんだとき」
「ホムラがな。あの船を改造したんだ。ゴドバの腕に仕込んだマイクロチップを感知して、自動でやつのもとへ向かうシステムを開発した」

 な、なるほど。それなら確実だ。

「でも、前のときは馬車で行ったんですよ。船で行けますか? あの幻の大地」
「途中、魔法で変な空間を通ったと話していたな?」
「はい」

「その道なら、基本的に乗り物はなんでも通れるはずだ。国防はギガゴーレムに任せておけば安心だ。さっそくだが、明日、おれたちは隊を編成し、あの船でヤツの居城へ出発する。おまえたちも来るか?」
「もちろん、行きます!」

「そうか。到着してからは何が待っているかわからない。こっちへ戻ることができるかどうかもな。何年もかかるかもしれない。やり残したことがないよう準備しておくといい」
「はい!」

 というわけで、僕らはギルドに行って転職しておくことになった。

「ああ、でも、商神になっといたほうが補正ボーナスが高くていいかな? 習熟中だとどうしても数値低いし」
「むこうには神官いないだろうしな」

 なんて話す僕らを見て、ワレスさんが不思議そうな顔をした。

「……もしかして、転職のたびにマーダー神殿に通ってたのか?」
「通ってましたけど?」
「最初にその職業につくときは神殿で祈ってもらわないとなれないが、一度でもついたことのある職業なら、ステータス画面から自分で変更できる」
「えッ?」
「だから、おれはいつも遠征前は、神殿で習熟用の新しい職に複数ついておいて、道中、こまめに転職しながら覚えていたが?」

 うッ。だから、やたらマスターするのが早かったのか。

「もちろん、習熟速度が早くなる生来特技を持っているせいもある。しかし、それにしても、いちいち神殿に行くより、ムダなく職業経験値を得られる」
「なるほど!」

 試しにステータス画面をいじってたら、たしかにできた。なりたい職業を二回素早くタッチすると、今の職業と切りかわる。ダブルクリックだ。し、知らなかった……。

「じゃあ、僕、今、就労中のオーロラドラゴンのほかに、何個か祈ってもらっとこっかな」
「全員、そうしたほうがいい」
「ですね」

 いいことを聞いた。
 あの幻の大地へ行けば、なかなかマーダー神殿へは行けないだろうからな。こんなにおぼえきれないと思うくらい、かなり多めに全員がお祈りしてもらった。
 神官さまは疲れはててたけど、世界平和のためだからってがんばってくれた。ありがとう。寄付も多めにしといた。

 貯金もしたし、無職のツボやMP回復できる妖精の涙や、いろんなアイテムを買いだめした。

 久しぶりに小さなコインを集めてるポルッカさんにも会いに行った。

 マーダー神殿の近くでモンスターを預かってくれてるおじいにも会った。モンスター牧場がネコりんだらけになってるかなって心配だったからだ。

 うん。ネコカフェ。僕ら、こんなにネコりん集めてたっけ? 百匹はいるんだけど。

「すいません。これ、餌代とか、維持費として使ってください」
「おう、いいのかね? ありがたや。ありがたや」

 一億ほど渡しておく。たまにここに来て、ネコりんたちとたわむれるのもいいな。

「僕、今夜はミルキー城に帰ってもいい? 明日の朝、出発前には必ず来るから」
「うん。いいよ」

 蘭さんは自分のお城に帰っていった。前のヤドリギとの戦いのショックでお母さんが寝たきりになってるんだけど、少しはよくなってるといいな。

「じゃあ、おれも今夜は自宅へ帰る。ブルーベリーと飲みたいし」と、ラフランスさんも去る。

「アジはどうするの? 僕らと行くのは危険だよ?」
「いいよ。おれも行く。シャケ兄ちゃんはきっと、そこにいると思うんだ」
「そうだね。ゴドバを追っていったんだもんね」

 シャケも元気にしてるかな? 無事ならいいけど。

 僕らはそれぞれの夜をすごし、そして一夜が明けた。

 いよいよ、ゴドバを倒すために、僕らは旅立つ。
 今度こそ、あの人間を魔物に変える悪しき研究所をぶっつぶすんだ!
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