第274話 グレート研究所長戦4

文字数 1,437文字



 グレート研究所長がうなり声をあげて起きてくる。
 そして、よろめきながら立ちあがると、長広舌を始めた。

「負けん……わがはいは負けんぞ。あとわずかでオーク族が世界を支配するという、今このときにな……長かった。わがはいの無念を今こそ晴らすのだ。人間どもめ。我らオーク族をブタとののしり、さげすんできたことを悔やむがいいわい」

 グレート研究所長はまだ語る。積年の恨みだもんね。だいぶ積もってたんだね。

「……わがはいはな。もともとは人間の国で生まれたのだ。我ら三兄弟。豊かな実りある地で優しい母に育てられていた。人間どもは赤ん坊のわがはいらの世話係だった。食事や寝場所を用意する。それが人間どもの役目だった」

 ん? それって、もしや……?

「わがはいたちは、なんの苦労もなくスクスクと育った。食べるものは好きなだけあたえられ、人間どもにも可愛がられた。早く大きくなれと成長を喜ばれた。だがな。それは人間どもの卑劣な罠だったのだ! ブヒッ!」

 ……んんー、やっぱり、それって?

「ある日、我ら三兄弟の父がとつぜん、いなくなった。そのときはなぜ、どこへ行ったのかわからなかった。母も父が消えたわけを理解していなかった。その後もときおり、仲間が消えた。一人、また一人とな。仲間がいなくなったあとは、人間どもが上機嫌だった。美味い肉を食い、金貨をにぎっていた。ある日、世話係の人間が我ら三兄弟を見て、こう言ったのだ。『そろそろ出荷してもいいか』と。わかるかッ? ヤツらは我らの仲間を市場へ売りさばいていたのだ! 売られた仲間は人間どもに殺され、食われていた! わがはいたちは人間に食われる肉として育てられていたのだー!」

 うん。やっぱりね。
 それ、牧場ね。養豚場。

「な、なんだ? その目は? 同情などするなー! わがはいたちの辛苦が人間などにわかるものかッ!」

 えっと、ブタさん、食肉だから……そのために育てられてるし……。

「兄ちゃん。やっぱり、ブタさんだったんだって」
「そうだな。そのときの恨みの思いでモンスター化したのかもな」
「かしこいブタさんだったんだね」
「そうだなぁ」
「ちょっと、かわいそうになっちゃった」
「いやいや、でも悪いことしてる」
「だよね。養豚場から命からがら逃げだしたとしても、人間をモンスターにしていい理由にはならないもんね」

 僕はグレート研究所長をながめた。ブタさんはブヒブヒ鼻を鳴らしながら、Vの字の前足を自分の胸に押しあてる。

「魔改造ーッ!」
「ああー!」
「アイツ、自分を魔改造したぞ」

 みるみるうちに、グレート研究所長の体が大きくなっていく。巨大化し、背中に羽、頭に角なんか生えてくる。うーん。なんていうか、西洋の悪魔のブタさんバージョンって感じだなぁ。

 よくわからないけど、数値は爆あがりしたみたいだ。たぶん、十倍か、へたすると百倍。ものすごい勢いでブタのひづめの前足をふりおろしてくる。

「V字アターック! 連打! 人間どもめー! 滅びるがよいわー!」

 すごい風圧だ。
 僕はさっき走りまわって器用さがそうとうにあがってるから、ピョコピョコとんでかわすことができる。

 猛も羽ばたいて、かわしてる。そうだった。猛って、ガーゴイルの羽ばたきって技が使えるんだっけ。てか、反射カウンターで反撃もできるんだった。パタパタしながら、剣をぶんまわしてる。どれもクリーンヒットしてるんだけど、巨大グレート研究所長、あんまり弱ってる感じじゃないぞ?

 こ、これは……めっぽう強いんじゃ?
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