第211話 とつぜんの美少女

文字数 1,555文字



「そこに行ってみましょう。もしかしたら、あなたのお兄さんはその力を狙ったのかもしれない」

 タツロウはうなずいて馬を進める。


 チャララララ……。
 野生のさまよえる魂A、B、Cが現れた!


 ああ、さっそくモンスターが出たか。

「じゃっ、戦闘は任せたよ。僕とぽよちゃんはバーサーカーのうちは戦えない」
「いいけど、かーくん。だから、言いましたよね? バーサーカーなんて危険ですよって」

 ウソだぁ。蘭さん、なんにも言わなかったよ? あとずさって僕をさけただけ。
 いや、目で言ってたかな……。

「あっ、僕、後衛でなら戦える。援護するよ〜」
「……まあ、後衛なら」
「はいはい」

 猫車をおりて、なにげなく馬車に乗ろうとした僕はぶったまげた。

 御者台に目を疑うような美少女がすわってる!
 ええーッ? 誰ーッ?

「あっ、かーくん。たまりんですよ。この墓場に入ったら、とたんにそうなって」
「ええーッ!」

 って叫んだものの、そうでもないな。
 そうだった。たまりんは、たまーに絶世の美少女になるんだった。これまでは夢のなかだったり意識がもうろうとしてたりしてハッキリしなかったんだけど、やっぱり目の錯覚じゃなかったー!

「た、たまりん?」
「かーくん。やっと話すことができるね」
「たまりーん!」

 ほっそりした色白の金髪碧眼美少女。ノルウェーとかスウェーデンとかの北欧系。リアルに妖精だよね。
 巻毛のブロンドがもう僕の好み直撃だ。男のワレスさんですら、間近で見ると心ときめくのに、ましてや美少女だよっ? まあ、ちょっと透けてるけどね。

「たまりんは、ほんとは誰なの? なんで、ふだんは火の玉なの? も、もしかして死んで……」

 お、オバケか?
 オバケなのか?
 うーん。たしかに、そのへんを飛んでるさまよえる魂と同じ姿。だけど、超絶美少女だよ? 美少女ならいいかな? オバケ怖い。でも美少女……。

 悩む。悩むなぁ。
 オバケだからナシなのか、怖いけどガマンして美少女をとるか。
 究極の選択ーっ!


「——剣の舞! ダメだな。魂には通常攻撃は効かないぞ」
「魔法攻撃ですね?」
「それか、ブレスだな。おれ、やってみる」
「お願いします!」


 えーい。外野がウルサイな。(戦ってくれてる仲間に悪態つくかーくん)

「ねえ、たまりんは何者?」
「あのね。かーくん。わたしはまだ死んでないの」
「えっ? そうなのっ?」

 こっ、これはもしや、大ラッキーかぁっ?


「ファイヤーブレス!」
「あっ、きいた! 魔法かブレスなんだ」
「やったな。これからはブレスだ。魔法はMP使うが、ブレスは必要ない」
「僕、ブレスなんて吹けませんよ」
「ははは。おれに任せとけって」
「わあっ、タケルさん。頼りになるぅ。僕にも兄上がいたらよかったな。タケ兄ちゃんって呼んでもいい?」


 ああっ、もう黙ってよ。猛も、蘭さんも。てか、猛は僕の兄ちゃんだからね? とらないでよ?(ヤキモチは妬くブラコンかーくん)

「かーくん。もう時間がないみたい。でも、いつか、ほんとのわたしに会えるから。ウールリカに来てね。待ってるから……」
「たまりん!」

 ああッ、美少女の姿がどんどん薄くなってく……。
 ニコッと最後に笑みを残し、たまりんは消えた——

 いや、消えてないけどね。
 火の玉はいる。

「……たまりん?」
「ゆらり!」

 ああ……またホラーバージョンになってしまったか。
 でも、やっぱり、そうだ。たまりんはあの美少女なんだ。夢でも幻でもなかったんだぁー! ははは。ふふふ。

 いつか、ほんとのたまりんに会える日が来るのかも。
 ウールリカ。
 たまりんはウールリカにいるのか。


 チャララララ。
 野生のさまよえる魂A、Bが現れた!


「ファイヤーブレスー!」
「わあっ、タケルさん。すごい、すごい!」


 えーい。僕のロマンチックをとことんジャマしてくれるなぁ。
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