第16話 ミニゴーレムお目覚め
文字数 1,942文字
雑貨屋は満足。
爆買いしたなぁ。
ちなみにミニゴーレムはその場でお姉さんが組み立ててくれた。プログラム変換器にマイクロチップなどのそれ用アイテムを全部セットして、基本AIにケーブルでつなぎ、ボディーのお腹のなかにつめこむのだ。
体高は三十センチくらい。重さはよくわからないけど、見ため小型のシルバンだね。ビックリするぐらい似てる。五分の一スケールのシルバン。
「プログラムAは通常攻撃です。プログラムBは仲間を守る行動をとります。プログラムCはロケットパンツ。プログラムDは全体に攻撃する火炎放射。レベルアップは基本AIの演算により自動で行われます。ボディーはミスリル製の完全防水。ドーバー海峡も泳いで渡れますよ」
この世界にもあるんだ。ドーバー海峡。
「エネルギーの乾電池はソーラー充電しますので、とくに交換の必要はありません」
ソーラー充電? そんなことまでできるんだ。むしろ現実より科学が進歩してるような?
その技術があれば、スマホの充電問題なんて即座に解決だ。よかった。この街まで来て。
「背中にスイッチがありますので、かーくんさんが入れてください。最初にスイッチを押した人を主人と認識します」
「わかりました」
ドキドキ。主人か。いい響きだなぁ。
そりゃね。僕には仲間もいるし、パーティーのメンバーはみんな友達だ。ぽよちゃんやケロちゃんたちも可愛いし。
でも、主人ってのは、これまでなったことないんだよ。
背中というか、首のうしろに丸いボタンがある。僕はポチッとそれを押した。
ジィー……ジィー……と、しばらく音を立てたのち、つぶらな目がピカピカと二、三度光る。黄色い色から青い色へ。そして、動きだした。
「ハジメマシテ。アナタがワタシのマスターですね?」
「うん。僕はかーくんだよ。よろしくね。君の名前は……そうだなぁ。ミニゴーレムだから、ミニゴ……ミニコだ!」
「リョウカイしました」
いいなぁ。このロボットっぽいしゃべりも嫌いじゃないぞ。
「戦闘でも役立ってくれそうですね。でも、ステータスが見れませんよ?」と、蘭さん。
「えっ? そう? もしかしてNPCあつかいなのかもね」
とにかく、次の買い物だ。
変わった街だから、よそでは見ない武器や防具なんかもあるかもしれない。
やっぱり新しい街って楽しいね。冒険、冒険。
さて、次は武器屋だ。
武器屋にはボウガン、ライフル、機関銃があった。飛び道具ばっかりだ。弓使いにしか装備できないらしい。
「ライフル? きかんじゅう? 僕、こんな武器、見たことありません」
「そうなの? 火薬を入れた弾丸を発射するんだよ」
「大砲みたいなものですか?」
「うん。まあ」
そうだよね。蘭さんの国の文明は完全に中世だ。ピストルの発明はまだだろう。
でも、飛び道具がアリになると、戦闘がややこしくなるかなぁ?
思ったとおり、機関銃がズバ抜けて攻撃力高い。攻撃力90。しかも連続十回攻撃可能だ。
これはちょっと殺傷能力強すぎて、僕らの戦いかたにはあわないかもしれないな。
弓使いは後衛からも攻撃できる唯一の職業だ。この調子だと、もしかしたら弓使いの上級職としてガンマンとか出てきそうだけどさ。
念のため、機関銃を四丁、買っておいた。これは人間相手には使うつもりはない。四天王とか、ほんとに息の根を止めないといけない極悪なモンスターを相手にするときの用心だ。
僕らのパーティーは全員、弓使いをマスターしてるから、もしものときに、きっと役立つ。
「次は防具だね」
「僕ら、防具は充実してるから、たぶん必要ないと思いますけどね」
「そうだね。銀行からもらったオリハルコンのよろい、あまってるもんね」
じつはチートアイテムの風神のブーツなども、銀行の貯金額に応じてくれるプレゼントだ。一億円たまるまで、いろいろとくれた。店で買うよりずっと高性能のものだから、ほぼ店で買う必要はないんだけど。
「まあ、行ってみようよ。珍しいものがあるかもよ?」
「そうですね」
防具屋で見つけたのは、ミスリルシリーズだ。
ミスリルのよろい、ミスリルの胸あて、ミスリルの盾、ミスリルのブーツ。
「やっぱりオリハルコンのよろいのほうが数値は高いなぁ。でも、盾は買いかえとこ。あれっ?」
僕は気づいたぞ。
ミニコ、防具が身につけられる。さっそくミスリル装備でそろえた。よろいは着れなかったので、胸あてだ。
ミスリル製のボディーの上からミスリルの防具。なんか、着ぶくれした雪だるまみたいだ。
残念ながら、装飾品屋はなかった。王都のギルドにくらべて、設備が少ない。王都はほかにも魔法屋とか合成屋もあるからね。
「よし。じゃあ、情報屋に行こうか」
めぼしい情報があるといいなぁ。シャケの行方……は、さすがにムリかなぁ?