第213話 王墓の前で

文字数 1,427文字



 僕らは百八十度屈折して、折り返す道のほうへと歩いていく。両側を岩壁にはさまれた細い道だ。墓石はもう見えない。

「前方が明るい」
「海岸線へ出るんだ」と、タツロウが説明してくれた。

 そのせいか、潮騒が強くなる。磯の香りだ。

「なんで、こんな不便な場所に王墓があるんだろう?」
「そこまではわからないが、おそらく、例の扉を守るためではないかな」
「そうなんだ」

 道のさきが、ますます明るくなる。ずっと暗い洞くつの墓場だったから、かすかな光がまぶしいほどだ。

 あれっ? 人声が聞こえる?
 波音が響くから、気のせいかな?

「うーん。前から? いや、うしろから?」
「かーくん。何ブツブツ言ってるんだ? ほら、もう外だ」

 馬車が洞くつを出ていく。
 外は浜辺だ。でも、広くはない。岩場のあいだにほんの小さな砂浜がある。その砂浜から岸壁に階段がのびていき、あがったさきに墓石が見えていた。その奥には扉もある。

「あッ、ここ、転移魔法の拠点になってる!」
「ほんとですね。いちおう外だから、ここだけワールドマップあつかいなんですよ」
「ちょっと、僕、急いでギルドに帰って転職してくる! もうバーサーカー、マスターしたから」
「キュイキュイ!」
「わかりました。急いでくださいね」
「うん」

 僕はぽよちゃんをダッコし、旅人の帽子を使った。ヤマトのギルドに戻る。大急ぎでマーダー神殿へかけこんだ。

「すみません! パリピに転職させてください!」
「では、かーくんよ。パリピの気持ちになって祈りなさい」

 パリピかぁ。
 僕はふだん、そういうのやらないけどさ。毎晩、仲間で集まってパーティーするんだろうなぁ。音楽かけて、お酒飲んで、水着とかビーチとか、あはは、うふふとか……。

 あれ? でも、うちにみんな集まるよな。三村くんが遊びに来たり、猛の友達とか、赤城さんとか。で、みんなでご馳走食べて、お酒飲んで、トランプとか花札してさわぐ……ハッ! すでにパリピだった!


 チャラ〜ン、ラ〜ン♪


「かーくんよ。今日からあなたはパリピです」
「はい。すでにパリピでした!」

 ぽよちゃんもマスターしてるので進みでる。

「キュイキュイ、キュイ」
「では、ぽよちゃんよ。マッスルマニアの気持ちになって祈りなさい」
「キュイ」

 えっ? 何そのマッスルマニアって?
 条件を見たら、武人とバーサーカーをマスターしたらなれるみたいだ。とくに特技とかないけど、なんかオイシイのかな?

「ぽよちゃん。今日からあなたはマッスルマニアです」
「キュイ」

 神官さま、ぽよちゃんの言葉、よくわかるね。僕でさえ、マッスルマニアは通じなかったよ。

「ま、いいや。ぽよちゃん、行こう」
「キュイ!」

 ようやく、プチバーサーカー祭り終了だ。ニートより危険な職業だった。
 これで僕も前衛に立てる。

 大急ぎでギルドをとびだし、ふたたび魔法で名人墓場の砂浜まで移動する。

「お待たせッ!」
「オッケー。五分以内です。じゃあ、行きましょう」
「あっ、僕も前衛に立てるようになったよ」
「じゃあ、ケロちゃんにさがってもらいましょう」

 王墓の前では戦闘があるかもしれないからね。
 王の魂とかかな?

 僕らは急いで階段をかけあがった。
 墓前に人影が見える。二人……いや、三人だ。

「セイラ! 兄上!」

 そう。そして、もう一人はゲンチョウ。いや、女暗殺者のスリーピングだ。

 二人は嫌がるセイラ姫を両側からはさんで、扉の前へつれていこうとしている。

「待て! お姫様を離せ!」

 ハアハア。まにあったー!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み