第215話 暗殺者スリーピング戦2
文字数 1,739文字
「先制攻撃!」
宣言したあと、いつもならスパパンとムチをふるう蘭さんだけど、今はじっとしてる。
おおっ、効果あった!
これはいいぞ。
「薔薇〜!」
バランの薔薇がさきに発動した。自動効果で『みんな、もっとがんばろ〜』がかかる。
いいぞ。これはいい。順番的にこうじゃないと、蘭さんの行動がいかされない。
ついでだから、僕はバランの薔薇の効果も書きかえてみた。もともとのは、こっち。
薔薇 戦闘開始直後のターン最初に自動で自身の全ステータスがプラス100された上、『みんな、もっとがんばろ〜』が発動する。花びらが舞い、敵に30%の確率で目くらましをかけることがある。
バラン、薔薇にランクが書いてない。もしかしたら、ランクアップしないのかもしれない。じゃあ、こうだ。
薔薇
ランク2 戦闘開始直後のターン最初に自動で自身の全ステータスがプラス1000された上、『みんな、もっとがんばろ〜』『みんな、もっと固くなれ〜』が発動する。花びらが舞い、敵に60%の確率で目くらましをかけることがある。
へへへ。これで
蘭さんの特技はちょこっとかまっただけだから、消費電力5%だったけど、バランのは15%だ。特技の書きかえって、けっこう電力が必要みたいだ。まあ、一回変えると効果が大きいからね。
「じゃあ、ぽよちゃん、聞き耳お願い」
「キュイ」
僕は待ってるあいだ足をパタパタして、素早さと器用さをあげる。これも効果を書きかえてあるから、なんか怖いほど、スイッ、スイッと体がかるくなる。そうだよね。自分の数値の三倍ずつあがるようにしたもんね。
スリーピングがたとえ魔王軍でも、まったく僕らの敵じゃないんじゃないの?
さて、聞き耳によれば、スリーピングのレベルは50。あれ? 魔物にしてはかなり高い。これまでボスでもレベルは10くらいだったよ?
いろんな数値はあとでじっくり見るとして、とにかく特技だ。スリーピングは試合のときに、僕に変な攻撃しかけてきたよね。
「あッ!」
「あッ!」
「あッ!」
みんなの声がそろう。
「かーくん。タケルさん。コイツ、吸血鬼です」
「だね。職業、ヴァンパイアってなってる。特技は吸血!」
イヤな特技だなぁ。
あきらかに、この吸血ってのが、僕の数値を吸いとろうとしたやつだ。そのほかの特技は、催眠とコウモリ変化。
「催眠かぁ。あやつってきそうだね」
「いや、睡眠攻撃みたいだぞ。それより、問題なのは吸血だな」と、猛。
吸血
ランク3 敵パーティーから任意の数値を最大値の十分の一吸いとる。戦闘終了後も吸いとった数値は減らない。また、吸いとられた敵の数値はレベルアップでも元に戻らない。
「ちょっと待って。敵パーティーから、だって」
「そうだよ。おれたちのつまみ食いの対象は敵単体だ。しかも、おれたちのはレベルアップで相手の数値も元に戻る」
僕はつまみ食いしたあと仲間になったモンスターのことを思い浮かべた。
そういえば、そうだった。これまで仲間になった子たちは、つまみ食いで数値が減っても、レベルアップのときに吸いとられたぶんがリセットされるみたいだった。
でも、スリーピングに吸われると、二度と戻ってこない……それは、怖いな。
「どうしよう。怖いね」
「かーくん、試合のとき、はねかえしてましたよね?」と、蘭さん。
「うん。白虎の守護者になったから、そのご加護で」
「その効果でなんとかなるんじゃないですか?」
そう信じたいけど、なんか不安だなぁ。
それにしても、なかなか攻撃に移らない僕たち。
アジがあっさり言った。
「次のあいつのターンまでにやっつけてしまえばいいんじゃないの? 兄ちゃんたち、強いんだからさ」
まあ、そうなんだけどさ。
「じゃあ、僕がまず攻撃してもいいですか?」
「うん。ロラン。お願い」
この一発で終わるかな?
蘭さんの10万攻撃。
ところがだ。
スパンと華麗にムチが鳴った次の瞬間、スリーピングはかわした。
「あっ……僕、もう動けません」
蘭さんが青くなる。
そんなバカな!
蘭さんの数値、昨日、書きなおしたから、一万超えてるんだよ?