第300話 豪のゴドバ戦1

文字数 1,538文字


 ぽこりと一発たたいただけだった。
 その一発が百億ダメージなんだけどね。

 グラリとゆれた巨人は、いきなり、よこ倒しになった。
 みるみるうちに白い灰になっていく。

「ギャー! あっけなかったー! ミャーコ!」
「ミャッ!」

 そりゃ百億ダメージだもんね。百億だもんね。いくら無限大マークだからって、HP百億もないよね!

「かーくん。早すぎますよ!」
「急いで。急いで。みんな、回収ー!」
「わのバッグ、ミャーコみたいに自分で吸わんよ?」
「じゃあ、手で入れてよー!」

 僕らはアタフタしながら、けんめいに灰を集める。それにしても、雲つく巨人の全身の灰だ。スゴイ量がある。これじゃ、全部、ひろえない!

「私も吸います!」

 ふえ子のお母さんが猫車から出てきて息を吸いこむ。ザアーッと掃除機のように灰が吸いこまれていく。さすが、速い。
 でも、コビット王の剣の効果で体が小さくなってるから、吸いきれない。

 まだ半分以上の山がそこにある。
 ああっ、こんなことなら三村くんとトーマスを行かせるんじゃなかった。一人でも人数多いほうがよかったのに。

 てかさ。みんなのバッグが僕のみたいに自動で吸ってくれれば……ワレスさんだけは風の魔法で巻きあげて吸引してる。

 それでも、量が多すぎた。
 やっぱり、まにあわなかった。

 五分後。灰のまんなかから、ぽつりと茶色いものが浮かんでくる。さっきよりヒョロ長いけど、ゴドバだ。肉がだいぶ、そげおちてる。

「かーくん。アイツの数値、さっきよりあがってる。けど、外見はえらく貧相になったな」
「だよね」

 よく考えたら、まだ蘭さんが勇者の奇跡を起こしてない。だから復活してしまったんだ。

「ロラン! なんとかアイツを止められないの?」
「ムチャ言わないでくださいよ。どうしたらいいんだか」

 うろたえる僕らの前で、ボォーンッとゴドバがうなる。

「あッ! また進化を使った!」

 進化を使う前、アイツは必ず変な声で叫ぶ。しかも、進化は僕の『つまみ食い』や『小説を書く』みたいに、行動順に左右されず、いつでも使える技のようだ。

 次の瞬間、僕らのターンはのっとられた。

 ゴドバの巨大な腕が僕の前に迫る。や、やられる!——と思ったそのとき、よこから猛がとびだしてきた。

「反射カウンター!」
「助かった! 兄ちゃん!」
「ははは」

 でも、安心できない。
 ゴドバは一回しか動けないはずなのに、なぜか、何度も連続でこっちを狙ってくる。魔法、物理攻撃と続けざまに来る技を、猛が反射した。

「変だ。ゴドバ、そんなに連続攻撃できるほど、素早くないはずだよ。ぽよちゃん、聞き耳してくれる?」
「キュイ!」

 僕は急いでヤツのステータスを確認した。

 のっとる・魔改
 敵のターンに入ったとき、自動で行動権利をのっとる。先制攻撃にもしのぐ。これを使ったとき、敵の『のっとる』は効果を失う。

 な、なんて技だ。
 これ、永遠に自分だけが行動できる技じゃないか。
 いいよ。小説、書いてやるよ。


 *

 のっとる・魔改
 敵のターンに入ったとき、まれに自動で行動権利をのっとる。成功率は1%


 *

 どうだ! これで、のっとりかえせるぞ。1%なら、そこはかとなく成功率低いしね。

「猛! お願い!」
「のっとる!」
「サンキュー!」
「ははは」

 動けるようになった瞬間、となりのパーティーで、蘭さんが動いた。

「先制攻撃!」

 そうか。まだ先制攻撃が残ってたか。十万攻撃が、ゴドバにどれくらい効くんだろう?

 スパン!
 ムチが鳴ったあと、蘭さんが「あッ」と声をあげる。
「力が……吸いとられた」
「そうなんだよ。ロラン、直接攻撃すると吸血されるから気をつけて!」
「キモイ……」

 蘭さん、ぼうぜんとつっ立ってる。

 ほんと、めんどくさい技ばっかり持ってるよね。ゴドバ、キモイ!
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