第263話 ノームたちは助けたけど

文字数 1,774文字



 僕らの隊の目的はノームたちを助けることだった。
 なんとか、これは達成できた。すぐに見つかるなんて運がよかったな。

「どうする? 上の道へ行った蘭さんたちを手助けする?」
「いや、ノームたちは弱ってる。早く村へ帰して休ませてやらないと。それに腹もへってるんだと思うぞ」
「そうだね。あっ、オーク城で買った焼きもろこしがある。それと、前にキヨミンさんからもらった、食べてもなくならないクッキー」

 前に船で漂流したときのサザエのツボ焼きやお魚さんたちは食いつくしてしまった。こんなことなら、もっと焼きもろこし買っとけばよかったな。

「これ、みんなでわけて食べてください」
「かたじけないだば。ありがたいだば」
「村まで送りますからね」
「感謝するだばー」

 坑道から出るのはさほど時間がかからない。でも、ノームの村まで帰るとなると、往復で最低でも二時間かかるなぁ。蘭さんたちが心配だ。ふえ子のお母さん、ちゃんと見つかっただろうか?

 猫車でノーム村まで帰るあいだ、僕は手紙を書いて、預かりボックスに入れた。
 ワレスさんたちにはスズランの預かりボックスを貸してるんだけど、そっちからはすぐに返事があった。城に侵入したものの、まだゴドバの居場所はわからないらしい。
 でも、蘭さんからの返事がない。手紙に気づいてないのかな?

 いろいろ気になりつつ、ここまでの内容を小説に記しておく。またすぐに『小説を書く』の技が必要になるかもしれないからね。

 村につくと、猛が言った。

「ノームたちだけを村に残しておくのは心配だな。もしかしたら、ガーゴイルが村まで囚人をとりもどしに来るかもしれない」
「そうだね。ノーム村の正確な位置はヤツら、わかってないみたいだけど。万一、見つかったら大変だ。女の人や子どもたちまで危険にさらされる」
「誰かが村に護衛として残ってたほうがいいよ」
「そうだね」

 すると、トーマスが言った。
「私が残ります。さっきまでのレベル下げで、かなりステータスもあがりました。それに、かーくんさんのパーティーには私がいなくても問題がないので、ノームたちを守るほうが役に立つでしょう」
「おれも残る」と、ナッツも言う。

 アジは迷ってるみたいだった。シャケを探しに来たんだもんね。シャケはゴドバの城にいる可能性が高い。やっと再会できるかもしれないんだ。でも、ノーム村のことも気になるんだろう。というより、ナッツのことが?

「戦力的にもうちょっと、いたほうがいいな。もしも大軍が来たら、トーマス一人じゃ村を守りきれない」
「じゃあ、猫たちと——」
「おれも残るよ」と、アジが言った。

「いいの? アジはシャケを探しに来たんだよね? 妹さんも捕まってる」
「かーくんたちなら必ず見つけて、つれ帰ってきてくれるよね?」
「うん。約束する」
「それなら、おれは村に残る。四天王との戦いに、おれじゃ、さほど力になれないしさ」

 それでも、トーマス、アジ、トイとラブ、タイガ、シア。タイガとシアは気まぐれでアクビや毛づくろいの出る率がまだちょっと高めだから、戦力として万全かと言われれば、そうではない。

 ああ、ランスが残ってくれてれば安心だったんだけどなぁ。やっぱり、強力な全体攻撃魔法が使えるのは強みだ。

「かーくん。こっちはさ、おれ、かーくん、ミニコがいれば充分だ。ぽよちゃんと、たまりんを村に残そう」
「ええー!」

 ぽよちゃん。まだ仲間になってから一回も離ればなれになったことないのに。

「キュイ……」
「ぽよちゃん」

 戦地にわが子を置き去りにする気分。
 でも、今のぽよちゃんは強い。力はふりきってるし、知力だって、七万超え。
 それによく考えたら、アタッカーのぽよちゃん、回復と補助のたまりん、壁役のトーマス、戦略はアジ。バランスのいいパーティーじゃないか。

「ぽよちゃん。僕らが帰ってくるまで、村を守ってくれる?」
「キュイ!」

 ぽよちゃんの目は「ぼく、やるよ!」と言ってる。

「じゃあ、たのんだよ。ぽよちゃん」
「キュイ!」
「たまりん、アジも戦況をよく見て、みんなをサポートしてね」
「ゆらり」
「わかったよ。おれ、やるよ」

 まあ、必ずしも村が襲われるわけじゃない。もしものときのための用心だ。僕らのほうこそ少なくなった戦力で、やられてしまわないように気をつけないとね。

 僕らはぽよちゃんたちと別れて、ノーム村を出立した。
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