第294話 豪のゴドバ戦(進化)2
文字数 1,352文字
ぽよちゃんはさらに器用さ、幸運の数値も吸えるだけ吸った。それでもあまった回数は、みんなにスピードファイターをかけることで使う。
「もしかして、HP吸えるのかな? ぽよちゃんなら十分の一だから、吸っても問題ないよね?」
「そうだな」
「ぽよちゃん。HP吸血してみて」
「キュウキュイー!」
ダメだった。吸血はできたんだけど、ぽよちゃんの数値が99999になっただけで、ゴドバの無限大はあいかわらずゴールドだ。
いったい、どんくらいHPあるんだろう?
「僕の断捨離で百億素手パンチしたら、たぶん倒せるよね?」
「たぶんな。でも、また復活する」
「そこがやっかいなんだよなぁ」
というわけで、この回、僕らができるのは、三村くんの分身作り。これはモリーの変身に近い技だ。人形師っていう三村くんの生来特技で、パーティーメンバーの分身人形を作ることができる。数値や特技はマネできるけど、装備品はコピーできない。
「分身! ほれ、どないや」
「……猛に見えない。ただのパペット」
「ええやんか! 能力は同じやで?」
「期待してたのと違うー」
つるっとした木の人形だ。まあ、反射カウンターやってくれるならいいけどさ。モリーはちゃんと変身するのに。輪郭だけだけど。
「じゃあ、猛。僕はつまみ食いするよ? 力と知力の残り、とれるだけとっとく」
と言った瞬間だ。
急に僕の体は金縛りにかかった。動けない。この感じは、のっとられたー!
「猛! のっとられた! お願い」
ふりかえった僕はおどろいた。猛が地面に倒れてる。
「に、兄ちゃんッ?」
「…………」
返事がない!
「兄ちゃーん! どうしたの? 大丈夫?」
返事がなーい!
アタフタしてるうちに、ゴドバの攻撃が来た。大きな腕が両側から遊園地のバイキングみたいにスイングしながら襲ってくる。
「た、猛! 起きて! 猛ー!」
直撃したら、猛でもただじゃすまない。いくら僕の唐揚げを奪っていく兄ちゃんでも、ミンチになっちゃうのは、弟として泣ける。
「やめろーッ!」
両手をひろげて、僕は猛の前に立ちはだかる。手のひらだけで僕の身長より大きい。それがハヤブサのような勢いで目の前に迫る。
やられる!
あと一瞬で、僕と猛はあの手に吹きとばされて——
ガッチン!
固い音がして、手のひらは僕らの目前で何かにさえぎられた。
そうだった。白虎の守護だ!
白虎さま、ほんとにありがとう!
ゴドバの素早さは、ぽよちゃんが全部、吸いとってる。ゴドバは一回しか動けない。のっとるもさっき使ったから、3ターンは反撃されないぞ。
「猛! 兄ちゃん、どうしたのッ?」
かけよると、猛は気絶してる。よくわからないけど、悪い病気にでもかかったみたいに細かくふるえて、あぶら汗かいてる。
変だな。倒れる前、ゴドバになんかされたっけ?
のっとられる前に? いや、のっとった直後、目には見えなかったけど、攻撃されたんだろうか? 吸血か? あっ、まさか吸血でHPとられちゃった?
猛のステータスを見なおす。でも、HPはちゃんと前のままだった。
あっ、そうだ。ステータス異常を確認できるかも。
画面をすみずみまで見た。けど、変だ。とくに異常はない。戦闘不能だと、名前が赤くなるんだけどな。それもない。
いったい、猛の身に何が起こってるんだ?
兄ちゃーん!