第224話 とりあえず、冒険再開

文字数 1,889文字



 ボイクド国の宿舎に帰ってきた僕らは、夢の巫女について、ワレスさんに報告した。最近、なんやかんやで、よくいっしょに夕食を食べるんだよな。嬉しいかぎりです、はい。へへ。

「四つの扉の一つはボイクド城にもある。いつかは必ず行かなければいけないだろう。でも、まだその謎がなんなのか解けていない。それまでには巫女も探しておかなければならないが、急ぐ必要はないな。ただし、魔王軍も狙っているとなれば、保護は必要だ」
「ですよね」
「美形好きの変な女か。おれはアイツしか思い浮かばない。いつも、おれの部屋に入りびたって、わけのわからん寝言をほぞいて行くんだぞ?」
「ははは。キヨミンさんですね」
「もしかして、だから自分の部屋から逃げてるんですか?」
「それもある」

 ははは……美形は大変だ。
 僕らの宿舎が知れ渡ったら、こっちにも押しかけてくるよね? 猛や蘭さんがいるんだもんね。

「あっ、そうだ。このツボ、ワレスさんからクルウさんに渡してくれませんか? 前に魔法の才能がなくて魔法使いになれないって聞いたんですよね。魔法使いと僧侶のツボ。なんなら遊び人とか踊り子とか、基本職のツボなら、今、売るほど持ってるので」
「基本職か。それは助かるな。資質の有無によって、どうしてもなれないものが、誰しもたいてい一つ二つあるからな。基礎職にさえつければ、上級職の幅が広がる」
「じゃあ、宿舎も用意してもらってお世話になってるので、各職三十ずつ渡しておきます。兵隊さんたちで使ってください」
「ありがたい」

 美しいブロンドの彫像のような人が、三百個ものツボをかるく持ちあげて、次々、銀の懐中時計になげこんでいく。
 ワレスさんの四次元バッグはあの時計だ。バッグの形って、人によってずいぶん違う。心の形を表してるのかもしれない。

 ん? それでいくと、僕の心はミャーコ? 猫のように自由気まま? まあ、おおらかだとは思う。

 ワレスさんはその時計で時間を確認してから帰っていった。まだゴドバの居城については何もわからないらしい。

「僕らもみんな、なれない職業あるよね。ツボわけよう」
「僕は商人になれません。なぜでしょう? 計算は得意なのに」

 それは……愛想の問題だと思う。おべっか使えないよね? 蘭さん。

「わも商人はなれん。遊び人にもなれん」
「おれ、戦士と武闘家」と、アジ。
「あ、おれも戦士、武闘家、盗賊もなれないな」

 って、ラフランスさん、いたんだ? 部屋のすみでネコりん、モフってる。めちゃめちゃネコになつかれてるんだけど。

「うちに帰ったんだと思ってた。いいですよ。ツボあげます。トーマスは?」
「うん。私は商人、遊び人、魔法使いになれない」
「じゃあ、三つ」

 けっこう多いな。やっぱり、こうして見ると、体育会系の人は文系の職業につけないし、文系の人は体育会系につけない。両方なれるのはめずらしいんだ。

「僕も踊り子なれなかったし、兄ちゃんも商人になれなかったもんね」
「たいてい向き不向きの職業ってあるだろ」

 僕らはツボが手に入ったからいいけど、そうじゃなければ、転職してもどこかで頭打ちになる人って多いんだろうな。天然で最上位職までつける人って、それだけで選ばれし者なんだ。

 ギルドに行って、それぞれ転職。僕とぽよちゃんは王墓前で一回転職してるんで、またマスターしてない。

 蘭さんが聖騎士をマスターしたから、ついに最上位職の勇神だ。勇者、聖騎士、大僧侶マスターでなれる。
 僕も聖騎士、大僧侶さえマスターしたら条件満たすな。

 モンスターたちはそれぞれツボを使って、まずは基本職から。

 バランは基本職はたくさん覚えてるから、聖騎士。バランはワレスさんと同じ剣聖をめざしてるようだ。

 アジは戦士。トーマスは賢者になるために魔法使い。

 ラフランスさんも戦士。とりあえず、弓使いをマスターしてもらおう。詩聖でも後衛援護はできるけど、弓使いならうしろから攻撃もできるし、彼の強力な魔法がいきる。

 アンドーくんは大賢者。みんなが基本職だとパーティーのステータスがさがってしまうからだ。

 たまりんは武闘家になれないみたいだから、なりたいのかなと思ったけど、とくに就労したくはないらしい。ツボだけ渡しておいた。かわりにツボを使って小鳥師だ。

 猛はね。格闘王をマスターしたんで、魔神っていうのになるために死神騎士。

「明日は名人墓場の最強魂に挑むんだよね?」
「基本職のメンバーが多いから、ちょっと特訓してからのほうがよくないか? 挑むときは、全員、もうマスターしてるなかで一番強いやつになったほうがいいよ」
「そっか」

 というわけで、明日からまた特訓だ!
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