第163話 勝てるか? 準決勝
文字数 1,627文字
聖なる結界で二倍に高められた光属性魔法。しかも事前に『もっと賢くなれ』で知力をあげられてる。
会場のどまんなかに、ものすごい巨大な光球が浮かびあがった。トラックほど大きくはないけど、確実にワゴン車くらいはある。
ラフランスさんが杖をふりおろす。光球がこっちへ——こっち……わあっ! 僕を狙ってるんじゃない?
魔法は……魔法は効いちゃうんだよー!
ギャー! アレ落とされたら倒れるよね? 四、五千ダメージは行く。絶対……。
えーと。かーくんの今のHPはね。マスターボーナスや山びこの補正ボーナスやアレコレ足して、6726。
もつ? もつかな?
ダメージが六千以下なら、ギリでもつ!
光球が僕の目の前に。
もう目あけてらんない。だけど、目を閉じても明るい。すごい光だ。
ドーンと世界がゆらいだ。
「ウギャーッ! やられたー!」
「かーくん! 大丈夫か?」
ふうっ。ピリピリする。
目の前がチカチカ。
痛かった。めっちゃ痛かった。
でも、なんとか意識がある!
「うわー。HP5500も減ってるゥー!」
「よかったなぁ。山びこになってて」
「ほんとだねぇ」
山びこの就労中の補正ボーナスはHPプラス20%だ。マスターボーナスでプラス10%もあったし。それがなければ一撃死だった。
ラフランスさんは僕を見つめたあと、深呼吸する。
ヤバイ! もう一回、来る気だ。
「ライティングアロー!」
さっきのよりは軽い感じ。
それでも『燃えつきろ〜』ていどの強さはありそう。大きな光の矢が僕を襲う。
ああっ、HP残り1200しかないんだけど。今度こそ、沈むね。
「ごめん。たまりん、あとで復活させてー」
僕は諦観をもって光の矢を受けとめた。いや、受けとめるつもりだったんだけど、僕の目の前で、それは消えた。
あっ、そうだった。神獣の気が守ってくれてるんだ。魔法、魔法の二撃めはバリアが防いでくれるんだ。
ラフランスさんは首をかしげながら帰っていった。そのあと、仲間内で何やら話しこんでる。
「マズイよ。兄ちゃん、気づかれたかも」
「かもな。でも、こっちの番だ」
そうだ。よーし。反撃だ!
「じゃあ、ぽよちゃん。聞き耳してくれる? それが終わったら、アジは僕のHP回復してね」
「キュイ!」
「オッケー」
聞き耳によれば、彼らのレベルは平均50。だいたい僕らと同じくらいだ。
「猛。ビーツさんのHP3000弱だ」
「ああ。体力が1000超えだけど、まあ、おれならワンパンでやれる」
「素早さだって、やっぱりこっちのほうが高いけどなぁ。一番速い弓使いのアップルさんでも450だ。もしかしたら流星の腕輪で二倍になってるとしても900。ぜんぜん、猛にはおよばないんだけどなぁ」
「さっき、副将が最初に『先陣を切る』って特技使ったろ? あれが先制攻撃の上、パーティーの行動数それぞれプラス1だったみたいだぞ」
「いい技だね」
「いい技だな。でも、おれたちの『つまみ食い』ほどじゃない」
なんなら、僕の『小説を書く』ほどじゃない。今は封じられてるけどねぇ……。
たしかにラフランスさんの魔法は強力だけど、知力は1200だ。うちのミニコは三万だからね。
「じゃあ、予定どおり、僧侶から倒していこうか」
「て言っても、リーダーが守るを使ってるだろ。リーダーが倒れるまでは、ほかのメンバーを攻撃できないよ」
「あっ、そうだった」
じゃあ、安心して。
僕が足をパタパタさせ始めると、猛がひきとめる。
「あ、待った。待った。今つっこんでくと、弓使いの技が発動するんだろ」
「そうだった」
「まず、アジ。かーくんのHPを治してやってくれ」
「うん。行くよー。元気いっぱいー!」
元気いっぱいは大僧侶と賢者の両方でおぼえる。単体のHPを最大まで治してくれる嬉しい魔法だ。これが使えるだけで、戦闘での出番は違ってくるね。今のアジなら、充分、役に立つぞ。
ところが、その瞬間だ。
なぜか、僕は口走っていた。
「元気いっぱいー!」
へっ? 僕、何やってんの?