第51話 三村くん(起動中ギガゴーレム)戦4
文字数 1,298文字
力50000、体力5。
また、ここに返ってきたのか。蘭さん。
やっぱり人間って欲ばりすぎるのはダメなんだと思う。
「どうしよう。僕はもう動けないよ。行動前なら命令で、ミニコにロランを守らせることもできたけど」
「ギガゴーレムの力は500ですよね。シルバンの防御力で僕を守ると、シルバンが倒れるかも」
ふうっと、ワレスさんが嘆息する。
「前もってわかっていれば、おれが鉄壁を使ったのに」
「鉄壁ですか」
「自分の防御力をあげつつ、パーティー全体が受けるダメージを一身に受ける技だ。一度使えば、戦闘が終了するか、自身が倒れるまで効果は続く」
むうっ。バランやシルバンのステータスがもっと高くなれば、ぜひ覚えさせたい技。
「ちなみに何で覚えるんです?」
「重騎士だ」
重騎士かぁ。たしか、前にクルウがそれだった。てことは上位職だよね。さきは長い。
とにかく、今このターン内にギガゴーレムの残りHPをゼロにする方法は、僕らにはもうない。
クマりんがテディーキングを呼んだとしても、ほんの20ダメージかそこらだ。ほかのメンバーではもっと低い。
「次のターン、ギガゴーレムが攻撃してこなければ……」
僕は希望的観測を述べてみた。
最初のターン、ギガゴーレムは起動した。次も起動中なら攻撃してくるとはかぎらない。それなら、こっちは3ターンめでゴーレムを倒せる。
だが、ワレスさんが首をふった。
「見ろ。目の色が点滅しなくなった。おそらく、やつの次の行動時に完全に起動する」
早い! そんなに早く起動するなんて、どんだけ高性能なCPU使ってるんだ!
昔のこの手のゲームだったら、たいてい起動までに3ターンはかかるよね? 長ければ5ターン。
「そうだ! ワレスさん、時間軸を使って、一回だけ、戦闘開始直後に戻れる特技がありましたよね?」
「おれの行動順が終わってるのに、どうしろと?」
「ああ……」
もうダメだ。終わった。
いや、ワレスさんが仲間になってくれててよかったのか。
じゃないと、僕らだけなら次のターンで蘭さんが倒れる。パーティーのなかで、ゆいいつギガゴーレムにまともなダメージをあたえられるのは、蘭さんだけ。
全滅するしかないパターンだ。
でも残りゴーレムのHPが4370ていどだから、次のターンで、がんばろ〜効果のかかったワレスさんが倒してくれる。
やっぱり、まだ僕らじゃ、ワレスさんには勝てないんだな。強敵を相手にして、それを痛感した。
すると、そのときだ。
トコトコと、ミニコがかけていく。両腕を前に伸ばすあのポーズは、プログラムFだ。
まだミニコの行動順、残ってたのか。そうか。僕に付属で動いてるときは、ミニコの順番じゃないのか!
「ミ〜」
ポンっとお花ひらいて、ミニコの目がチカチカ。
も、もしかして、これでギガゴーレムは攻撃してこないんじゃ?
かすかな期待を持った瞬間、ギガゴーレムの目が点滅した。
「やっ……た? プログラムF、きいた?」
いや、違う。
ギガゴーレムは妙にキレイな女性の声で告げた。
「ギガゴーレム(プロトタイプ001)起動しました。これより、敵せんめつモードに入ります」
ああッ! きかなかったー!