第307話 ふたたび廃墟城へ
文字数 1,440文字
「ロラン! シャケ! みんな大変だよ。ゴドバが生きてるみたい!」
「えッ? どういうことですか?」
「あいつ、まだ生きとるんか?」
みんなを呼び集めて、僕らは話しあった。
「ワレスさんや猛がいなくなってしまったけど、ゴドバが生きてるんなら倒さないと。アジによると、コビットサイズになってたみたいなんだ」
「それ、どこへ行ったんですか?」
アジは周囲を見まわして、しばらく考えた。
「方角から言って、あっちかな」
アジが指さしたのは、廃墟の古城のほうだ。
「行ってみよう。ロラン」
「そうですね。今この島にいる僕らがなんとかしないと」
ゴドバは復活の力を失ってる。サイズから言っても、もう前ほど強くはないはずだ。やっかいな進化の特技も、蘭さんがいれば封じることができる。
「クピっ? コピピク?」
「村長さん。僕らは廃墟の古城へ行きます。この地震の原因をつきとめてきますから」
ナッツとお母さん、それにアジと妹のアユちゃんは、ノーム村に残ることになった。
僕らは急いで廃墟へむかう。
廃墟へ通じる地下水路の入口は、ワレスさんたちが扉を爆破してくれたから、自由に通れるようになっていた。
「地下水路、まだモンスターが出るのかな?」
「魔王軍の残党ですね。いずれはいなくなるのかもしれませんが、まだダンジョンみたいですよ」
ダンジョンか。注意して進まないとな。ここにはあのセンシティブなヘドロくんたちが出てくるし。
カンテラを出して、水路を進む。ときどき、ドシン、ドシンと地震がする。
昨日はさ。ゴドバが箱のなかであばれてたからだった。でも、今日のこれはなんか違う。もっと地下のほうから響いてくる。
「地下からだよね」
「ですね」
「ロランの危険察知でわかる?」
蘭さんは美しいおもてをくもらせた。
「……じつは昨日から感じてたんですが、ノームたちの鉱脈のどこかから、イヤな気配がするんですよね。ただ、それは生きた魔物ではないみたいなんです。ボスって感じではないので、封じられてるのかなって」
封じられた何か……?
んん、そこはかとなく不吉なワード。そして、こう僕の記憶をグリグリするものがある。
「ノームたちの鉱脈……地下……封じられた何か……」
「かーくん。心あたりでも?」
「う? うん。まあ」
そう言えば、ノームたちを助けたとき、なんかあったような……。
僕らは震源地をめざして歩いていく。
途中からノームの鉱脈に入った。
「今日はぬしに見つからないように進みましょう」
「そうだね。ゴドバの気配は感じないの?」
「ゴドバほどの気配を感じないはずはないんですが、さっぱりです。やはりもう、前ほどの強さはないのかもしれません」
地下へ、地下へ。
この前と違って、ノームの鉱脈にモンスターは出てこない。ノームたちもまだ採掘には来ていない。無人だ。
ところどころ、キラキラ光る坑道が、ときおり不気味にズシンとゆれる。ズズズ、ズズズと定期的に鳴動があった。
この前のときはノームたちを助けるために必死だったから、あんまり感じなかったけど、ここってこんなに暗かったかなぁ? 暗いだけじゃなく、ふんいきが怖い。名人墓場のときみたいだなぁ。
地獄の底へむかっていくような気分。
ズズズ……ズズ……。
地鳴りがだんだん激しくなつていく。
僕はもう、このさきに待っているものがなんなのかわかっていた。まちがいなく、あの場所へむかっている。
まもなく、その場所にたどりついた。そう。ノームたちが捕まって、強制的に働かされてた、あの場所……。