第56話 今の僕らにゴドバを倒せるのか?
文字数 1,301文字
謎の大男は豪のゴドバだった。
これは衝撃だ。
僕らはそいつのいる場所へおもむいているわけだけど、はたして、今の実力で勝てるのか?
かなり厳しい……というか、たぶん、ムリ。
「うーん。ゴドバは謎の大陸で、人間を魔物に変える工場を造った張本人だよね。いつかは必ず倒さないといけない相手なんだけど」
「僕の体力が五万なら……」
そこだよね。勇者の体力が5しかない今このときに、四天王と激突するのは、そうとうにデンジャラス。
「ヤドリギだって、僕らの力だけじゃ倒せなかったよね。あのときはワレスさんたちの隊がいたし、それに……」
猛がいてくれたからなぁ。
兄ちゃん。おーい。助けに来てよぉー。
でも、行かないわけにはいかないんだ。
今回もワレスさんの隊はいてくれる。なんとか倒せるかも? 倒せないまでも、せめてギガゴーレムだけは奪還して停止させないと。
街のなかは魔物だらけだ。ちょっと走ると、すぐエンカウントする。でも、建物のなかまでは出現しないようだ。窓のなかから心配そうに外を見てる人たちの姿を見かける。
「ギガゴーレムは貴族区にいるみたいですね。街の北側はたしか、貴族たちの居住区域でしょ?」と、蘭さん。
「貴族区かぁ。カロリーネさんやお菓子怪獣くんたちは大丈夫かなぁ?」
エレキテルに来るとき、汽車のなかでいっしょになった人たちだ。お菓子はぶんどられたけど、可愛い子どもたちだった。無事でいてくれたらいいんだけど。
ギルドのまわりは冒険者たちが守ってる。竜兵士やガーゴイル相手なら、彼らでも充分みたいだ。
僕らはひたすら北をめざす。
エレキテルの街には王城はない。でも、街のまんなかを流れる運河を境にして、北側が貴族区、南側が一般市民の居住区になっていた。貴族区のまわりには高い石塀が築かれている。
「おや、見張りがおらんようだね」
穂村先生が運河にかかった橋をさし示す。
「見張り、いるんですか?」
「ふだんはいるよ。ギガゴーレムを見て逃げだしたのかもしれんな。または魔物にやられたか」
縁起でもないこと言わないでください。
僕らは誰もいなくなった橋を馬車で渡る。パカラ、パカラ、パカラ。
石塀をこえたとたんだ。
あちこちから悲鳴が響いた。
「なんだろう? 何が起こってるんだ?」
あわてて、あたりを見まわす。あちこちの豪邸で、ミニゴーレムがあばれていた。
「あれは量産型だな。ミニゴーレムたちが暴走している」と、先生。
そういえば、貴族のあいだでミニゴーレムをボディーガードにするのが流行してるって、前に言ってたっけ。もしかして、それらのミニゴーレムが全部あばれてるのか?
「どうしよう。僕らなら量産型のミニゴーレムなんて、さほどの敵じゃないけど、ふつうの人たちにとっては命の危険があるよね」
「助けましょう!」
ロランは言うんだけど、ギガゴーレムも止めなくちゃいけないし。困ったなぁ。
「とにかく、通りすがりに片っ端から倒していきましょう!」
まあ、そうなるよね。
一般人をほっとくわけにはいかない。
ただね。遠目から見たとき、ギガゴーレムのまわりにワレスさんがいないんだよな。いったい、あっちはどうなってるんだろう?