第27話 研究所のなかは……

文字数 1,470文字



 王立研究所。
 鉄の門のなかへ入ると、前庭からして、ドヨンと空気がよどんでる。
 いったい、何があったんだろう? 施設がとつぜんダンジョンになってしまうなんて?

 これまでの経験で言えば、悪のヤドリギに建物の所有者や村の誰かが乗り移られてしまったときに、その居住地がダンジョンになった。

 でも、ヤドリギは倒したし、もう誰かの体に憑依(ひょうい)してあやつるなんてことはできない。

 だとしたら、魔王軍の別の四天王が建物を占拠した……とか?

 イヤな感じだなぁ。
 もしそうなら、今の紙になってしまった蘭さんじゃ苦戦するかも。最後にボスがいることは、すでにわかってるし……。

 とにかく、ビビってたって、しょうがないしね。
 僕らは敷地のなかを進んでいく。

 鉄筋コンクリート三階建ての研究所が目の前にそびえている。ほかの都市のなんちゃって中世風と、えらい違いだ。もう完全に現代の建築物なんだけど。

 ありがたいことに、建物のなかへも馬車で入っていけた。
 白い壁に白い床。
 電灯がついてる。
 玄関ホールは病院の受付に似てる。でも、無人だ。人間の姿がない。

「じっくり、すみずみまで調べる? それとも、ロランがアレだから、なるべく最短で行けるコースにしてみる?」
「うう……」

 あっ、ごめん。傷ついたかな。蘭さん。

「そ、そげだね。早めに攻略したほうがいいだないの?」と、アンドーくんが同意してくれた。

「3☆4…¥8(^59.259♪2〜7*(°$(1$・(°」
「へッ?」

 今のはなんだ?
 蘭さんが宇宙語を……。

「あっ、ごめんなさい。ショックのあまり……」
「ほんと、ごめんよぉー!」
「最短コースなら、この廊下をまっすぐ奥ですって言ったんです」
「あっ、そうなんだ」
「なんだか、そこから強い気配がする。ボスじゃないかと思う」

 僕らは玄関ホールから奥へ続く廊下を歩いていった。
 だけど、ほんの数メートル進んだだけで断念する。というのも、そこに頑丈な防火シャッターがおりてて、とてもじゃないけど突破することができそうになかったからだ。

「これは順路が違うんだな。やっぱり、近道はできないんだよ」

 まわりまわって、最後にシャッターの向こうにたどりつけるようになっているんだろうな。ダンジョンではよくある構造だ。

 僕らがひきかえそうとしたときだ。
 さっそく出た!


 チャララララララ。
 野生の鉄クズA、B、C、D、E、Fが現れた!


 うわーッ!
 なんだこの布陣?
 全滅確定パーティーじゃないか!
 鉄クズが全部、爆発したら、蘭さんだけじゃない。僕だって危ないよ。

 先制攻撃とられたら、もうおしまいだ。

 蘭さんがパニクってる。
「キャー! 出たー!」

 こんな蘭さん、初めて見るなぁ。まあ、気持ちはわかるけど。

 なんで自爆するやつばっか、こんなに大量に出てくるんだ……。

「大丈夫だよ? ロラン。僕が思いっきり素早さあげて、全部、倒すから」

 蘭さんは聞いてない。
 キャーキャー言いながら、ムチをふるった。
 あ、あれ? バランの薔薇は?

 スゴイぞ。かるくふっただけなのに、一瞬で鉄クズたちはボトボトと床に落ちる。ほんと、あっというまだ。


 野生の鉄クズA、B、C、D、E、Fは倒れた。300の経験値を得た。60円を手に入れた。
 野生の鉄クズたちは宝箱を落とした。繊細な歯車を六個手に入れた。


 あれ? 勝っちゃった?
 テロップはまだ続く。


 ロランの危険察知がランクアップした。先制攻撃(必ずロランが一番に行動する)が使えるようになった。


 おおっ、危険察知。
 なにげに便利な技だったけど、そんなことまでできるんだー。
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