第217話 暗殺者スリーピング戦4
文字数 1,481文字
「猛。どっちから行く?」
「おれは一回しか動けない。おまえがまず、ヤツの素早さを奪ってくれ」
「わかった」
じゃあ、やるぞ。
「つまみ食い!」
ストローを女吸血鬼の首につっこんで、チューチューするとこをイメージする。
吸血鬼だから、やっぱトマトジュース味かなぁ? 僕は今の減塩のやつより、子どものころに飲んだ塩からいトマトジュースが好きなんだよなぁ。
チューチュー、チューチューチュー……。
「ギャー! き、きさまァー! 何をするか!」
あっ、吸血鬼がしゃべった。
「トマトジュース。意外とイケる」
素早さ数値、約25000もあるからさ。一回吸っただけで、5000も吸収できてしまう。僕は風神のブーツの効果でマックス75000まで数値あがってたから、合計80000だ。これで四回動ける。つまり、あと三回。
でも、待てよ。
僕って特技も書きかえられるようになった。しかも消費電力は内容より、書きかえた文字数が関係してるっぽい。
「…………」
僕が見つめると、スリーピングはなんとなくギクッとした。
「まだ二万も素早さあるぅ。いいなぁ。僕、欲しいなぁ」
「な、何をする気か? やめろ。ふざけるな。人間ふぜいがァー!」
「うん。僕、全部もらう」
こうすればいいんだよな。
つまみ食い
ランク5
敵モンスターから任意の項目のステータスを最大値の5分の1吸いとる。吸いとった数値は戦闘終了後も減らない。一戦闘で何回でも使用可能。ボスにも有効。
って、これが原文なんだけどぉ。
つまみ食い
ランク5
敵モンスターから任意の項目のステータスを最大値の100%吸いとる。吸いとった数値は戦闘終了後も減らない。一戦闘で何回でも使用可能。ボスにも有効。
へへへ。へへへへへへ。へへへへへへへ……。
あっ、ヨダレがたれてしまう。ジュルっ。
ちなみに書きなおしたのは僕の項目なんだけど、確認してみたら、猛の特技画面でも内容が僕のといっしょになってた。同じ技には一回書きかえるだけで効果がおよぶんだ。
「えへへ。いっただきま〜す!」
ストローさして、トマトジュース。トマトジュース〜。
チューチュー。チューチューチュー……。
「ウギャー! や、やめろ……体が重くなる……わたしの、わたしのステータスが……皆から奪ったわたしのステータスがー!」
「ヤッター! 僕の素早さが二万五千もあがっちゃたー!」
これで相手は素早さゼロだ。こっちはほぼ無限に行動できる。
「じゃあ、次は器用さかな。いっただきま〜す」
「ギャアアアアー!」
「かーくん。ズルイぞ。兄ちゃんにも残しといてくれ」
「じゃあ、幸運とHPは兄ちゃんにあげるよ」
「待て待て。半分こにしよ? な? 項目は八つあるんだからさ。四個ずつだ」
「しょうがないなぁ。じゃあ、僕、力と体力もらおう。なんか僕、レベルアップしても力がほとんど伸びないんだよね」
「基本伸び率が低いんだよ」
はぁ。夢のよう。
力15012、体力10907、素早さ25344、器用さ20260。
いっきにあがったよ……。
「はい。いいよ。猛」
「じゃあ、兄ちゃんは幸運からだなぁ。幸運数値伸びにくいんだよなぁ」
猛は箸を持つ手つきで、エアパクパク。
「ん? 一回で全部食えたぞ?」
「あっ、さっき、僕が特技に手くわえたから」
「サンキュー。じゃあ、次は知力。MPもついでにもらっとくか。5000しかないけど」
「ギャーッ!」
さあ、いよいよHPってときだ。
「待て! その女はわしがやる!」
ギックーン。この声は?
僕は恐る恐るふりかえった。
イヤな予感的中だ。
ダルトさんとキルミンさんが馬を走らせて近づいてくる。