第272話 グレート研究所長戦2

文字数 1,475文字



 檄をとばすって、僕らのターンをのっとることができるのか?
 それともブタさんを怒らせすぎたせい? もう、めんどくさいブタさんだなぁ。

 バンシーはキレイな女の子の魔物だ。
 モンスターにしとくのはもったいないなぁ。でも、バンシーって死人を予知するから、嫌われ者の妖精なんだよな。ほわっと、ゆら髪の十歳くらいの美少女なんだけど。背中に白い翼があって、花冠をデッカくしたような仮面(?)で目元を隠してる。なので、見えてるのは、おもに口元だけ。
 これも人間なのかなぁ?

 ゴーレムは前にナッツのお母さんも変身してたやつだ。フルスイングアームアタックは両手をあわせてつきだしたまま、グルッと体を一回転させる豪快な技。一回転って、バク転のことじゃないよ? ウエストのところで関節が360度グルグル回転する。

 思ったとおり、ゴーレムは僕らの前にかけてきて、腕をつきだした。腕がグルンとまわされる。

「やられたー! やられ……痛くないな」
「かーくん。守護。守護。白虎の守護」
「そっか」

 じゃ、次はバンシーか?
 女の子は「キャー!」と叫んだ。

 な、何が起きるのかな?
 バンシーの特性を考えると、即死攻撃かな? 怖いよぉー。
 なんか死んだ人の魂をあの世につれてくとかも言われるんだっけ?

「…………」
「…………」
「…………」

「えっと、なんか起きた?」
「さあ?」
「なんもないで?」

 じゃ、いっか。
 モンスターたちの番は終わりだ。次はこっちね。

「ブタさんからやろうか?」
「ブタではなーい!」

「かーくん。あいつウザイから、刺激するな」
「ごめん。アレからやる?」
「そうだな」
「誰がやる?」
「兄ちゃんがまとめてやってやるよ」

 猛はギガファイアーブレスを吐いた。両側のゴーレムとバンシーは、あっけなく倒れる。ブタさんはHP一万以上あるから、いちおう残る。

 でも、その瞬間だ。
 パタンと、猛が倒れた。

「えっ? ちょっと? 兄ちゃん? どうしたの?」

 兄ちゃんが白目むいてる!
 もしかして戦闘不能?
 てか、なんか口から魂が出かかってるんだけどー!

「わあっ! 兄ちゃん、しっかりしてー! 死んだらヤダー!」

 僕が急いで蘇生魔法をかけると、猛はハッと意識をとりもどした。

「危なかった! つれてかれるとこだった!」
「だ、大丈夫? 猛」
「バンシーの技だよ。泣くっていうやつ。あれで自分に魔法をかけといて、戦闘不能になったら相手もいっしょにつれてくんだ。即死系のカウンター魔法みたいなもんかな」
「怖い特技だねぇ」

 なんとか助かった。
 んじゃ、あとは、ブタさんをやるだけだ。
 ——と思ったら、急に三村くんがさわぎだす。

「アユ! アユやないか! しっかりしぃや!」

 今度は何?
 三村くんは倒れたバンシーのもとへかけだしていく。バンシーの花冠の仮面が外れて落ちてる。下から女の子の顔がのぞいてた。

 えっ? アユ?
 それって、人質につれていかれた三村くんの妹だよね?

「まさか、その子が? アユちゃん?」
「せや。アユ! しっかりしぃや。目ェさませ!」

 なんてことだ。
 アユちゃんまでモンスターに変えられてたなんて!

「アユちゃん、大丈夫なの?」
「息しとらん!」
「早く蘇生魔法しないと!」

 けど、変だな。
 前は戦闘不能にしたら、すぐに人間に戻ったんだけど。
 見れば、ゴーレムのほうは人間の姿に変化してた。屈強な男だ。どっかの城の兵士だったんだろうな。

 猛が割りこんでくる。
「ちょっと待て。変だぞ。その子、まだ人間に戻ってない。ほんとに戦闘不能なのか?」

 そのときだ。
 バンシーは立ちあがった。
 ヒィー! ぞ、ゾンビー!
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