第177話 そして、いよいよ決勝戦!
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そんなあいだにも試合は始まる。
「では、三位決定戦、始めッ!」
おおっ、先制争い、どっちが制するのかな?
蘭さん? ウォーターメロンさん?
「先制攻撃!」
蘭さんだ!
そうか。蘭さんの先制攻撃は、特技『危険察知』のなかの技だもんね。この前、危険察知は試合中にランク4にアップした。ウォーターメロンさんの先陣を切るは、それよりランク低いんだ。
蘭さん、ラッキー。レベルだったら、バグのせいで28からあがらない蘭さんは勝てっこないもんね。
スパパンと華麗に、精霊王のムチが青空を切り裂く。
あのムチ、全体攻撃だからね。ちらばったパーティーメンバーを次々と襲う。
力5万プラス5万攻撃力、イコール、無敵だ。
一瞬だった。やっぱ強いなぁ。五万も力あると。武器との相性もよかった。
「……な、なんということでしょう! 圧倒的な強さ。トーマスパーティー、まばたきするあいだにビーツパーティーをやぶりました! 三位決定です。トーマスパーティーの勝利!」
あっ、デギルさん。目に見えてへこんでるな。
ワレスさん推薦のパーティーに、自分の部下たちが負けたのが悔しいのか?
「じゃあ、午後から僕らの試合だねぇ」
ゴライはゴドバなのかな?
だとしたら、ふつうの試合ですむわけがない。試合の途中で急に魔物に戻って襲ってくるかも……。
「僕らの試合では何か起こるかもね! 猛」
「そうだな。気をぬけないぞ」
僕らはいったん街に帰った。昼ご飯、食べなくちゃ。
「ねえ、猛。ゴライがゴドバなのかどうかは置いといて」
「うん」
「ゴライの特技って、反射カウンターだったよね」
「うん」
「物理攻撃は当然、まんま反射されるとして、魔法も返されるかな?」
「ふつう、カウンターは物理攻撃にしか効果ないけどな」
「だよねぇ」
じつは今日、僕の職業は勇者のままだ。山びことミニコのコラボ技はすごい便利なんだけど、ゴライの反射で魔法も返ってきたら、こっちが全滅してしまう危険性がある。
うなってるうちに、試合の時間だ。
「行かなくちゃ。とにかく、こっちのほうが素早さは高いはず。先制とれたら、まずゴライさん以外のメンバーを全滅させようよ」
「そうだな。あとは兄ちゃんが鉄壁でみんなを守るから、ダメージの少ない魔法や特技を使って、反射されない攻撃を探そう」
それしか方法はないよね。
運よく、すぐに有効な技が見つかるといいな。
一時になる前に僕らは会場へむかった。とくに誰かに襲撃されることもなく、スムーズに大会は進んでいく。
さすがに決勝戦。
観客席は満席。通路にまで人があふれてる。貴賓席の近くの優勝台の上に、ゴドバの片腕が載せられている。
あの腕は誰の手に渡るのか。
いや、僕、いらないけど。
あんなん貰うくらいなら、ワレスさんのサインのほうがいい。
「さあ、会場のみなさん。ついにこのときが来ました。本年の世界最強者を決定する、武闘大会最後の試合。決勝戦です!」
アナウンサー、盛りあげてくれるなぁ。
ワアッと歓声が会場を埋めつくして、しばらくほかの音が聞こえない。あまりの声の大きさにおどろいて、周辺の鳥たちがいっせいに飛びたった。
「では、紹介しましょう。今年の決勝戦はこの両チームです。誰もがその強さを知る二年連続優勝者。ゴライをリーダーとするゴライパーティー!」
ワアワア。スゴイぞ。やれやれ。ゴライ、殿堂入り。期待してるぞ。ワアワアワア——って感じの声がとびかう。
「続きましては、本年初挑戦ながら、予選からここまで勝ちぬいてきた、かーくんパーティー! かーくんパーティーはなんと、ここまで大将がまだ一度も戦っていません。その秘密のベールが、今こそ解き放たれるのでしょうか?」
ゴライの反射カウンターしだいかなぁ。
僕らへの歓声もそれなりに多いんだよ? 猛は超イケメンだしね。女の子の黄色い声がゴライパーティーより遥かに多い。それはもう如実に表れてる。
よし。やるぞ。
勝っても負けても悔いなしだ。精いっぱい戦うもんね!