第52話 三村くん(起動中ギガゴーレム)戦5
文字数 1,592文字
「ギャー! やっぱりダメだったー! 襲ってくるぅー!」
「僕、死にますよね? 死ぬ……死ってこんな感覚なのか」
「ロラン。勝手にひたるな。ギガゴーレムはおれが倒してやるよ」
「それが一番、ムカつくんです!」
「ははは。やっぱり、おまえにドレスを着て舞踏会で踊ってもらおうか?」
「悔しいッ!」
もうね。阿鼻叫喚だよね。
どれが誰のセリフかは、なんとなく察してください。
「かーくん。とりあえず、まだ行動しちょらんモンスターは馬車に入れたらいいだない?」
アンドーくんが注意してくれたんで、僕はあわてて、ぽよちゃんたちに指示を出した。
「ぽよちゃん、バラン、馬車に入ってて。僕たちに何かあったら、次のターンに回復してほしいんだ」
「キュイ」
ぽよちゃんは心配そうな顔をしつつ、馬車にとびこんだ。
たぶん、ギガゴーレムの攻撃が来ても、HP1000超えの僕とワレスさんは残るだろう。でも、ぽよちゃんたちはやられてしまう。蘭さんはもう行動ずみで馬車には入れないし、せめて犠牲は最小限にしとかなくちゃ。
「ロラン。次のターンで、生き返らせてあげるから」
「よろしくお願いします……」
せめて単体攻撃で、僕かワレスさんが狙われたらなぁ。全体攻撃ではありませんように!
あとはもう祈るしかない。
——と、
「……私がロランに『ヘッチャラさ〜』をかけましょうか?」
ん? 誰?
「えっと、『かたくなれ〜』をかけても、ロランの体力5から6になるだけだから」
「かたくなれ〜ではありません。ヘッチャラさ〜です」
僕はキョロキョロと、その声の人物を探す。
あっ、足元にいた。黒ぽよに乗ったバランだ。キレイな薔薇の精。
「ヘッチャラさ?」
すると、ワレスさんがうなる。
「いい特技を持ってるな。それは一部の人やモンスターが生まれつきに覚える呪文だ。職業では習得できない」
ふむふむ。
僕はバランのステータス画面を見た。ヘッチャラさ〜か。たしかに前からそのマジック、書いてあったかも。
長押しして詳細を見ると——
ヘッチャラさ〜(*'▽'*)
味方一人が1ターンのあいだ無敵になる
「無敵? それって、ダメージを受けつけないってこと?」
「はい。石化と違い、持続時間は短いですが、ターン内なら行動しても効果は続きます」
石化は自分の体を石にして、敵のダメージを受けつけない技だけど、石になってるあいだ自分も動けない。ヘッチャラさなら動けてダメージ無効。まさに無敵!
「バラン!」
「はい」
「よろしくお願いします」
「了解しました」
バランのおかげで、蘭さんは無敵になった。
ニッコリ笑いながら「ヘッチャラさ〜」って言うバランは、少し恥ずかしそうだったけど。この世界の呪文って基本、はずかしめだからね……。
さあ、僕らのターンが終わった。
ギガゴーレムの目が赤く光る。破壊モードなんだ。
ヤダな。ロケットパンチか? あの巨大な腕が飛んでくるのか? しかも鋼鉄製。まさかと思うけど、ミニコと同じミスリル製? だから防御力10万?
そう思って、僕は身がまえた。衝撃にそなえて歯を食いしばる。ああ、そろそろ歯医者行かないと、虫歯のつめもの古くなってないかなぁ? あんまり食いしばると割れないか心配。
ところが、ギガゴーレムは思いもよらない行動に出た。まっすぐ前に伸ばしていた両手を頭上にふりあげ、ひざを折ってジャンプの姿勢——
「えっ? 何? ロケットパンツじゃないの?」
「かーくん。パンツじゃないですよ?」
「あっ、まちがえた。てへっ」
まったりな会話なんかしてる場合じゃないぞ。
どこからか、ガーハッハッと笑い声が響く。
あっ、ギガゴーレムのお腹だ。お腹あたりにコックピットがある。そこから、この前の謎の大男がのぞいていた。
い、いつのまに? 最初から乗ってたのかな?
「フハハハハー! ギガゴーレムよ、行け! 街を破壊するのだー!」
破壊って、そっちかーッ!