第44話 アジト到着〜

文字数 1,274文字



 ガラガラと馬車は進む。
 まだまだワレスさんと歓談中。
 えっ? さっさと行けって?
 まあまあ、馬車は向かってるから。

「職業って、どれににつけば、どの上位職につけるのかわからないから、ムダに習熟してる気がするんですよね。まあ、僕は大商人で総額なげをおぼえたし、あとはあせる必要ないかなって思うけど」

「それは違うな。おまえはつまみ食いで数値を増やせるにしても、ロランには早く勇神になってもらいたい」

勇神(ゆうじん)……ですか?」
「勇者の最上位職のことだ」
「へえ。そんなのあるんだ」
「勇者、聖騎士、大僧侶でなれる」

「聖騎士は以前、ワレスさんが就労してた職業ですよね」
「聖騎士には騎士、賢者だ。騎士には戦士または勇者と詩人」
「大僧侶は?」
「僧侶をきわめればなれる」

 ふうん。いろいろあるんだ。
 僕ら、ぜんぜん、わかってなかったな。

「おまえは商人職の高みをめざして、大富豪、商神になればいい。『小切手を切る』は傭兵呼びを自分の好きな金額で行使できる便利な技だ」

 ん? 自分の好きな金額で? そ、それは、欲しい。
 そしたら、いちいち大金を預かりボックスに預けたり、あわてて銀行に行ったりしなくてもすむ。

「大富豪にはどうやってなれば?」
「大商人、山賊、海賊だったかな。だが、その前にニート、大ニートをマスターしたら、ボーナススキルで職業の習熟がらくになるぞ」
「に、ニート?」

 ワレスさんの口からニートって言葉を聞くとはね。

「無職のまま二百回戦闘に勝利すればなれる」

 知らなかった。あとで、ちゃんと職業ツリー、見とかないとな。無職で二百回勝利なら、とっくに経験ずみだ。最初のころ、ずっと無職だったから。

「あとで、おれの知ってる職業ツリーをリストにして渡してやるよ」
「よろしくお願いします」

 職業習熟。
 基本だけど大事だからね。優先的におぼえないといけないものがある。
 そういえば、弓使いの後衛援護スキルを教えてくれたのも、ワレスさんだったなぁ。

 そんな話をしてるうちに、前方に山が見えてきた。そうだった。リベッカさんは山のふもとに洞くつがあるって言ってたな。
 まわりは森にかこまれて、たしかに隠れ家にはちょうどいい。

 森のなかへ入ったところで、見張りをしてたクルウの隊と遭遇(そうぐう)した。

「ワレス隊長。今のところ目立った動きはありません」と、クルウが報告すると、それを受けて、ワレスさんがアジトの入口をにらむ。

 山のふもとに、たしかにぽっかりといい感じの穴があいてる。見るからに、ダンジョン。

「出入口はここと、山の上部の二ヶ所だな。アリの巣のように、洞くつが山の内部に広がっている。なるほど。ギガゴーレムが安置されているな」

 そんなことまで見えるんだ!

 ワレスさんは命じた。
「クルウ。おまえの隊は帰れ。王城の守りが手薄になる」
「わかりました」

 クルウは下剋上の特技持ってるから、ワレスさんといっしょのパーティーで戦ってたら、たぶんすごいんだろうなぁ。一回、見てみたい。

 クルウ隊が帰っていったので、いよいよ、僕らはアジトに潜入だ。今度こそ、三村くんから事情を聞いて、説得しないとね!
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