第226話 名人行列!
文字数 1,755文字
扉の内は暗い一本道。
墓石は見あたらない。
だけど、青白い火の玉があっちにもこっちにも飛びかってる。その数、百かな? 二百かな?
「オバケがいっぱいいる……」
「おいおい。かーくん。オバケを狩りに来たんだろ? さ、行くぞ? なんなら、兄ちゃんがおんぶしてやろうか?」
「いらないよ!」
ドキドキしながら一歩足を出したとたんだ。
チャララララ……。
ああ、もう出たんだ。オバケ。
野生のレッドドラゴンが現れた!
えっ? いきなりレッドドラゴン? それ、ミルキー城の地下でめちゃくちゃ苦戦した強敵なんだけど。
「なんで、こんなとこにレッドドラゴンが……」
「奥にいる魂にひきよせられて、強い魂がウジャウジャいるってことなんじゃないか?」
「なるほど」
だから、火の玉街道と化してるわけね。
「レッドドラゴンは水属性が苦手だよ。前に遭遇したのとレベルが同じなら、HPは三万。だから、今の僕らなら、前よりラクに勝てると思う」
僕の小切手を切るでも、蘭さんの通常攻撃でも、猛のウォーターブレスでも、速攻倒せると思う。つまみ食いとか、小説を書くとか、ちょっとズルイ特技のせいの気もするけど。
「先制攻撃! 僕、やっちゃっていいですか?」
「うん。まあ」
すると、馬車から二人、とびだしてきた。
「待ったー! おれにやらせてくれないか? 知力一万を試してみたいんだ。強敵にどのくらい効くのか」
「ケロー! ケロケロー!」
ラフランスさんとケロちゃんだ。
「どうしますか? かーくん」
「いいんじゃないの? 前のメンバー、いっつも同じだし、たまには」
「じゃあ、補佐に僕とかーくんがついてれば安心かな」
「そうだね」
と思ったけど、補佐なら蘭さん一人で充分だ。ずっと前で戦わせてなかったけど、実力がどれほどのものか気になる子がいる。
「トイ、君に決めた! 前で戦ってみて」
僕はポケットなモンスターアニメみたいなセリフを吐いてみる。
「ニャっ?」
白ネコりんのトイが猫車からやってくる。
「ちょっと戦ってみてくれる?」
「ニャっ」
よし。じゃあ、後衛は僕、猛、ぽよちゃん、たまりんだ。
「ケロケロ〜」
あっ、ケロちゃんの自動石化攻撃。もちろん、効かない。でも、ケロちゃんはヘッチャラだ。
「ケロ〜ケロケロ!」
水の結界を使った。
からの、
「ケロッケロッ!」
封じ噛みだ。
封じ噛み三連発!
えっと、雄叫びと火の結界とファイアーブレスを封じた。残念。大技のギガファイアーブレスは残っちゃったか。
それにしてもよく動くなぁ。やっぱり全ステータスにプラス1000しといたのが功を奏したんだ。素早いとこんだけ動ける。
それにしても、そろそろちゃんとした攻撃に移らないと。ケロちゃんはたしか水鉄炮が使えたよね。
「ケロケロロ〜!」
あっ、あれ? あたり一帯に黒雲がわきあがり、とつぜんの突風。うわっ、雨が……ものすごい雨が降ってきたー!
「わあっ、豪雨だ! ゲリラ豪雨! 傘……傘……なんで洞くつのなかで雨が?」
「違うよ。かーくん。これ、魔法だ」
「魔法?」
「暴風雨って魔法あったじゃないか」
「あッ!」
おとつい、買ったばかりの魔法書!
「ええ? でも、高度な魔法はとっといたはずなんだけど……」
僕は昨日の朝、みんなで魔法書をわけたときの状況を思いだす。目をつぶって、脳内リピート。えーと、こんな感じ。
「あっ、そう言えば、魔法書わけるの忘れてた。みんな、自分のおぼえてないやつ、てきとうに何個かとってよ。僕はプチサンダーとサンダーと光属性一式おぼえる」
中位までの魔法書はてきとうにわけた。争奪戦っぽかったけど、みんなでパコパコ自分の頭を魔法書でたたく。
ん? パコパコたたくみんなのあいだで、何やら手が……僕がにぎってる数枚の魔法書から一枚をぬきとって、自分の頭をパコン! あっ、あの手、水かきついてる!
「……け、ケロちゃん。暴風雨の魔法書、僕からとったね?」
「ケロ〜」
「いやいや、あれはとっといたやつで……」
「ケロ?」
まあいい。使ってしまったものはしかたない。魔法書はまた買えるしね。
水の結界を使えるケロちゃんが、強力な水属性魔法を知ってるのは悪くない。
「おおっ、レッドドラゴンに五千のダメージだ。スゴイね! ケロちゃん」
「ケロ〜」
ケロちゃんが嬉しそうだし、よしとするか。