第38話 三村くん(筋力増強アーム)戦1

文字数 1,893文字


 ああ、三村くんと戦わないといけないのか。イヤだな。

 でも、待てよ。
 あの大男は盗賊たちに指図して、ギガゴーレムを持ち去ろうとしている。アイツは今ここで僕たちと戦うつもりはないんだ。

 てことは、殺さないように戦闘不能にさせれば、三村くんをとりもどすことができるんじゃ?
 相手は三村くん一人だ。
 僕らのほうが圧倒的に有利だし。

「ロラン。やるしかないよ」
「そうですね」


 ジャラーン、ジャラーン!
 シャケが現れた!


 あッ! テロップ!
 野生のって言わなかった?
 まさか、そんな。三村くんって、魔王軍なのか?

 ショックを受けていたせいだろう。三村くんに先制をとられてしまった。
 蘭さんの特技が働かなかったのか……いや、違うぞ。たぶん、それがイベントだったんだと思う。

 三村くんはポケットから何かをとりだして、なげた。
 とたんに保管室内にビービーと異音が鳴り渡る。

「な、なんだ?」

 ホムラ先生があわてふためいた。
「いかん! ヤツら、開発中のゴーレムリモコンを使いおったぞ」
「ゴーレムリモコン?」
「ゴーレムの内臓プログラムをジャックして、手動で動かすことができる遠隔操作盤だ」
「なんでそんなものあるんですか!」
「故障でゴーレムが暴走したときのためにだよ。手動で電源を落とすことができるだろう」

 僕たちのまわりで、ミニゴーレムが次々に起動する。
 でも、なんか変だ。目の色が赤い。ミニコは青だよ? 赤ってさ。信号で止まれの色だよね? 危険なんじゃないの?

 ビービー変な音を鳴らしながら、ミニゴーレムたちが集まってくる。その数は少なくとも百。

「いや、ここには五百だよ」と、先生。
 なんで僕の考えてることわかったんだ?

「ミニゴーレムは忠実なボディーガードとして、貴族社会で大流行中なのだ。思いきって量産したばっかりだ」

 ああ、そうですか……。
 なんか、こっちの世界のホムラ先生、金の亡者だな。カジノのせいか? ギャンブル依存症なのか?

「かーくん。ミニゴーレムにかこまれました!」
「三村くんにあやつられて、僕らを敵だと思ってるんだね」


 野生のミニゴーレム(量産型)A〜Zが現れた!


 ああ、今回、大群相手ばっかりだなぁ。
 まあいい。鉄クズ戦で練習ずみだ。ミニゴーレムは自爆攻撃しないから、鉄クズ相手よりマシなほう。

「じゃあ、やろっか。ロラン」
「はい」

「ちょっと待ちなさい」と言ったのは、ホムラ先生。

 この人、でしゃばるなぁ。龍郎はよくこの人とずっといっしょにいて、笑ってゆるしてあげてるなぁ。僕はあそこまで聖人にはなれない。

「なんですか? そろそろ戦いたいんですが。ギガゴーレム持っていかれちゃいますよ?」
「むろん、ギガゴーレムも大事だ。だが、ミニゴーレムも私の可愛い子どもたちだ。なるべく破壊しないでくれたまえ。戦闘不能にはしていいから。あのリモコンの電波を強める増幅器をこわせばよかろう」

 三村くんが床になげた機械のことだ。めんどうなことを言われてしまった。

「じゃあ、ロランは先制攻撃が出る前に馬車に入って」
「先制攻撃、出ません。さっきのシャケのイベント行動で、僕の特技は打ち消されたみたいです」
「了解。むしろ、ありがたいね」

 いつものように、前衛は僕、蘭さん、バラン、シルバン。
 まずは薔薇発動。花吹雪の華麗な演出のあと、後衛ぽよちゃんの聞き耳だ。
 それによると、三村くんのステータスは——

「あれ? 前とぜんぜん違う! 職業が大盗賊か。それに、筋力増強アームっていうののせいかな? 上方補正がスゴイね」

 三村くんが僕らの前から消えたときの数値は、これ。

 レベル26
 HP290、MP57、力162、体力135、知力62、素早さ57、器用さ158、幸運42。

 だけど、今はこうなってる。

 レベル35(大盗賊)
 HP308『616』(707)、MP75、力202『404』(444)、体力190『380』、知力75、素早さ71『142』(163)、器用さ227、幸運51。

 たぶん、二重かぎカッコのなかが筋力増強アームで補正された数値なんだと思う。HP、力、体力、素早さが二倍になってる。その上、大盗賊の職業ボーナスでHPと素早さが15%プラス、力が10%プラスだ。

 以前の僕らだったら、そこそこ苦戦してたかもね。
 野生のモンスターって防具つけてないから、防御力が低いんだけど、三村くんはこの上に、以前、僕があげた竜鱗のよろいを着てる。盾やブーツや装飾品やらで、総防御力は500だ。
 メタルなスライムの倍近い固さって言えば伝わるだろうか?

 だけどね。僕らはやれるんだよ。
 だって、蘭さんの攻撃力が五万だから。
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