第184話 特別試合1

文字数 1,628文字



 剣聖——
 そうか。それって、最上位職なのか。たまりんの賢神と同レベルの職業。
 ワレスさん、鬼の首みたいに職業とりまくってるもんな。ついに最上位職になったんだ。

「蘭さんの十万攻撃を受けられたのも、剣聖だからかな?」
「いや、と言うより、かーくん。数値をよく見てみろ。HP減ってないぞ。速すぎて見えなかったけど、たぶん、蘭の攻撃をかわしたんだ」
「ええーッ?」

 ぜんぜん、そんなふうに見えなかったんだけどな。
 どれどれ。数値は?

 レベル62(剣聖)
 HP65930、MP45020、力54640、体力24730、知力25660、素早さ28080、器用さ25300、幸運9160。

 ……ん?
 数値、おかしくない?
 たしか、前に仲間になったとき、高めのHPでも3、4000だったような? あれからレベルもあがってるし、またいくつかの職業のマスターボーナスを取得したんだろうけど。それにしてもケタが一個多くない?

「HPが六万超えてる……」
「だな。おれ、自分より数値高い人間見るの初めてだ」
「これ、人間じゃなくない? ドラゴンのHPが三万なのに」
「まあ、そのへんのボスの百倍強い」
「だよね」

 HPが万の単位のボスはたまにいるけど、そのほかの数値も全部

なんて、そんなボスこれまでにはいなかった。たいていは百の位だ。

「猛。これ、勝てると思う?」
「つまみ食いすれば」
「でも、それ、しちゃいけないんだよね?」
「ダメだよな」

 いや、これはアレだ。今こそ、ゴライの反射カウンターが効く。相手が強ければ強いほど、その攻撃力が自分に返って自滅する。

 蘭さんが先制攻撃したから、行動順はトーマスパーティーが持ってるみたいだ。僕らは聞き耳以外の行動ができない。聞き耳は行動数使わないからね。

 待ってるけど、蘭さんはもう動かない。蘭さんでさえ、一回しか行動できないんだ。そうだよね。ワレスさんの素早さ、二万八千だもんね。

 トーマスパーティーの行動。
 バランの薔薇が自動発動。同じく自動発動のケロちゃんの石化舌は、もちろん効果なし。クマりんがパパを呼んだ。

 自動発動は行動数は消費しないんで、バランが『みんな、ヘッチャラさ〜』を使った。
 あっ、今までは単体魔法の『ヘッチャラ〜』だったよね。みんなってことは、全体にかかる魔法をおぼえたんだ。

 ケロちゃんは水の結界で水属性魔法の効果を高める。
 最後にアンドーくんが、『みんな、固くなれ〜』を唱える。アンドーくんも大魔法使いをマスターしたみたいだね。僕らと離れてるあいだに、蘭さんたちも特訓してたんだ。

 けど、今の回、おもに防御だ。攻撃ができたのは蘭さんだけ。それもかわされてる。

「えーと、次の行動は、当然……」
「相手側だろうな。素早さ二万八千だ」
「う、うん……」

 うちで一番素早い猛でさえ、五千弱。流星の腕輪効果で一万。僕が風神のブーツの能力で最大限までアップしても一万あまり。ワレスさんの半分にも満たない。

 つまり、行動はこっち側から見れば、基本的に全員一回ずつだ。たまりんだけは賢神の効果で三回行動できる。

 だけど、この回、ワレスさんは身を守るを使ったみたいだ。攻撃してこない。
 まあ、攻撃されたら、たぶん、こっちはほとんど全滅。試合を見てる観客的には楽しくないかもね。

「どうぞ。このターンはご自由に」とまで言われて、ゴライパーティーのメンバーが憤った。

 ゴライは反射カウンターを活かすためだろう。これも身を守ったらしい。ほかの前衛三人が次々に技をくりだす。

「毛刈り!」
「剣の舞!」
「剣の舞!」

 重騎士と武闘王は同じ技か。
 毛刈り、出た!
 どうやら、通常攻撃に相手の防御力を最大値の10%減少させる付属効果がつくようだ。
 ワレスさんの装備品こみで三万近い防御力が三千減るのか。三千、大きい。あの羊飼いを守らないといけないな。

 でも、そう思った瞬間だ。
 ゴライパーティーの羊飼い、重騎士、武闘王は一瞬で石になった。

 な、何が起こったんだーッ?
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