第165話 今度こそ、お姫様を救え!
文字数 1,584文字
さあ、試合に勝った。
次は明日の決勝だ。
僕とミニコのコラボがあれば、恐れるものはない。
けど、その前に、今度こそ、セイラ姫を助けだすんだー!
「ギルドよって転職だけしとく?」
「いや、お姫様のあと蘭も助けるだろ。時間がない」
「そうだね」
「じゃあ、三時のおやつまでに別荘攻略するよ!」
僕らは大会のテンションのまま、魔法で別荘へ飛んだ。
「さあ、制覇するよ!」
猫車もちゃんと、ついてきてる。
これまでは職業マスターするために、市松人形や張子の虎とも毎回戦ってきたけど、ここからはすっとばして行った。
要するに木のウロコさえ集めれば攻略できる。木彫りの竜が飾ってある部屋でだけ戦えばいいのだ。
「一棟に木彫りの竜の部屋は一室しかないね」
「ああ。今、八十棟まで来た。たぶん、あと十九回戦えば、一番奥で捕まってるお姫様の部屋へ行けるはずだ」
よく考えれば、木のウロコはいったん脱出したあと、魔法でその場所まで戻ってくるのに便利だから集めてただけだった。なぜ木彫りの竜を倒そうと考えたのか、我ながらよくわからない。元ゲーマーの勘だろうか?
宝箱もないダンジョン。ひたすら進んでいく。
「猛。なんか、像が竜っぽくなってきた」
「ほんとだな。あと首と手足じゃないか?」
「あれ、手って言うの?」
「ミャーコの前足は手だよ」
「そうだけど」
ウロコが重なりあって、すっかり竜の胴体になった。猛の言うとおり、頭部と四本の足があれば、すっかり竜の像になりそうだ。
残る棟は五つ。
棟の数がほんとに九十九なら、ちょうど一個ずつだ。
「なんかさ。気配がしない?」
「そうだな。人の声っていうか」
「うん。何かに近づいていってる気がする」
終わりが見えてきた。
竜の部屋しか戦ってなかったから、まだ一時間もたってない。
残り五つの棟を制覇する。
うしろ足二つ。前足二つ。それに竜の首を手に入れた。
だけど、そこで屋敷は終わりだ。廊下の端にいつものように、グリーンドラゴンの像が置かれてる。その奥に続く建物はない。
「猛! さきがないよ? ダンジョン終わっちゃったよ」
「いや、違う。そんなはずないぞ。なんかがいる気配は強くなってる。仕掛けがあるんだ」
「仕掛けか」
僕はとりあえず、ドラゴンの手足と首を像に設置した。
そのとたん、像の目がピカピカ光る。モクモクと煙がわいていく、この感じ……。
「……ああ、兄ちゃん。仕掛け、あった」
「だな。来るぞ」
「グリーンドラゴンの像、完成させたら、グリーンドラゴンになるんだ」
今回の冒険録、ほんと戦ってばっかりだなぁ。
ジャラーン、ジャラーン。
野生のグリーンドラゴンが現れた!
グリーンドラゴンの先制攻撃。グリーンドラゴンは雄叫びをあげた。
ああ、また先制とられたか。
だけど、雄叫びだけだ。グリーンドラゴン、それほど素早くない。てか、猛が異常に数値高いだけ!
「ぽよちゃん、聞き耳!」
「キュイ!」
グリーンドラゴンの特技は、花吹雪、ウィンドブレス、ギガウィンドブレスか。
どうやら属性は木と風の竜みたいだ。
「花吹雪ってなんだろなぁ」
「木竜がたまに花の舞って技、使ったよな。あれの上級バージョンじゃないか?」
「なるほど」
花の舞は木属性の全体攻撃だった。
ちなみに、木竜は木彫りの竜ってかんじだったけど、グリーンドラゴンはエメラルドグリーンのキレイな竜だ。翼はツル草でできていて、赤い花がからみあっている。
なんとなく、女の子っぽい竜。
火竜もそのなかでとくに強い個体が、レッドドラゴンと呼ばれてた。
ということは、グリーンドラゴンは木竜のトップスターだ。弱点も同じはず。
「木竜の弱点はファイヤーブレスだったよね。物理攻撃がほぼ通じなくて、あとは火属性魔法がいくらか効く」
「よし。かーくん。ここは兄ちゃんに任せとけ」
「うん。よろしく」
猛はファイヤーブレス吹けるもんね。いいなぁ。