第308話 生きていたゴドバ

文字数 1,473文字



 ズズズズズ……。
 変な地震が小刻みに続く。

 やがて、広い空間に出た。
 この前、ノームたちが働かされていたところだ。今は誰もいない。

 巨大な絶壁が目の前にそびえている。壁いちめんに複雑な模様の魔法陣が描かれ、その中心に彫刻のような巨像が半身を岩に埋めている。

「な、なんですか? これ」

 蘭さんが呆然とした声でつぶやいた。

「そうか。ロランたちが見るのは初めてか。ここでノームたちが働かされてたんだ。

を掘りだすために」
「あれって、岩じゃないですよね?」
「今は岩なんだよ。でも、たぶん、もともとは何かの

だ」
「生物って言うより、あきらかに魔物なんですけど」

 僕と蘭さんの会話に、三村くんが割りこんでくる。
「それも、めっちゃデッカイ魔物やで」

 うーん。そこだよねぇ。
 復活をくりかえしたゴドバの最後のころと同じくらいのデカさなんじゃないだろうか?

 蘭さんは緊張した面持ちのまま、じっと

を見あげる。

「魔法で封じられてる」
「古城の下ってことは、これって古代から封印されてるんだよね?」
「封じられた古代の魔物」

 思えば、ゴドバが使ってたのも禁じられた古代の魔法だった。つまり、古代は今より危ない魔法が横行してたんだ。なおかつ封じられるって、よっぽどのことじゃないか?

 それにしても、昨日に見たときには、像は半分むこうを見てた。今は七三くらいで、こっちを見てるんだけど。
 動いたってこと? やっぱり、この像、動くんだ?

 見ているうちに、像はさらにこっち向きになった。ほんの数センチだけど、その瞬間、地面がグラグラゆれた。さっきからの地震はコイツのせいか! もしかしたら、昨日のゆれの何割かも、ゴドバじゃなく、コイツが原因だったのかも。

「なんで、ゆれるんだろう? 魔法陣で封じられてるんだよね?」
「かーくん。魔法陣、ところどころ、とぎれてませんか?」
「ああ、それは昨日も思った」
「封印の力が弱まってるんですよ」
「やっぱり、そうだよね」

 なんで今まで忘れてたかなぁ?
 今すぐ、ワレスさんに相談しないと。もしも今、これが復活しちゃったら、僕らだけじゃ、どうしたらいいのかわからない。

「僕らもワレスさんのあと追って、知らせに行かないとダメだよね?」
「そうですね。急いで、ノーム村まで戻りましょう」

 ひきかえそうとしたときだ。

「ヒヒヒヒヒ。もう遅い。おまえたちはみんな、ここで死ぬんだ」

 えーと? 今の声は?
 クピクピ言ってはなかったけど、そうとう小さかったな。まるでコビット族みたいな。

「誰? シャケ?」
「ちゃうわ」
「だよね。じゃあ、ロラン?」
「僕、『ヒヒヒ』なんて笑いませんよ?」
「アンドーくん?」
「わじゃないけんねぇ」
「ランス?」
「おいおい。いくら人間アレルギーだからって、ヒヒヒはないだろ?」
「アジ?」
「かーくん、おれのことバカにしすぎ」

 うーん。じゃあ、誰?

「愚か者めが。全員、古代の禁術にふれて死ぬがいい。ヒヒヒヒヒ。カハハハハ。ハーッ!」

 やっぱり僕らじゃない。
 声のぬしを探すんだけど、姿が見えないんだよな。

 すると、バランが叫んだ。
「みなさん、あの石像の頭の上を見てください!」

 頭? 頭ね。んんー、虫みたいなものがウロウロしてる?

「もっと近づかないと見えないなぁ。双眼鏡って持ってたかなぁ?」

 ペッとミャーコが吐きたしてくれた。えらいぞ、僕。どっかの店で双眼鏡も買ってたらしい。

 のぞいてみると、たしかに何かいる。小さい……とても小さいけど——

「ゴドバだ! 巨像の頭の上に、コビットサイズのゴドバがいる!」

 やっぱり、アイツ、生きてたんだ!
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