第220話 四つの扉

文字数 1,355文字



 ダルトさんたちは帰っていった。
 吸いとられたままじゃかわいそうだから、ダルトさんの幸運数値は、こっそりなおしておいたけどね。
 正確な数字を知らないんで、とりあえず500にした。これまで賭けてみるで連敗してたってことは、そうとう低かったはずだから、500でも高すぎるかもしれない。まあ、そこはプレゼントってことで。

「あっ、それより、セイラ姫を助けないと。タツロウはまにあったかな?」

 僕らは急いで階段をかけあがる。それにしても急な階段だ。大きくて立派なモニュメントみたいなものの背後に、巨大な両扉がある。

 その前で三人が争ってる。
 タツロウの腕前なら、とっくになんとかしてるだろうと思ったけど、なるほど。ヨウタはクズだな。セイラをはがいじめにして、喉元にナイフを押しつけてる。

「兄上! やめてください。セイラを離してください」
「おまえに婚約者をとられるくらいなら、今ここで殺してやるよ」

 こっちも修羅場だなぁ。
 ドロドロの三角関係……というより、愛しあう二人に、しつこくストーキングする兄。

「タツロウさん! 加勢します」
「うん。しかし、これでは……」

 ヨウタはどこまでもゲス根性を丸出しにして、セイラの腕をつかむ。その手を扉の中心に押しつけた。

 扉がひらいた。
 セイラをかかえたまま、ひきずるようにして、なかへ入っていく。

「兄上! やめろ。そこは危険だ!」
「タツロウさん!」
「セイラ!」

 たしかに危険だというのは僕でも感じた。蘭さんなんか眉根をしかめて、こう告げた。

「このなかもダンジョンです。しかも出てくる敵が、名人墓場より、だいぶ強い」
「セイラが危ないよ。追いかけよう」
「行きましょう」

 僕らの前を走るタツロウのあとを、ひたすら追いかける。
 真っ暗なトンネルだ。でも、天然じゃない。

「遺跡だ。銀晶石の森にあった遺跡の壁によく似てる」
「そうですね。それに、シルキー城の地下の扉のなかにも」
「うん。そうだね」

 やっぱり、失われた古代文明の遺物なんだ。
 世界のどこかにあるという四つの門。ここがその一つであることは間違いない。

 心配したけど、敵に出会うことなく進むことができた。ヨウタが魔物よけのアイテムを使ったせいかもしれない。まあ、ヨウタだけで戦っても、とてもじゃないけどモンスターに勝てそうにないもんね。

 まもなく、扉が見えた。さっきの両扉によく似たやつだ。でも、あれより古く、そして禍々しいような不思議なふんいきが漂っている。

「前にシルキー城でも、扉のなかに、もう一つ扉があったね」
「そうです。奥の扉は僕でもひらくことができなかった」
「三人の巫女が祈らないとあけられないんだ」

 ヨウタとセイラの姿が見えた。扉の前で言い争ってる。

「さあ、あけろ! 祈るんだ!」
「ムリだよ。ボクは巫女じゃない」
「そんなはずはない。夢の巫女はわが国の姫だって話じゃないか? おまえがそうなんだろ? セイラ」
「違う。ボクじゃない」
「でも、ヒノクニ王家には、おまえしか姫はいない」
「…………」

 ナイフでおどされて、しぶしぶってようすで、セイラは扉の前にひざまずき、両手をあわせた。だけど、いっこうに扉は反応しない。

「ほらね」
「そんなバカなことあるか! もっと本気で祈れ!」

 あッ! 危ない!
 ナイフがふりあげられ、セイラに迫る——
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