第86話 港、ミニゴーレム競走
文字数 1,339文字
「わあっ、七十……八十? 百はいるよね? ヤバイ!」
「ミニゴーレム一体ずつは弱いですよね。パーティー二つにわけましょう」
「えっと、アンドーくんもいるから、三パーティーになろう。一隊は馬車を走らせて、船に先行する」
「そうですね。ゴール地点で待ってれば、ミニゴーレムたちも自分から来てくれるし」
というわけで、僕をリーダーにした、ぽよちゃん、たまりん、ミニコパーティー。蘭さん、バラン、モリー、ヒカルンパーティー。アンドーくん、クマりん、ケロちゃん、シルバンパーティーにわかれた。NPCの先生、ふえ子、コビットたちは、ちょっと挙動の心配な蘭さんパーティーに補佐としてついてもらう。
「じゃあ、ニートでもちゃんと働ける僕が先行する! みんなは一人でも多くの子どもをとりもどして」
「わかりました」
僕のパーティーは猫車に乗って、波止場競走だ。船までなるべく多くのミニゴーレムをぬいて、一番に到着しないと。
「猫車、お願い!」
「ミキャー!」
トラジマの猫は僕らを乗せて猛スピードで走る。猫だからね。ミニゴーレムの集団がかたまりになってるとこを、ピョンピョンとびこえていく。馬車より障害物競走には強い。いいぞ。猫車。
なんか左右でチャラチャラ、エンカウントのSEが流れるんだけど、たぶん、僕たちは戦闘から逃亡したことになってる。どんどん追いぬいていく。速い速い。猫車。
「あとちょっとで船だ。ガンバレ! トラっち」
「ミャッ」
あっ、名前が決まってしまった。これからはトラっちって呼ばないと。
でも、大変だ。船員たちは僕たちが近づいてくるのを見て、ヤバイと思ったんだろう。まだ乗りこんでないミニゴーレムがたくさんいるのに、船のタラップを外して、しまい始めてる。
船にはさっきから見ただけでも、かなりの数の子づれゴーレムが入りこんでた。たぶん、百人以上の子どもがさらわれてるはずだ。
(港には蘭さんたちがいる。そっちの子どもたちは任せよう)
ああっ、このパターン。また僕だけパーティー離脱する? でも、しょうがないや。
「トラっち、船までジャンプ!」
「ミャー!」
トラっちは華麗に宙を舞った。さすがは猫。素晴らしいジャンプ力で、今まさに岸を離れようとする帆船の甲板にとびこむ。
まにあった!
でも、船のなかもダンジョンだ。甲板にいた船員たちがかけよってくる。
「コイツめ! やっちまえ」
「ジャマさせねぇぜ」
チャララララ……。
ウツボ兵士が現れた!
ヒトデ船員が現れた!
サザエ戦士が現れた!
やっぱり、モンスターなんだ。それも魔王軍だ。
この船、たぶん、ゴドバの命令で動いてるんだな。
目的地がどこなのかハッキリしないけど、たぶん、あの場所じゃないかと思う。
ゴドバが人間をさらって集める理由は、アレしか考えられないからだ。
人間をモンスターに変身させる研究所。あそこへ子どもたちを送りこみ、人々を襲う魔物に変えるつもりなんだろう。
くそッ。絶対、そんなことさせないぞ。
目的地につく前に、この船のモンスター全部倒して阻止してやる。
「行くよ! ぽよちゃん、たまりん、ミニコ」
「キュイ!」
「ゆらり」
「ミー」
人数は少ないけど、このメンバーなら攻撃にも回復にも優れてる。
負けるもんか。やってやるもんねぇー!