第311話 気がつくと暗闇

文字数 1,512文字



 うーん。どこまでも、どこまでも落ちていく。
 途中でもう意識なかったね。
 気がついたときには、あたりは完全な闇だった。

「イテテテテ……てか、痛くない? よくわかんないな。おーい、ロラン? シャケ? ぽよちゃーん。アンドーくん?」

 まわりに呼びかけてみるんだけど、返事はない。
 たまりんやミニコもいないようだ。みんな、離ればなれに落ちてしまったのか。

 ここはどこだろう?
 地下のもっと地下?
 困ったなぁ。これじゃ、外へ出られないぞ?
 いや、それより何より、あの巨大な石像はどうなったのかな? 封印が解けてしまったなら、岩じゃなくなってるかもしれない。でも、まわりにはいないみたいだけど。

 あっ、そうそう。カンテラは? カンテラはどこ行ったかな?

「ミャーコ。カンテラ出して」
「ミャ」

 うん? 声が背中から聞こえてきた。でも、カンテラは出てきた。
 僕はそれを持とうとするんだけど、うまくにぎれない。手首にひっかける形で、どうにかこうにか歩いていく。なんだろう。すごく歩きにくい。どっかケガしてるのか?

 とりあえず、まわりを見まわす。洞くつのなかだ。まだ、さっきのノームの坑道のなからしい。

 ヒョコヒョコしながら、僕は仲間を探しまわった。

「おーい、ロラン。たまりーん。ぽよちゃん? シャケー、ランス!」

 ダメだなぁ。誰の返事もない。そんなに遠くに離れちゃった? 馬車のそばにまとまってたから、落下するにしても、近くにいると思うんだけどなぁ。

 遠くに光が見える。あそこが出口か。みんな、もしかしたら、さきに洞くつの外へ出ていったのかもしれない。

 それにしても、カンテラがジャマだなぁ。歩きにくいのは、これのせいだ。片足が使えないからバランスが悪いんだよな。

「もう、カンテラも自分で歩いてくれたらいいのに」

 僕が文句を言うと、カンテラの顔色が一瞬、スッと青ざめた。そして、僕の手を離れ、ふわふわと浮かぶ。

「ついてきてくれるの?」
「ご了承しました。ご主人さま」
「ありがとう」

 なんかわからないけど、カンテラがやけに丁寧だ。コイツ、しゃべるんだ?
 よしよし、これでラクラク走っていけるぞ。ヒョイヒョイ、ピョコピョコピョンとな。


 チャララララ……。
 思い出A、Bが現れた!
 思い出A、Bはたたずんでる。


 ええー! ここってモンスターが出るんだ。今、一人なのにィー。
 しかも見たことないモンスターだなぁ。
 半透明にぼんやりした人間の形。お、オバケか? オバケなのか?

 仲間がいないときに、オバケには出会いたくなかった。でも、しょうがない。
 とりあえず剣をぬこうとしたんだけど——

「あッ! 剣がない。精霊王の剣が。レプリカだけど」

 すると、ミャーコがププッと吐きだしてきた。背中から降ってくるのはなんでだ?
 いや、てかさ。降ってきたの、爪なんだけど……。

「えっと? これ、妖精のネイルかな? フェアリーネイル?」
「ミャッ、ミャー」
「ん? 違う? これが精霊王の剣? 僕には爪に見える」

 まあいいや。爪でも戦えるだろう。さっそく装備……装備……。

「…………」

 目の錯覚だろうか?
 僕の手、なんか毛だらけなんだけど? 指も短いし、丸っこい。なんかこう、これはアレだね。まるでネコりんか、ぽよちゃんのお手々。

「えーと、ぽよちゃん?」

 まさかと思うけど、これはぽよちゃんなのか? 自分の手のように思ってたけど、となりにいるぽよちゃんの手を見てるだけ?

「ぽよちゃーん」

 自分の手にむかって呼びかけていると、モンスターたちは逃げていった。残念な音楽がして、戦闘が終わる。

 な、なんだろう。
 とてつもなく、イヤな感じがする。
 いったい、僕……どうなってるんだ?
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