第14話 ここは家電量販店か?

文字数 1,429文字



「いらっしゃいませ〜。こちら雑貨屋です。ほかの街にはない珍しいアイテムがそろってますよ」というお姉さんは、やっぱりミニスカポリスだ。カウンターテーブルの下で足を組んで、色っぽいのなんの。

「どんなアイテムが置いてあるんですか?」
「これです」

 ショートカットのお姉さんがお品書きを出してくれる。出たね。たいてい、どこの店でもお品書き。


 カセットテープ(プログラムA)
 CD-ROM(プログラムB)
 DVD(プログラムC)
 マイクロチップ(プログラムD)
 ケーブル(伝達速度アップ)
 プログラム変換器
 ミニゴーレム(ボディー)
 充電式乾電池(HP)
 ライター
 虫よけスプレー
 扇風機
 アイロン
 湯沸かしポット
 デジタル時計


 な、なんじゃ、これ?
 なんでこんな家電量販店の品物が?

「あの……」
「はい?」
「これ、どんな品物なんですか?」

 お姉さんは自慢げに微笑んでる。

「上から八品めまでは手作りゴーレム用のアイテムです」
「ゴーレム?」
「博士によれば、ロボットとも言うのだそうです」
「ははぁ」

 なるほど。わかってきたぞ。
 さすがは近代文明の街だ。
 じつはうちには本物のゴーレムがいる。ゴーレムっていうのは、石や土などを素材にして、魔法で造られた動く人形のことだ。うちのシルバンは銀晶石というとても貴重な石でできている。

 でも、ふつうの冒険者はモンスターを仲間にすることはできない。僕らは蘭さんの生まれつきの特技で仲間になるんだけどね。

 だから、一般の冒険者にとってみれば、いっしょに戦ってくれるロボットがいるのは便利だろう。

「あれ? もしかして、シルバンのカスタマイズできる?」
「えっ? シルバンは古代魔法で造られたんですよ。ムリなんじゃないですか?」
「ちょっと一式買ってみようかなぁ」

 ちっこいゴーレム、可愛い気がする。

「じゃあ、ゴーレムキット一式ください」

 お姉さんがえらく驚いた顔してる。
「よろしいんですか?」
「えっ? なんでですか?」
「一セットですと一億円しますが?」
「えっ?」
「えっ?」
「ええーっ? 一億円?」
「はい。一億円です」

 まあいいや。一億円は持ってる。それに、僕はSランクになったんだもんね〜
 僕はミャーコポシェットのヒモにとりつけた黄金に輝くバッヂを見せびらかす。

「僕、Sランクなんですよ! Sランクって、すべてのギルド加盟店での買い物が30%オフになるんですよね?」

 そう。冒険者ランクは、ギルドへの寄付、貢献度、戦闘記録、取得した称号の数、街の人々の救助などで決まる。上位ランクになればなるほど特典が得られるのだ。買い物30%オフもその一つ。

「ええーっ? Sランク? Sランクですね? お客さま」
「そうです。Sランク、です」
「そうですか! あなたがたがあの悪のヤドリギを倒したというSランクの!」
「しいっ。しいっ。そこは内密でお願いします」

 ロランが勇者だってバレたら大変だからねぇ。

「では、三割引きで七千万円ですが、どうしますか?」
「うーん」

 この一億円はスマホのバッテリー問題を解決するための資金だ。なんでか、こっちの世界ではバッテリーの持ちがものすごくいいんだけど、それにしてもそろそろ30%を切る感じ。Sランクの特典なみの充電量。

 なんとか充電の手立てを確保しとかないと、僕はとっても困るのだ。

 なぜって? まあ、それにはもちろん、重要なわけがあるんだけどね。その話は追々に。

 のちにね、それに関してすっごく大変な事件が起こるから……。
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