第128話 本戦、僕らの初戦

文字数 1,436文字



「第二試合、白虎組。赤、白、両チーム。整列してください」

 ああ、僕らの番だ。
 それぞれのパーティーが先鋒から順番にならぶ。
 ああっ、僕の前、昨日と違う相手だ。僧侶だよ。女の人だ。やりにくいなぁ。

 僕はチラリと猛を見たけど、兄は何も言わない。とくに問題なしと思ってるってことかな。

「では、先鋒、位置について。始めッ!」

 えっ? もう?
 まだ心構えが……。
 しょうがないな。なるべく傷つけないように、ちょんとつきとばそうかなぁ。それかいっそ、さっきのブルーベリーさんみたいに、かたくなれ〜とか使ってくれたら、むしろ安心なんだけど。

 僕はとりあえず、足パタパタしようとした。けど、動けない。
 あれ? 油断してた。向こうのほうが素早さ数値高いんだ?
 わっ。ヤバイ。どうしよう。よく考えたら、僧侶だからって、攻撃魔法を使えないわけじゃないんだよな。
 もし、この人もラフランスさんみたいに『雷神の怒り』クラスの超弩級攻撃魔法使えたら?

 いわゆる地味子ちゃんなんだけど、細目がむしろ日本人ぽくて嫌いじゃないぞ。
 女の子はキッと僕を見て呪文を唱える。
 来る。魔法が来る。なんだ? 攻撃か? 守りか?

「元気だしてね〜」

 えっ? えーと……それって回復呪文?

「元気だしてね〜。元気だしてね〜。元気だしてね〜」

 地味子ちゃんは五、六回、同じ呪文をくりかえした。

 あっ、思いだしたぞ。
 元気だしてね〜は僕らのパーティーメンバー全員が装備してる装飾品『精霊のアミュレット』の装備品魔法にもなってる。戦闘中、味方のターンの終わりに自動でHP最大値の10%を回復してくれる。さらにHP満タンのときにこの魔法を使うと、その戦闘中にかぎって、HP最大値に加算されるのだ。ただし、加算ぶんは回復しないといけない。

 地味子、叫ぶ。
「元気いっぱい〜」

 むむっ。HP最大値を増加された。なるほど。打たれ強くしたのか。
 しかもトータル七回行動したから、この子、そうとう素早いぞ。僕の数値の七倍としたら、3500は超えてる。
 まあ、素早さは次の僕のターンでパタパタして逆転させることができるけど。

 問題は素早さ以外の数値だ。
 素早さがそれだけ早いってことは、そのほかも、めちゃくちゃ高いとか? ミニコなみ? もしそうなら、コツンと杖で叩かれてワンパンされるのは僕のほうだ。

 どうなんだ? 次は攻撃か?

 ハラハラしながら待ってたけど、地味子は動かない。
 ん? いつのまにか僕の番か。攻撃はしてこないんだ。とりあえず今のターンはHPだけ伸ばしたのかな。

 じゃあ、こっちの番だ。
 遠慮してると負けてしまうかもしれない。
 僕はまわりの観客のブーイングをものともせず、地味子のまわりをグルグル走る。もちろん、素早さをあげてるんだ。

 そろそろ、よさそう。
 マックスになったな。
 四回ていどは動けそうだ。

 じゃあ、試しに通常攻撃。
 それで効きめ薄ければ、魔法攻撃にして、ミニコに倒してもらおう。

「行きます。すいません。ほんとは女の子にこんなことしたくないんですけど、試合なのでかんべんしてください」

 僕はさやつきのまま、剣で女の子のお尻をペン、と叩く。そこが一番、贅肉がついてて体の損傷が少ないからだ。

 女の子はぶったおれた。
 白目むいてる!

「ギャーッ! あっけなさすぎる!」

 ウソでしょ? あんだけ魔法でHP増加してたのに?
 どうやら、数値高いのは素早さだけだったようだ。

「白組先鋒勝利!」

 勝った。
 なんか、ひょうしぬけだけど。
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