第8話 トレインジャック
文字数 1,602文字
いきなりジャックされました。僕らの乗った汽車。
まだ五話めだよ? 五話。冒頭なのに。
もうしばらく、のんびり汽車の旅を楽しみたかったなぁ。
まあ、出てきてしまったものはしかたない。
僕はあらためてジャック犯たちを観察した。みんな、つらがまえはいかにも悪人。装備はぜんぜん、僕らにくらべたら大したことはない。
「ロラン」
僕が声をかけると、蘭さんはうなずいた。
蘭さんは危険察知っていう特技で、戦闘前の敵の種族やレベルなんかがわかるんだ。
「えーと、謎の盗賊団。職業は盗賊、大盗賊、戦士、武闘家。レベルは20から25。見た感じ、僕らの敵じゃないかな」
僕らのメンバーは人間三人とモンスター二人だ。えっ? モンスターは一匹二匹じゃないかって? ダメだよー。ぽよちゃんは僕らの仲間だよ? 魔王の四天王は匹で、ぽよぽよは一人二人の僕。
今のこっちのメンバーは、僕、蘭さん、ぽよちゃんがアタッカー。たまりんが回復と補助担当で、アンドーくんがアタッカーにも回復役にもなれる万能型。
やつらは盗賊や戦士など攻撃役しかいないし、装備を見ても、さほど苦戦しそうじゃない。
やる?
うん、やろうよ。
と目を見かわして、僕らは座席から立ちあがった。
「じゃあ、五人いるから、たまりんは後衛援護で」
ゆら〜り。
たまりんが左右にゆれるのは、オッケーの返事。
じゃあ、行きますか。
不届きなトレインジャックは成敗しないとね。
「みなさん、あの……」
青くなってるカロリーネさんに、蘭さんは王子様の笑顔を見せる。どっちかって言うと、王女様の笑顔なんだけど。
「ご心配におよびません。僕らに任せて。危ないから、ご婦人や子どもたちは離れていてくださいね」
「は、はい……」
貴婦人は孫の手をひいて、少し離れた席に移動する。
トレインジャックたちは怒り狂った。
「おいおい、こらこら、てめぇら。何してくれてんだ? ゴチャゴチャ言ってねぇで、さっさと武器すてて金目のもん出せや」
ふっ。哀れだね。
僕らを誰だと思ってんの?
魔王の四天王、悪のヤドリギを倒したのは僕ら(と、ワレスさんたち近衛隊)だよ?
ただの盗賊なんかに屈しないもんね。
「おいおい、なんだ? その目つきは? ケガしたくなけりゃ、おとなしくしてやがれ。それとも何か? やろうってのか?」
「いいですよ。やりましょう」
絶世の美女のごとき麗しい蘭さんと、背は高いけど細マッチョで、やっぱりイケメンのアンドーくん。そして、いまだに高校生、または女の子に間違われる僕……。
盗賊たちは大笑いした。完全にバカにしてる。
いいもんねぇ。笑ってられるのは今のうちだぞ?
チャチャチャン、チャチャチャン、チャチャチャンチャン——
ああ、ひさびさに聞いたー!
この音楽。戦闘って感じだなぁ。あいかわらず、どこからBGMかかってるのか謎だけど。
ひさしぶりなんで、僕は自分のステータスをながめた。
この世界の戦闘はターン制だ。こっちのターンのあいだ、敵は反撃できない。だから、剣の技術がどうこうっていうより、敵のターンをしのぎながら、どれだけHPを削れるかっていう頭脳戦だ。ステは重要。
レベル34
HP1127『949』、MP620『389』、力255『225』、体力275『190』、知力295『132』、素早さ270『176』、器用さ286『145』、幸運99998。
ただし、今、僕の職業は魔法使いだ。今さらだけど、基本職。前の遠征で上級職の大商人をマスターしたんで、街に帰ってから転職した。職業はおぼえられるだけおぼえたほうが、マスターボーナスで呪文や得意技をおぼえたり、数値にプラス値がついたりする。
なので、今の僕は魔法使い。よりによって、HPと力、体力にマイナス補正が20%もかかってしまう最弱職。知力とMPは20%プラスされてるけどねぇ。
ま、でも勝てるでしょ。
楽勝、楽勝。
さ、行くよ〜