第258話 古城にむけて

文字数 1,788文字



 ナッツのお母さんはすっかり元気になった。
 いやぁー、我ながら、小説を書くはスゴイ技だよね。
 この調子で、世界中の人を救っていきたいもんだ。
 あとは、とりあえず、イケノくんと、ブラン王かなぁ。

「長いあいだ暗闇のなかにいて、自分が自分でないようでした。そのあとはずっと意識はあったのですが、体が動かなくて。助けていただき、ほんとにありがとうございます」

 よかった。ナッツのお母さん。これでやっと、親子で暮らせるね。

「じゃあ、ナッツとお母さんは、僕らが人間の世界に帰るときに、いっしょに帰りましょう。でも、その前に古城へ行って、ノーム村の人たちや、ほかのさらわれた人を助けてきます」
「わかりました。待っているあいだ、村に残った子どもたちの世話は、わたしがします。そのくらいのことは任せてください」
「助かります!」

 その夜、僕らはノーム村の近くの森のなかで休んだ。コビット王の剣の魔法に副作用があるとわかったからね。一日二日なら体に影響ないみたいだけど、早く老けると思ったら、なんかイヤ。

 スズランに頼んで、精霊職にだけはつけてもらったけどね。
「精霊か。おれもなってみようかな」と、今回はワレスさんも言った。ブタさんのときは言わなかったのに……。

 その夜、森のなかでたき火をかこんで、僕らは古城攻略について話しあった。

「以前、ミルキー城でヤドリギを追いつめたとき、三つのパーティーにわかれただろう? おれとロランの隊、クルウの隊、かーくんたちの隊だ」と、ワレスさん。
「そうですね」
「あのときのように、いくつかのパーティーにわかれたほうがいいだろう。ノームやさらわれた人たちを探して救出する隊、ゴドバを見つけて倒す隊だ」
「それに、ふえ子のお母さんも捕まってるみたいなんです」
「フェニックスだからな。ヤツらの実験台にされてるのかもしれないな……」

 そんなわけで、僕らは別行動することになった。ワレスさんの隊はゴドバとグレート研究所長を見つけて倒す。クルウ隊はさらわれた人間たちを救出する。ロランたちはふえ子のお母さんを探して逃がす。僕らはノームの人たちを助ける。四隊いてよかった。

「じゃあ、ロランの隊はいつもどおりのメンバーかな? ロラン、アンドーくん、トーマス、バラン、クマりん、ケロちゃん、モリー、ヒカルン、シルバン。こっちは僕、猛、たまりん、ぽよちゃん、ランス。あとはネコたち。アジはどうする? 僕らと来る?」
「うん。おれ、かーくんたちと行く」
「ナッツは?」
「おれもノームのみんなを助けたいから」

 二人はNPCだから、車の人数には関係ない。それにしても、猫車ももうちょっと頭数増えればな。人間が四人入るといっぱいになってしまうって、ちょっと少ないよね……ん?

「あれ? 数があわない。猫車。僕と猛とランスで人間三人いるのに、たまりん、ぽよちゃん、ネコりん四匹入ってる! あきらかにネコの数が三匹ぶん過剰なんだけど!」
「あれ? そうだな。なんでだ? 兄ちゃんが数に入ってないとか?」
「猛はもうNPCじゃないよ。人一倍デッカいんだからさ。数に入ってないわけないじゃん」
「一人ずつ、順番に猫車に入ってみよう。誰が加算されてないかわかる」

 結果、ネコりんたちが数に入ってないことがわかった!

「なんで?」
「ネコだからじゃないか? トラっちが家族認識してる。前に蘭が人数増えたらネコ減らすって言ってたし、コッソリかくまってたんだ」
「なるほど!」

 もしかして、ネコりんなら百匹でも二百匹でもつれ歩けるのか?

 じゃあ、まあ、ネコりんたちは安心して鍛えることができるんだけど、それにしても、小さいモンスターあと一匹ぶんしか余剰がない。

「もう二人くらい人間が乗れたらいいのにねぇ」
「それなら、ダディロンに任せてみるか?」

 ん? 急にワレスさん、変なことを言いだしたな。
 と思ってたら、馬車からごっつい筋肉質なおじさんが出てきた。ダディロンさんだ。以前、ミルキー城の地下牢から助けてあげた伝説の鍛冶屋さん。

「あれ、ダディロンさんも来てたんですね」
「うむ。わしの力が行軍に役立つこともあろうかとな」
「じゃあ、お願いしてもいいですか? 明日の朝までに、この猫車に乗れる人数を増やせます?」
「うむ。わしは伝説の鍛冶屋だ。わしにできんことはない」
「お願いします」

 さあ、これで明日こそは廃墟の古城にむけて出発だ!
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