第191話 現れた! ゴドバ!

文字数 1,488文字



「では大会優勝者である、かーくんパーティーに勝者の証、ゴドバの腕が授与されます。代表して、リーダーのかーくん。表彰台へおいでください」

 そうだった。ゴドバの腕ね。
 僕、やっぱりいらないなぁ。
 でも、くれるって言うから、しょうがなく表彰台の上にあがる。

 バックゲートから前のときと同じバニーちゃんが、大きな大きなトレーを持ってやってくる。

 それにしても、ゴライさんは襲ってこないのかな?
 ほんとはゴドバなんじゃないの? それにしては、ワレスさんに一瞬でやられてたけど……。

 このまま、ゴドバは現れないのかな? もしかしたら、もう腕のことはあきらめたとか? そうであってほしい。

 僕は緊張して、自分の前に運ばれてくるトレーをながめていた。

 それにしても、デッカいトレーだなぁ、ほんと。
 あのバニーちゃん。すごい力持ちだ。男の二、三人は軽く持ちあげられるだろうね。

「強者の証が運ばれてきました。ゴドバの腕が、かーくんさんに授与されます」

 バニーがフタをあけた。ワレスさんが近づいてきて、トレーの上の青い腕を手にとろうと——

 そのときだ。
 急に暗雲がたちこめた。快晴の青空が、にわかに夜のごとく暗くなる。

 なんだろうと思って見あげると、雲? 黒いものがいっぱい浮かんでる。

「雲……」

 違うぞ。薫。雲にしては自由に飛びまわってる。
 なんだ。コウモリじゃないか。すごいなぁ。大きいコウモリだぁ。まるで、ガーゴイルみたい。

「わあッ! ガーゴイルだ!」
「竜兵士とガーゴイルの大軍だー!」
「助けてくれー!」

 観客たちが悲鳴をあげて逃げまどう。

 なんで、こんな人間の国のどまんなかに、とつぜんモンスターの大軍が?

 すると、そのときだ。
 空に気をとられた僕の前で、何かがサッと動いた。

「グハハハハ! とりもどしたぞ!」

 あっ! バニーがトレーをなげすて、腕をわしづかみにしてる。
 その姿はみるみるうちに巨大化して、みにくく歪んでいった。巨大な魔物——ゴドバだ!

 まさか、バニーがゴドバだったなんて!

 ゴドバは腕をひっつかむと、自分の肩に押しあてた。またたくうちに、接合部が癒着(ゆちゃく)していく。

 ゴドバは目の前にいる僕にとびかかってきた。
 ぽかんとしてる僕は、かんたんに餌食に……。

 いや、違ったぞ! ギガファイアーブレスだ。炎にあぶられて、ゴドバは舌打ちをついた。そのときには、ワレスさんも剣をぬいて迫ってる。

 ゴドバは空に飛びたった。
 かわりにガーゴイルの大軍が会場に降下してくる。足止めだ。ゴドバが逃げだす時間を稼いでる。

 キャーキャーとうろたえる人たち。
 僕らはガーゴイルや竜兵士を一般人のほうへ行かせないように戦った。

「小切手を切るー!」
「ギガファイアーブレス!」
「キュイキューキュウ!」
「ゆらり!」

 蘭さんたちも戦ってる。巨大化したクマりんが、バタバタと頭上を飛びまわるガーゴイルを打ち落とす。クマりん、テディーキングになるとデッカいからなぁ。

 もちろん、ワレスさんやヒノクニの兵隊も戦った。おかげで、一般人にケガ人はなかった。

 しばらくすると、ガーゴイルたちは飛び去っていった。戦闘不能になった多くの魔物は、いつしか人間の姿に変わっていた。

「この人たちも、魔法でモンスターに変えられてたんだ」
「大丈夫だ。かーくん。みんな気を失ってるだけだ」

 だけど、どうするの?
 ゴドバを逃がしちゃったよ。

「僕ら、追いかけます!」と言ってみたんだけど、なぜか、ワレスさんはほくそ笑んでる。これは、なんか企んでる顔だ。

「いや、いい。作戦は成功だ」

 ふーん? 腕を持ち逃げされたのに?



 第四部『武闘大会の行方』完
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