第105話 さあ、特訓……の前に情報ね
文字数 1,497文字
さて、午後からは特訓だ。
そのためにいい場所がないかなと、一度ギルドに戻って情報屋へ行ってみた。
「あっ? リベッカ……さんじゃないですね?」
髪の色が違う。長いストレートの黒髪だ。それに着物を現代風にアレンジした服装。これはまた、アレだろうか? いとことか、姉妹とか。
「わたしはオベッカ。リベッカはわたしの姪だよ」
姉妹のおばさんかぁ。若く見えるけど何歳だろう? 長キセル片手に和風のふんいきも妖艶でいいなぁ。
「あの、この街の近くで特訓したいんですよね。どっかお勧めのダンジョンはありますか?」
「あるよ」
「あるんだ」
「あんたのレベルは……50か。やるね。それなら四神の試練にもいどめそう」
「四神って、えーと、四方の方角を守る神様? 朱雀とか玄武とか。僕らは白虎門から入ってきたよね」
「なら、街の西側にある白虎の竹林へ行くといい。もしも白虎の守護を受けることができれば、闘神の称号を得られるよ」
「闘神! か、カッコイイ」
オベッカさんはクスクス笑う。にしても、名前がオベッカでいいのか。シャケやホッケよりはマシか。
「まあ、坊やたちにはムリだろうけどね。四神の守護を受けることができるのは、選ばれし者だけなんだ。わが国では一人だけ守護を受けた戦士がいる」
「へえ。あ、わかった。青龍の守護神」
「守護者」
「そうそう。それって呼ばれてるから、タツロウさんがそうなんだ」
オベッカさんは自慢そうにドヤ顔をした。
「そうさ。将軍家の次男、タツロウさまほど素晴らしい戦士は、わが国には他にいない。ヒノクニ一の戦士だ。国じゅうの女の子がメロメロだね」
ああ、そうだろうな。イケメンだし、さわやかだし、性格もめちゃくちゃいい。優しいだけじゃなく、意思も強い。正義をつらぬく人だからな。
あれ? タツロウって僕より年下だった。思いっきり子どもあつかいされたよね。
「そっか。将軍家の次男なんだ。たしか、長男が王宮のお姫様と婚約してるんじゃなかったっけ?」
オベッカさんは手を出した。新しい話題だから料金追加か。
「三百円」
「はいはい。小銭ないんで、一万円でいいですか? お釣りいらないんで」
「気前いいねぇ。そういうの好きだよ」
ああ、美女が指さきであごの下をくすぐってくる。
「ゆらり!」
「イテテッ。たまりん、突進してこないで」
「ゆらゆら!」
「ごめん。ごめん。ニヤけてないよ」
僕らのパーティーただ一人の女の子は火の玉……。
あっ、ミニコも女の子かも? 仕草がシルバンと違う。
火の玉とロボットかぁ。
「それで情報っていうのは?」
「お城のセイラ姫はそれはそれは美しいんだけどね」
あっ、やっぱり青蘭がお姫様なんだ。
「将軍家の長男とは親同士の決めた婚約。ほんとに愛しあってるのはタツロウさまだ——って話だよ」
「うーん」
ここでも来たか。トライアングル設定。
あの二人はほんとに愛しあってるんだけど、いつも三角形で悩んでるんだよな。
一見、活気があって、平和な国だけど、ここも複雑な事情がありそうだなぁ。
「わかりました。とりあえず、僕らは白虎の竹林っていうとこで特訓します。また知りたいことがあったら聞きに来ます」
僕らは今度こそ特訓のために外へ出ていった。
アジが開口一番に言う。
「いいなぁ。兄ちゃんたち、レベル50かぁ。おれも強くなりたいなぁ」
「アジもいっしょに特訓しよう」
「いいの?」
「大丈夫。僕らがついてるから、安心してレベリングできるよ」
白虎の竹林か。
日本画の画題だなぁ。
白虎、出てくるかなぁ?
たぶん聖獣だよね。ニート祭りのままで突撃するのはよそう。武闘大会は三日後だから、白虎にいどむのは二日後でもいいかな。