第292話 巨大吸血鬼

文字数 1,399文字



 ゴクリと猛が息を呑む。

「かーくん。さっき、足を灰にしたよな?」
「うん。ごめん。城のなかでも二回倒した。ぽよちゃんも一回、倒したみたい」

 すると、三村くんとアジが顔を見あわせる。

「すまん。おれらも一回、倒した」

 たまりんも、ゆらり。
 つまり、全員あわせて六回は倒したってことか。

「それだよ」と、猛は緊迫した顔で言う。
「アイツ、灰のなかから復活すると前のときより強くなるんだろ? 手足が倒されても、カウントに入るんだ」

 ということは、六回ぶん前より強くなってる……。

「戦闘音楽、鳴ってるね」
「鳴ってる。戦闘中ってことだ」
「アイツ、攻撃してこないから、こっちの順番だね。戦わずに縛ることできると思う?」
「アイツの力しだいかな」
「じゃあ、とりあえず、ぽよちゃん。聞き耳お願い!」
「キュイ!」

 聞き耳によると、ゴドバのレベルは99。レベル的には最大に達してる。HPはむ、無限大。しかもゴールド。

「無限大ゴールド!」
「キュ、キュウ……キュイ」

 猛の通訳。
「ぽよちゃんが前より強くなってるって言ってる」

 いいなぁ。
 僕もぽよちゃんと語りたい。

「前って、ノーム村のときかな?」
「キュウキュイ、キュキュ、キュッキュー、キュイ」
「ノーム村で戦ったときは無限大が赤かったって」

「じゃあ、赤のときより、さらにHPが増えたから、ゴールドになったってこと?」
「キュッキュキュウ! キュイキュイ、キュイー、キュウ!」
「攻撃するとHPの減少にしたがって、無限大の色が変わるんだってさ」

「わかった。体勢たてなおして、ここでロランたちが来るまで、なんとかつなぎとめよう」

 トーマスは壁役だから前衛。あとは僕、猛、ぽよちゃんが前ね。後衛にたまりん、アジ、三村くん、ネコりんたち。ネコりんは二匹が後衛に入りきれずに交代要員だ。

「えーと、アイツの力は……ああーッ!」

 ち、力が99999。ていうか、ほかのほとんども99999だ。素早さ、器用さ、幸運だけがやや低くて、それでも66666。

「そっか。僕の素早さに、まだ風神のブーツの効果がかかってるんだ。だから、アイツが攻撃してこなかった。じゃないと、僕らのもとの素早さだと、もうアイツに数値で負けてる」

 たしかに僕ら強くなったけど、これじゃ次にゴドバの番になったとき、ほとんどのメンバーは一撃で倒される。トーマス、体力二万じゃ壁役にできなかった。ワンパンじゃん。

「このターンで、アイツの力か動きを封じないと、僕ら全滅だ」
「いや、かーくんと、ぽよちゃんだけは残るかもな。器用さが無限大だ。たぶん、アイツの攻撃をかわし続けられるよ。おれも反射カウンターで残れる」

 その他のメンバーは難しいってことか。

「白虎の守護がどこまで効くかだね」
「そうだな。ただ、それをやぶられたらマズイ」

 つまり、ゴドバに魔法攻撃をされると、白虎の守護がやぶられてしまう。ブレス攻撃も守護では守れない。

 しかも、一番やっかいなのは、こっちは攻撃できないってことだ。倒すと、もっと強くなってしまう。今だって限界くらい強いのに。

 僕らが倒せてるうちは、強くなってもいいよ?
 でも、もしも、僕らやワレスさんでも倒せないほど強くなっちゃったら、どうしたらいい?

 そしたら、ゴドバはきっと、この島じゅうの生き物を食いつくして、それから、島の外へ飛びだしてしまうだろう。
 ゴドバを止められる人間は、そのとき、もう誰もいないのに……。
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