第80話 グレートマッドドクター戦1

文字数 1,472文字



 ジャラーン、ジャラーン。
 不気味なボス戦の音楽。
 来るのか。戦わないといけないのか。

「かーくん。僕も外で戦います。メンバーを交代しましょう」

 そう言って、蘭さんが馬車から出てくる。
 けど、僕は何かがひっかかってるんだよなぁ。

「えーと、前にグレート研究所長と戦ったことがある」
「ああ、そげだったねぇ」と、これはアンドーくん。

「どんな戦いかただったかなぁ?」
「まあ、いいじゃありませんか。僕の攻撃力で、スパッと倒してしまいますよ」

 うーん。なんか気になるんだよな。
 とは言え、蘭さんが出てきたから、かわりに誰かひっこまないと。

「じゃあ、ロランと僕とバランは外せないとして、あと一人は?」
「やっぱり、守るの使えるシルバンですね」
「そうだね」

 蘭さんの体力がもとに戻るまでは、それが無難かな。
 ぽよちゃんとモリーが戻り、シルバンが出てくる。
 蘭さんの力五万なら、このへんのボスなんて瞬殺だ。心配ないだろう。


 ジャラーン、ジャラーン!
 グレートマッドドクターが現れた!
 ガーゴイルA、Bが現れた!


 えっ? 今までガーゴイルなんて、どこにもいなかったけど?
 でも、なぜか、どっかからシュッと現れる。ナベ? ナベの向こう側?
 ブタさんのとなりに、鳥さんが二匹。

「戦いましょうか。かーくん」
「そうだね」

 いつものように薔薇〜
 もうさ。いちいち書かなくても、バランがいるときは毎ターンの最初に薔薇ね。

 んじゃ、次は聞き耳。

「ぽよちゃん、聞き耳お願い」
「キュイ!」

 ガーゴイルはもう知ってるからいいや。けっきょく、さっきも『羽ばたき』使ってるヒマもなかったしね。
 ほんで、肝心のグレートマッドなドクターは?

「えーと、ブタさんは、回復魔法と、(げき)をとばすか。あとは死毒の霧」
「かーくん。ブタって言ったから、また怒ってます」
「ブヒーッ!」
「あっ、ごめん」
「ブヒッ、ブヒッ」

 ブヒブヒうるさいな。
 さっさとやるか。

「じゃあ、僕は最後に行動するから、ロランがやっつけちゃって」
「そうですね。やりましょう」

 蘭さんは気軽に言ったのに……。

「ん? ロラン?」
「えっ? 何?」
「いつ行動するのかなぁって」

 蘭さんは急にネイルの手入れを始めた。女の子みたいにキレイな指さきを、爪みがきでピカピカにしてる。

「えっ? 今、戦う気分じゃないんですけど?」
「な、なに言ってんの?」

 蘭さん、急にどうした? 熱でも出たのか?

 テロップが告げる。


 ロランはニートの特性を発揮した。このターンは働かない。


「ええーッ! なにそれ?」

 あわてて蘭さんのステータス画面を見なおす。テロップはニートがどうとか言ってたから、職業のせいだ。ニート長押しで詳細を見る。

『職業特性により、戦闘中、たまに働かない(行動しない)ことがある。働かない割合は幸運数値に左右される』

 くうっ……つまり、僕が今までずっと外に出て、ふつうにザコ戦で行動できてたのは、幸運値が高かったからなのか。

 しまったなぁ。よりによってボス戦で初めて気がつくなんて。知ってれば、蘭さんは後衛のままにしといたのに。

 しかたない。
 このターンは僕らだけで対処しよう。

「じゃあ、まず後衛援護で、たまりんはハープ。アンドーくんは、みんなまき。ぽよちゃんはシルバンに『まきでいこう〜』で、ケロちゃん、水の結界ね」

「ゆらり」
「キュイ〜」
「ケロケロ!」

 モンスターたちは元気よく返事をするのに、アンドーくんの返事がない。

「アンドーくん?」


 アンドーはニートの特性を発揮した。このターンは働かない。


 ああっ、もう! こっちもか!
 どうなるんだ。この戦い。
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