第182話 つかみとった勝利

文字数 1,644文字



 やった。勝った。
 巨大な炎の竜が消えたとき、ゴライは大地に伏していた。
 僕らの勝利だー!

「ゴライ、戦闘不能! やりました。ついに決着です。強力なバリア合戦をくりひろげた両者でしたが、最後はギガファイアーブレスでキメました。勝者、かーくんパーティー。勝利の女神は、かーくんパーティーに微笑みましたッ!」

 ウットリ……賞賛の雨あられ〜。
 オーディエンスの歓声がやまない。
 もしかしたら、人生で一番輝いてる瞬間かも。

 ゴライはすぐに救護室に運ばれた。ふつうなら死亡するほどのダメージだけど、戦闘直後だから、呪文ですぐに蘇生するはずだ。

「去年、おととしとノーダメージを通してきたゴライが、ついに敗れました。新星あらわる! その名はかーくんパーティー!」

 えへへ。パーティーの名前、僕にしといてよかったー。幸せ。かーくん、かーくんと連呼される、この誉れ。

 そのあと、僕らは表彰式で、麗しのセイラ姫から金メダルをもらった。記念品の数々や賞状や、花束や。

 鯛やヒラメの舞踊り的な閉会式があったのち、一時間の休憩だ。
 僕らはまだ帰らない。何しろ、ここからがメインイベントだ。ワレスさんとの特別試合であーる。

 閉会式が終わったあと、僕らは休憩室で、開始時間を待った。休憩室には僕らのほか、蘭さんたちや、復活したゴライパーティーもいる。特別試合には一位から三位までのパーティーが出場するみたいだ。

「ねえ、猛。けっきょく、ゴライさんはゴドバじゃないのかな? 決勝戦のあいだ、とくに変な動きしなかったよね」
「まだわかんないぞ。特別試合のドサクサにまぎれてってこともある」
「そっか」

 僕らはテントの片すみでコソコソ話してるんだけど、ゴライさんたちのほうも、僕ら——というか、蘭さんを見ながらボソボソ話してる。

 僕らが仲間だとバレるといけないから、まだ蘭さんたちとはしゃべらないようにしてる。

 ヒマなんで、僕はなにげにスマホを見た。

「あれ? 充電できてる?」

 電源スイッチを入れる。
 つ……ついた! 起動したぞ! 見ると、充電量が50%になってる。まだ満タンではないものの、とりあえず、スマホが使える!

「猛。特別試合まで、あと何分?」
「四十五分かな」

 四十五分でどれだけの

が書けるだろうか?
 とにかく、書かないと! 早く蘭さんの体力をもとに戻してあげるんだ!

 僕はそれから試合開始まで、必死になって

を書いた。
 研究所に到着したところまでだったからねぇ。そこで僕の特技がバレちゃった。
 長かったなぁ。あれからいろいろあった。うん。

 必殺両手打ちをいかして、フリック、フリック。

 僕の秘密を知られて、蘭さんの数値書きかえたら失敗して、研究所攻略!

 けど、ギガゴーレムを奪われちゃって、盗賊団のアジトまで追うものの、ゴドバに持ち逃げされちゃう。

 エレキテルの街で、どうにかこうにか、ギガゴーレムを停止させる僕らであった。このとき、ワレスさんがゴドバの腕をチョッキーン!

 その夜、貴族区の子どもが誘拐されて、スラム街に行くことになって、井戸のなかでグレートマッドドクターと戦った。

 えーと、でもそこにはもう子どもたちはいなくて、エレキテル港へかけつける。
 で、僕だけ船に乗りこんで、そこで猛と再会したんだ。

 船の魔物を制圧して、僕らは子どもたちとともに、あやうく漂流。ヒノクニに来て、特訓しつつ武闘大会に出場して優勝! なんと、優勝! くどいけど優勝! 今に至る、と。

 はあはあ。めっちゃ、かけ足だった。人生でこんなに高速で小説書いたことがあっただろうか? 誤字脱字はあとでなおそう。

 さあ、じゃあ、やっと、ここから再会した蘭さんの数値でも書きなおそうかなっと。

「試合開始時間です。参加者の皆さんは会場へお集まりください」

 ああっ、今から……今からだったのに。
 でも、しかたない。蘭さんが行っちゃったから、くわしいステータスが見れないよ。

 僕はスマホをミャーコ(ポシェット)にあずけて、会場へと出ていくのであった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み