第312話 もしかして、僕って?
文字数 1,526文字
まあいいや。
爪が装備できたから、そのまま、僕は歩いていく。
何度か思い出ってモンスターと出会うんだけど、みんな戦う前に逃げていった。
やがて、前方の光が強くなった。外の景色が見える。
きっと、あそこに行けば、みんなに会えるはず!
ピョコピョコと走っていく。
洞くつをぬけると、外は美しい森だった。
森のなかにキレイな白いお城が建っている。ネズミなランドの有名なお城のモデルになったっていうノイシュヴァンシュタイン城よりも優雅。お城は崖の上にあって、そのむこうの少しけむるような水色の空に虹がかかってた。しかも、三重の虹だ。二重はけっこう見たことあるけど、三重はスゴイね。
ここって、なんか、あそこに似てるな。コビットたちの暮らす虹の谷。澄んだ滝が七色の虹をたくさん作ってた。
んんー、おひさまがポカポカして気持ちいい。
なんなら、のんびり昼寝したいところだ。
でも、今は仲間を探さないとね。
「おーい、ロラン。シャケ。アンドーくん。ランス。トーマスとアジとスズランと。いっぱいいるな。あとはモンスターたちか、たまりんやバランは人間あつかいなんだけど」
ブツブツ言いながら、僕はお城に近づいていく。
むっ? ここは、巨人の城か? ものすごく大きな兵隊が門の両側を守ってるぞ。
門番は僕を見ても何も言わなかった。とくに責められないので、勝手になかへ入る。
広いエントランスホールだ。白と黒の大理石のチェッカーの床……正面は二階へ続く階段。左側に細い階段があって、それは地下へ。右側の奥に廊下。
「…………」
見たことがある。
このお城の間取り。
そうだ。まだ新しくて掃除も行きとどいてるけど、これは……あそこだぞ? 廃墟の古城。アレにそっくりだ。
さっきから変なことばっかり続いて、だんだん考える力がなくなっていくんだけど。
ここって、古城なのかな? それとも、古城によく似た別の場所?
それにしても、あの廃墟とは違って、すごく活気がある。お城のなかにはたくさんの人がいて、エントランスホールに行商人みたいな人もいる。それに、なかにいるのが人間だけじゃない。羽のある竜人や、ネコりん、コビットやノームたち。ぽよぽよやスライムなんかもいる。
種族の異なる人たちが、みんな仲よく話して、とても楽しそうだ。
いいお城だなぁ。ボイクド国のギルドのなかに、ふんいきは似てる。でも、ギルドには人間しかいないけど、ここは多種族の交流が盛んで、より自由な空気に満ちていた。
僕がピョコピョコ歩いていると、お店のノームが話しかけてきた。
「よう。坊主だば。買い物に来ただばか? なんでもそろってるだばよ?」
「違うんだ。仲間とはぐれてしまったから、探してるんだよ」
「そうだばか。じゃあ、二階にある酒場へ行くと、会えるかもしれないだば」
「二階だね。ありがとう」
あれっ? 僕、今なんでノームの言葉がわかったんだろう?
な、なんか……不安。
このじょじょに追いつめられていく感じ。
ジリジリした気持ちで二階へむかう。階段……あがりにくい。なんでこんなに一段ずつが高いんだ? しょうがないから、まず両手をかけてから、足をひっぱりあげる形でのぼっていく。
なんかさ。やっぱり巨人の城だよね。全体にあれもこれも大きい。さっきのおじさんもノームにしては、やけに大きかったし。
やっと酒場か。
誰かいないかな? 蘭さんかシャケでも? ミニコはどこ行っちゃったかなぁ?
ヒョコリとのぞくと、酒場の椅子にすわるぽよぽよと目があった。で……デッカイぽよぽよだなぁ。ぽよちゃんの十倍はある。少なくとも僕と同じくらいのサイズはあるぞ。
「アニキー!」
ああッ! デッカイぽよぽよがこっちに突進してくるー!