第250話 オーク城、諜報活動中
文字数 1,414文字
お店ではくわしいことは聞けなかった。おばさんはそれ以上、知らないようだ。
「坊や。たくさん、お小遣いためたんだね。えらいね。こんな小さな弟のめんどうまで見て。はい。サービスだよ。これをあげるからね」
おばさんは僕の手に『燃えろ〜』のカードを一枚にぎらせてくれた。
オーク、仲間には親切なんだな。弟っていうのは、ぽよちゃんのことらしい。そんなふうに見えるのか。なんか、だましてるみたいで心が痛い。じっさい、だましてるんだけどさ。
でもさ、人間の世界に侵攻してきてるのは彼らのほうなわけで。それどころか、彼らの尊敬するグレート研究所長は人間をさらってきて、魔物に造りかえてるんだ。それは、とうてい許されることじゃない。
種族が違うからって争いあうのは、なんでなんだろうな?
みんなが仲よくってわけにはいかないのかな?
歩きまわるうちに、酒場があった。このお城は
「よっ、知ってるかい? 今度こそ、ゴドバさまが人間界を滅ぼすために、大軍隊を編成して侵攻をかけるそうだよ。なんでも腕の復讐? なんだそうだ」
「どっかの街からつれてこられた人間たちが、古城には大勢、集められてるんだってね」
「ブヒヒ。北の平原を焼きはらって、トウモロコシ畑にしたらいいって言うヤツもいるんだけどさ。さすがに、それは、ぽよぽよがかわいそうだと思うんだよ。平原はもともと、ぽよぽよの住処だったんだし」
「この島のどこかには、ノームの村があるって話だけど、ほんとかな?」
「知ってるか? 人間ってヤツはブタを丸焼きにして食うんだってよ! なんて残酷な連中だ」
う、うーん。たしかに食べるけど。豚肉……。
「その昔、あの古城には、それはキレイな精霊のお姫様が住んでたんだってな。ウワサじゃ、あの城の地下に……おっと、これ以上は言えねぇ」
ちょっと! 気になるとこでやめないで!
あの城の地下って牢屋と、外につながる地下水路があったんだけど、それだけじゃないのかな? もしかして、あの迷路みたいな水路の奥に何かあるのか?
「この前さ。ぼく、父ちゃんの仕事の手伝いで、古城に行ったんだ。そしたら、すごく大きな鳥がいたよ。でも、なんかね。ようすが変だったんだ」
ん? 鳥? もしや、それは、ふえ子のお母さんでは?
「ああ、あとね。これはナイショだよ。じつは四天王のなかに裏切り者がいるんだって! どういう意味だろ?」
むむっ! ま、ま、まさか、猛の正体がバレたわけじゃないよね?
「この島はじゃな。ブヒっ。大昔はもっとよこ長だったらしいぞい。二つの国をつなぐために造られた架け橋だったからのう。ブヒ」
そうそう。それも気になる話題。この島に残る昔話だ。
「精霊のお姫様と、その恋人の王様の国ですね?」
「ブヒっ。さよう。精霊族と魔族は、古代には同じ祖先を持っていたという話じゃからのう。あの婚姻さえうまくいっとれば、今ごろ世界は平和だったかもしれんな。ブヒっ」
「えっ? 魔族が? 精霊と同じ先祖?」
「そうじゃ。坊主にはまだ難しすぎかのう。ブッヒッヒッ」
うう、ブタさんにバカにされた。
それにしても、気になるな。古城で見つけた、あの古い絵本。精霊のお姫様の恋人って、もしかして魔族だったのかな?
魔族って一方的に人間界に攻めこんでくる悪いものとしか思ってなかったけど、古代にはそうじゃなかったんだろうか?