第304話 三種族同盟

文字数 1,674文字



 司書長の風の魔法に乗って、ノーム族がやってきた。草原からは、ぽよぽよも集まってくる。
 僕らのまわりにはオークたちが。
 みんな、恐ろしい巨人がいなくなったので、ようすを見にきたのだ。

「ブヒヒ。人間さんたち。助けてくれて、ありがとう」
「お店のおばさん! 無事だったんだ」
「なんとか食べられずにすんだよ。でも、お城がね……」

 お城かぁ。さすがに、それは小説を書くでも修復できるかどうか。ものが大きすぎるし、特技とかステータスとかでも、なおせそうなのがない。

 困っていると、ノームたちが近づいてきた。
 オーク族は緊張した顔で、ノームやぽよぽよをながめる。
 オーク族はもともと、この島に住んでたわけじゃない。グレート研究所長が一族を住まわせるために造ったのが、破壊された城だ。島から出ていけと言われることを案じているようだ。

 でも、オーク族も安住の地を求めて、ここへやってきたんだよな。ほかの種族にバカにされるから、一族が安心して暮らせる場所を探してたんだ。

 魔王軍だけど、ノーム村を襲ったこともない。ぽよぽよをイジメることもなかった。
 ただ平和に暮らす居場所が欲しかっただけなんだ。
 そう言えば、僕らが魔王軍と戦闘になったときも、竜兵士やガーゴイルは出てくるけど、オークって出たことなかったな。

「ちょっと待って。村長さん!」

 あわてて止めようとしたけど、その必要はなかった。
 村長さんは僕らの前まで来て、手をにぎってきた。身長差があるから、幼児に手をつながれた感じ。

「クピピ、ピコ、ピコックピ。コピクピピー」

 そうだった。わからないんだった。

 猛が笑った。
「かーくん。村のみんなを助けてくれてありがとうと言ってるんだ。おかげでみんな命が助かったって」
「そっか。ノームたちも助けてあげたんだったね」

 オークたちも集まってきて、口々に礼を言う。
 ぽよぽよもだ。ピョコピョコかけてきて、鼻先を近づけてくる。ぽよちゃんとキュイキュイ語ってる。

「巨人をやっつけてくれてありがとうって言ってるな。あのまま倒れてきたり、草原を荒らされたら、ぽよぽよ族は住処を失うところだったって」

 みんな、力の弱い温厚なモンスターたちだ。オークはそこそこ力はあるけどね。でも、戦いを望んでない。

 僕は提案してみた。

「みんな、この島に巣食ってたゴドバは、僕らが倒した。廃墟を占拠してた連中はもういない。島は自由になったんだ。これからは島の住人として、みんな争わず、協力して暮らしたらどうだろう?」

 モンスターたちはそれぞれの顔を見まわす。

「オークたちは平和に暮らしたいだけなんでしょ? 魔王軍はいなくなったんだから、もういいんじゃないの? グレート研究所長も……一族の繁栄を最後まで願ってたよ」
「グレート研究所長さまは?」
「ごめん。僕らが倒した。彼は人間をさらってきて、この島でモンスターに変えてたから。さらわれた人たちを助けるためにはしかたなかったんだ。でも、誰も争いたかったわけじゃない」
「そうですか。グレート研究所長さまが……」

 やっぱり、みんなが仲よくなんてできないのかな?
 どんな理由があっても、グレート三兄弟を僕らがやっつけた事実は変わらない。

 けれど、そのときだ。

「コピックピ、クピコピ、ピコピコ、ピラーピク」
「お城の修理なら、我々が協力するよと、村長が言ってる」
「コッピコピコ、クピコ、コピクピ、ピラー」
「昔のことは水に流して、これからのことを考えよう」
「ピコピ、クピクピ、コビットコン、クーピピ」
「我々はみな、この精霊の王に助けられた」
「コピコ、コビットコン、ピラーピクピー、ピコクピ!」
「このかたを我らすべての王として、ついていこう!」

 すると、考えこんでいたオークたちもうなずく。
 ぽよぽよたちもとびはねた。

 も、もしかして、僕、精霊たちの王様になるの? なるのかなっ?

「ピコックピ、クーピコン、ピラー!」
「この麗しき薔薇の王に我らはしたがう!」

 ん? なんか思ってたのと違う?

 ノームやオークやぽよぽよたちは、バランの前にひざまずいた。
 ああ、そっちね。だよね。
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