第201話 持たざる者になるには
文字数 1,324文字
僕は気になったんで、ワレスさんからもらった手紙をひらいた。ワレスさんの母国語のユイラ語とおぼしき流麗な文字で、職業ツリーが記されている。不思議と読めるんだけどね。
「僕はさ。持たざる者っていう職業になりたいんだよね。だけど、そこに行きつくツリーがわからなくてさ」
調べるついでに、バーサーカーが何かの役に立つのか確認してみることにした。
「えーと、持たざる者になるには、大富豪と嫌われ者か。嫌われ者なんて聞いたことないなぁ。嫌われ者になるにはっと。パリピと……」
「どうした? かーくん」
「バーサーカー」
「うん? バーサーカーなりたいのか?」
「パリピと、バーサーカー! 嫌われ者になるためにはパリピとバーサーカーが条件なの! もういいや。そんな危険な職業つかないといけないんなら。持たざる者なれなくても、小切手が切れるし」
しかし、そのときだ。
僕の目に最上位職の欄がとまる。
商神——そう書いてある。
商神(大富豪、持たざる者)
就労ボーナス
HP、力、体力(25%)MP、知力、素早さ、器用さ(15%)幸運(50%)
習得特技
黄金の嵐(行動数1で小切手を切るを三回くりかえすことができる)
黄金の盾(任意の金額を使用し、パーティーを守る壁役の兵士を呼びだす。金額ぶんのダメージを肩代わりするまで、またはその戦闘終了まで効果は続く)
マスターボーナス
HP、器用さ、幸運15%
戦闘勝利報酬を十倍得られる。
傭兵呼び系統の技が必中になる。
ううッ! これが商人系の最上位職か。
黄金の嵐や黄金の盾もすごい。すごいけど、僕は気づいたぞ。最後の一文。
傭兵呼び系統の技が必中になる。
必中になるんだ!
今日の特別試合、ワレスさんにあんなにかわされたのは、傭兵呼びが必中じゃないからだ。あれが必中だったら、最初の一回で、勝ててたじゃないか。ふんばるを使われてた可能性はあるにしてもだ。
特別試合、もちろん大会を盛りあげて、まぎれこんだゴドバの目をくらますつもりだったんだろう。
でも、ワレスさんは数値のバカ高い自分が手本になって、魔王戦の模擬戦闘を僕らにさせてくれたんだとも考えられる。ワレスさんに勝てないと、魔王にも勝てない。
「僕、絶対、これになる!」
「そうだな。かーくん」
「僕、バーサーカーになるよ! ぽよちゃんもいっしょにバーサーカーになろ?」
「キュイ!」
バーサーカー祭りだ。
腹をくくって、やるぞ。
いざってときには、僕とぽよちゃんだけ前に出てもいいしな。
「……兄ちゃんもバーサーカーに——」
「それはやめて!」
「キュイ!」
猛はしょんぼりしたけど、こればっかりはしかたない。だって、猛の力10000だし。
「じゃあ、僕、バーサーカーね!」
あれ? 蘭さんたちの目が冷たい。心なしか、あとずさる。
「あ、あの……ロラン? アンドーくん?」
「いえ。いいと思いますよ。将来的にはパーティーにとって、大きな力になるし」
「ああ、明日はかーくんとぽよちゃんは馬車に入っとったらいいだない?」
ひ、ヒドイ。
バーサーカー差別だぁ。
これが嫌われ者になるってことなのか?
まあいいや。
嫌われ者を乗りきって、持たざる者になれば、僕の素手攻撃力が億パンチになるんだ!