第117話 対戦組みわけ抽選会
文字数 1,935文字
玄武、青龍、朱雀、白虎って書かれたそれぞれのプラカードの前に、大勢の人がならんでる。
ただ、場所によって、その行列には差があった。それはそうかもしれない。たとえば西側は隣国ボイクドとの経路をつなぐ港がある。ボイクドから来た人は大半、西か南から入ってくることになる。
つまり、同じ地域の人は、大半、その周辺の出身者で予選を戦うことになるわけだ。
最初に入ってきた門によって、本戦までの試合数も違うだろうし、強敵とあたるか、あたらないかってのも関係してくる。
こんなことなら、もっと考えて門を選べばよかったかなぁ?
なんかステータス画面を見れば、どの門から入ってきたかはわかるらしく、嘘はつけない。いいんだけどね。予選で落ちるようじゃ、本戦では勝てないんだから。どの組みでも全力をつくすのみ。
ようやく、僕らの番になった。
「はい。一本ひいてね」
頬杖ついた
ふむふむ。二十五の白。
「はい。じゃあ、白虎組二十五番めの対戦、白側ね。すんだら、あっち行って」
不親切なお兄さんに言われるがままに、人波にもまれてゾロゾロと歩いていく。
広場のまわりをとにかくグルグル歩かされる。
「白虎組のみなさんはこっちに来てください。エントリーメンバーを正式登録してもらいます」
また受付か。
それにしても、まったく蘭さんに会わない。預かりボックスのなかも確認するけど、新しい手紙はない。ただ、僕が書いた手紙はなくなっていた。いちおう読まれてはいるみたい。
「どうする? 猛。蘭さんたち、いないんだけど」
「しょうがないよ。とりあえず、今のメンバーで決めるしかないだろ」
「そうだね」
ああ、蘭さんの五万攻撃力は大会で絶大な強さを誇ったのにな。
だからと言って、猛やミニコをつれた僕が、そうそう予選落ちするとも思えない。
「受付お願いします。かーくんパーティーです」
今度の受付はお姉さん。大正時代の女学生みたいなカッコしてる。ハイカラさんコスプレ。こういうのもいいね。
「はい。どうぞ。予選、本戦ともに五人ずつのパーティーが一対一で戦います。先鋒、次鋒、中堅、副将、大将です」
「ああ、剣道と同じかぁ」
「予選ではさきに三勝したパーティーが勝ちです。勝ちぬきなので、先鋒だけで三勝してもかまいませんよ」
「本戦は違うの?」
「本戦では、先鋒対先鋒、次鋒対次鋒のように個別に戦い、最終的な勝ち数の多いほうが勝利です。つまり、大将だけ強くても全体のバランスがとれてないと優勝はできません」
なるほどね。逆に言えば、予選では先鋒に一番強い人を持ってきて、その人だけで勝ってもいいのか。
「どうする? 猛」
「あんまり早くから切り札をさらすと、本戦前に対策を練られてしまうぞ。だから、強いメンバーをうしろに持ってきて、秘密にしとくほうがいいな」
なるほど。さすがはわが兄。
猛はもともと現実でも柔道剣道空手の有段者だもんな。試合にもなれてる。
僕らのパーティーで一番強いのは、やっぱり猛だよね。次は僕かな。
「じゃあ、大将は猛でいい?」
「ああ。いいよ。任せとけ」
くうっ。頼れる。この抜群の安心感。
「副将は僕かな? それか、僕一人で勝ちぬくように僕が先鋒にまわるか」
「そのほうがいいかもな」
「じゃあ、残りのメンバーは、たまりんと、ぽよちゃんと、トイかな」
ところがだ。
女学生スタイルのお姉さんは言った。
「申しわけありませんが、モンスターは参加できません」
「えッ?」
「だから、ぽよちゃんさんとトイさんは参加できませんよ?」
「えっ?」
ある意味、二度めの衝撃が走る。
「たまりんはいいんだ?」
「はい? もちろんです」
「わかった。じゃあ、たまりんは副将ね」
うーん。でも、ぽよちゃんとトイがダメなら、あともう僕らのメンバーに人間は……あっ、アジがいたか。
「えっ? おれ? いいよ。勝てるかどうかはわかんないけど、出てもいい。兄ちゃんたちにはお世話になってるしね」
「うん。アジは次鋒だ。僕ががんばって、アジまで戦いがまわらないようにするから」
だけど、それでもあと一人たりないんだよなぁ。
ウンウンうなってると、そのとき、受付カウンターの上に、ぽよちゃんがとびだした。ぽよちゃん、魂の叫びか?
「クピピコ、クピコピ、ピラー!」
えーと、クピコピはわからないけど、ピラーは『行け!』とかそんな意味だから、『クピピコが参る!』かなんか言った。うん。
よく見ると、ぽよちゃんの上にクピピコが乗ってる。
すると、お姉さんはうなずいた。
「中堅は、ぽよぽよ使いのクピピコさんですね」
あれ? 受理された。
コビット族は人間あつかいかぁ。ぽよちゃんこみなら、そうそう負けることはないかな。