第23話 バレました。僕の秘密
文字数 1,547文字
僕ってさ。
なんでこんなに正直なんだろうね?
きっとワレスさんなら、問いつめられても、うまくごまかすんだろうなぁ。
ふぅ……。
「ふう、じゃないですよ? かーくん。どういうこと? ちゃんと説明してください。まさか、僕らの数値をいじって、自分のステ上げしてるの? あっ、つまみ食い? つまみ食いの副作用?」
蘭さんが怖い目でにらむよ……(☍︎﹏⁰)
って、思わず顔文字使ってしまった。
「かーくん? わは友達だけん、信じちょうだども、正直に言ってごさんと、さすがに許さんよ?」
アンドーくんまで、つめよってくる。くすん。
二人に両側から迫られる僕。
えーっ? ボコられるの? 僕、ボコられる?
蘭さん、プライド高いからなぁ。勝手に数値あげるなんて、そんな卑怯なことなんでしたんですか! 僕は自力で強くなって、正々堂々と敵に勝ちたいんです——とか言うよね?
すると、そこへ猫車から、ぽよちゃんがとびだしてきた。
「キュイー! キュイキュイ、キュイー! キュウ?」
言ってることはわからないが、必死に僕をかばってくれてるらしい。ぽよちゃ〜ん。ありがとう。僕の弟よ。ぽよ。
でも、蘭さんの顔つきは厳しいままだ。
「ごめんなさい。ぽよちゃんが何を言ってるかわかりません。ぽよちゃんは、かーくんになついてるから、かばいたいかもしれないけど、今は大事なことを話しているんです」
「キュイ……」
すると、ぽよちゃんは走りだした。お花がたくさん咲いてるとこまで行ってスキップを始める。
な、なんだ? なんで今スキップ? すごく楽しそう……。
「ぽ、ぽよちゃん?」
「キュイ?」
ぽよちゃんのようすが変だ。僕はすぐそばにいるのに、まるで見えてないようにキョロキョロしてる。
「ぽよちゃん? おーい」
「キュイキュイ?」
「ぽよちゃーん。こっち、こっち」
「キュイ!」
ハッとした、ぽよちゃん。ふいに僕に気づいたように戻ってくる。
うーん。なんだったんだろう?
と、今度はよこからバランが口をひらく。バランは仲間モンスターのなかで、ゆいいつ人語を話せる。
「なんと! ホワイトローズ号はこう言っています」
いやいや、ホワイトローズ号って……ぽよちゃんのことか。そうか。バランは自分が乗ってる黒いぽよぽよのことも、ブラックローズ号って呼んでるもんな。
「私は以前、死んだんだ——と、そう言っています。花畑のなかを歩いていたとき、かーくんさんの声を聞いて、かけもどってきたら生き返ることができんだそうです」
えっ? まさか?
「ぽよちゃん、あのときのこと、おぼえてたんだ?」
「キュイ! キュイキュイ、キュ〜」
「かーくんさんが生き返らせてくれたんだよね?」と、バランの通訳。
「もしかして、だから僕に感謝してくれてたの?」
「ピュイ〜!」
そうだったのか。
まさか、ぽよちゃんがあのことをおぼえてたなんて。
蘭さんとアンドーくんが顔を見あわせてる。
「ぽよちゃんが死んだって、なんのことですか?」
「わが仲間になる前のことだね?」
説明しよう。
ぽよちゃんは仲間になってすぐ、僕をかばって死んだ。戦闘不能になっただけなら教会で蘇生できるんだけど、神父さんにお祈りしてもらっても、ぽよちゃんは生き返らなかった。
その夜、僕は追悼の気持ちをこめて、小説を書いた。そして、物語のなかでくらい、ぽよちゃんを生き返らせてあげようとした。すると翌朝、ぽよちゃんは復活していた。
僕が『小説を書く』の力を知ったのは、このときだ。まだランクが低くて、人間をよみがえらせることはできないんだけどね。
「かーくん。どういうことですか?」
「どげだで? かーくん」
僕はしかたなく白状した。あらいざらい。ええ、ええ、あらいざらい、ぶっちゃけましたよ〜
小説を書くの秘密がバレました。