第202話 バランは薔薇の精

文字数 2,125文字


 僕らと離れてるあいだに、蘭さんたちも特訓していた。前よりかなりマスターした職業が増えてる。

 トーマスは騎士だったはずだけど、今は重騎士だ。さらに聖騎士になるために僧侶になってもらった。僧侶はツボがあるしね。

「私は魔法使いにもなれないんだ。聖騎士は騎士と賢者が条件だから、魔法使いをマスターしないとなれないんだが」
「魔法使いのツボはまだないけど、どこかで手に入るかもしれないからね。念のため」
「わかった。では、僧侶に」

 トーマスが僧侶になった。
 たまりんはまだ賢神をマスターしてないから、今回は転職しない。

 クマりんには武闘家のツボを渡した。どう見てもガッツリ戦士系タイプだからだ。素のままで充分強いけど、力を伸ばしたり戦士系の技をおぼえてくれれば、さらに心強い。

「じゃあ、これでいいかな。あとは帰って、魔法書をふりわけようよ。みんなで、いろんな属性の魔法をおぼえとくと役立つと思うから」

 僕が言ったやさきだ。
 しずしずとバランが進みだしてくる。

「かーくんさん」

 なんだろう? バランは人語を話せる。けど、自分から話しかけてくるのはめずらしいな。

「どうしたの? バラン」
「お願いがあります。さきほど、庭師のツボを購入されましたね?」
「うん。そうだったね」

「じつは、庭師の就労中の職業特性は、木属性と水属性の魔法効果を二倍にしてくれるのです」
「そうなんだ」

「それに、戦闘中、木属性の魔物を呼びだすことができます。さらにその魔物の能力を高めることもできます。私は薔薇の精霊ですから、木属性の魔法をおぼえます。つまり、庭師になれば、私自身の数値があがるのです」
「へえ。そうなんだ!」

 そう言えば、長いこと、バランのステータスは確認してなかったなぁ。

 マジックは『みんな、ヘッチャラさ〜』と『トゲのムチ〜』と『いばらの城〜』ってのが増えてる。
 レベルはさっき僕が1にさげちゃったけど、たしか53くらいだったはず。

 レベル1(重騎士)
 HP590[649](713)、MP63[77]、力215[268](294)体力333[382](477)、知力154[174]、素早さ269、器用さ206[236]、幸運91。

 あれ? けっこう職業たくさんマスターしてる。トーマスより、ぜんぜん多いよ。

 マスター職業
 基本職
 戦士、武闘家、僧侶、魔法使い、詩人、踊り子、遊び人、盗賊、ニート
 中位職
 武人、賢者、弓使い、騎士、詩聖、パリピ、大ニート
 上位職
 武闘王、重騎士
 個人職
 精霊、精霊騎士

 パリピ……やっぱり、パリピをマスターしてる。もしかして、精霊ってパーリピーポーなのか?

「何、この精霊って職業。個人職ってことは、生まれつきの職業だね?」
「コビットや我々、人の姿をした精霊は、生まれながらにその職業についているのです」
「精霊って職業なんだ!」

 しかも、よく見たら、習得する特技の『チェンジリング』っていうのが、えげつなくスゴイ。

 チェンジリング
 その戦闘中、敵が自分より強い場合、もっとも高いステータスを持つ者と数値を交換する。

 これ、ようするに、今日の特別試合で、バランはワレスさんと自分の数値をとりかえることができたってことだからね。

「なんで今日の試合で、このチェンジリングってのを使わなかったの?」
「それはあのかたの生来特技で、妨げられていましたから」
「ああ、そうなんだ。ミラーアイズかな」
「さようです」

 でも、この技は使える。

「バランはいつも前衛でパーティーを守ることが多いから、HPと体力を一万ずつ足しとこうよ」
「ありがたき幸せ」

 僕はチョチョイと、1と0を何個かつけたした。消費電力は4%だ。一人10万の数値をいっきに足すと20%使う。てことは、その十分の一の一万なら2%だ。このくらいなら、今夜いろいろ考えながら足しておけるな。

「はい。じゃあ、庭師のツボね」
「このご恩は忘れません」
「いや、別に忘れてもかまわないんだけど」

 よし。これで今度こそ完了だ。

 宿舎に帰ったあと、僕は残るスマホの電力で、みんなの数値をいじった。
 モンスターたちは一律すべての数値に1000ずつ足す。シルバンは壁役だからHPと体力に五千ずつ。

 ぽよちゃんだけ力一万にしようと思ったらできなかった。どうやら、モンスターに足せるのは一万が限度らしい。しょうがないので、上限の三千にする。

 たまりんとバランは例のごとく、人間のあつかいなので例外。不思議だ。

 たまりんは月光のセレナーデのこともある。HPと素早さに五千ずつ。知力に三万だ。ひひひ。これで月光のセレナーデの守りが九万に。

 トーマスも騎士系だから、HPと体力に一万ずつ。
 アンドーくんも基本は騎士系なんだけど、魔法もおぼえられる。素早さもそこそこ速くて、バランス型だと思う。だから、力だけ五千、ほかのすべてに二千ずつ。

 アジは書きかえようと思ったけど、できなかった。まだNPCだからなんだろうな。レベルは1に戻せたのに。下方修正だけはできるってことか。

 兄ちゃんは……もともと強いし、つまみ食いもできるからいらないかな? 聞いてからにしよう。

 ではでは、明日のために、おやすみなさい。
 明日からは墓場……か。くすん。
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